e644818a.jpg盛況のうちに「Nyanひとり芝居フェスティバル」は終わる。
Bプログラムは4作品5本立て。
劇団「1/0計画」『猫とフツーの人々』作・演出・出演/高宏宏
主宰者・高宏宏氏のみで活動する、持ちネタ100本以上を誇る劇団である。
本作は上司の部長宅を訪ねたサラリーマンの部下が、部長の飼い猫を相手にボヤキをする独り言芝居。
部長のバイオリンを弾きながら、バイオリンの音色で物真似をしつつ進行する。
まだ練習途上と言うバイオリンは、技術的にもまだまだお粗末で、技術向上が望まれる。
劇団パンんと魚の奇跡『光の子どもたち』作・演出/中田絵美子
いつものように暖かで優しい作品に仕上がっている。
今回は保木本佳子のひとり芝居だが、冒頭のセッティングやカーテンコールは、宮田圭洋を加えたいつもの三人で、ひとり芝居でもしっかり三人で作り上げたことが感じ取れる。
分かりやすく親しみやすい内容なので、描き方はどんな作りにしても問題ない。
美術も簡素だが配置は良い。
ロウソクの灯りが美しいので、敢えて照明を入れずとも良い。
構成的にはロウソクを灯して、消して、灯すとクドくなるので、全て灯して終わるか、灯して消して終える方が美しい。
朗読集団 森のうたうことりたち『いつか、ずっと昔』作/江國香織・朗読/大村ヨウコ
主宰・大村ヨウコによる見事な朗読。
ここまで出来るならば、音楽も照明も映像も、何も必要ない。
静かに空間に響き渡る声を、ただただ堪能したい。
Fellow House『なかまオムニバス』短編2本立
「ひとつのかわ」作・演出・映像・出演/木村友香
この作品はとても面白い。
見る人によってそれぞれのイマジネーションを掻き立てられ、受け取るメッセージや印象も様々だろう。
テレフォンオペレーターのシーンから流浪の民へと続くシーンは秀逸で、直接的な表現は若々しく、ダイレクトに観客に飛び込んで来る。
「コノポジション」作・演出・出演/門田草
自分が自分であること。
当たり前のことだが、それを受け入れるのは相当難しい。
こう在りたい自分の理想が、現在の自分を否定するからだ。
それは性同一性障害に限ったことではなく、全ての人に言える根源的な問題であろう。
「このままで、ええやん!」
それに気付いた者は幸いである。
自分の否定的な部分を肯定し、己を認め、自らを愛すること。
当たり前のことを気付かせてくれる良作である。
Fellow Houseは今後最も注目していきたいパフォーマンス集団の一つである。
最後に山崎さんのことを少し述べたい。
最初、山崎さんにお会いした時、本当によく喋るおばさんだなぁと思った。
しかも他人の話を聴かない。
話の途中で違う話に脱線する。
つまり相当厄介な人だ。
仕事が不動産関係で、自らの活動の場としてシアターカフェNyanを造り、気に入った人や団体にはタダ同然で劇場を貸し、何たる金持ちの道楽かと思っていた。
だが、そうではなかった。
保育師をしていた山崎さんは30才を前に父親を亡くし、やむなく好きな仕事を諦め父親の後を継いで不動産関係の職に就き、そこからの20年はがむしゃらに働いたそうだ。
ようやく自分の時間が持てるようになったのが50才を過ぎた頃で、若い頃からの夢であった演劇をするギリギリの年齢となったのを期に、自分のための劇場を造ったと言う。
またその空間を、自分が苦労してやりたくても出来なかった若い頃と同世代の人たちに貸し出し、経済的な理由で表現の場を持てない若い人たちに身体表現の出来る場所を提供することが、自分に出来る役割かも知れないと語った。
山崎さんは本物の芝居バカだ、と思った。
いつか皆もNyanを訪れた時に、見掛けることがある筈だ。
本当によく喋る、他人の話を聴かない、厄介なおばさんが居るだろう。
だが芝居を愛してやまない、本物の芝居バカなのは間違いない。
あなたが経済的な理由で表現の場を持てないなら、きっと力を貸してくれるだろう。
皆さんに、山崎さんに、Nyanで素晴らしい出逢いがあることを願いたい。
出逢いは、かけがえのない何よりの贈り物なのだから。