ab300b95.jpg彗星マジック 演劇公演
『定点風景』
劇場版 -森の灯台と赤の広場の夜-
作・演出/勝山修平
@インディペンデントシアター2nd

まずは誉めねばなるまい。
とても良い仕上がりである。
芝居のテンポ、きっかけの微調整、照明の修正、特に照明の仕上がりは南勇樹のこれまでに見た仕事の中でもベストワークである。
そして同時に、何故これを初日に見せられないのかと、残念にも思うのだ。
勝山氏の頭の中にある作品の最終形が、千秋楽のこの公演であるなら、初日からこれを見せるべきと言われても仕方ない。
もちろん役者の出来や、観客のノリ等、芝居はライブなので環境にも左右される。
特に役者に左右される部分は大きい。
本日は役者全員の完成度も高く、全員が完全に役に馴染んでいる。
この成功は、月刊彗星マジックのオリジナルメンバーに寄るところが大きく、ゲスト出演者4名に主演と準主役を任せ、周りをオリジナルメンバーでガッチリと固めることにより、作品の世界観がブレることなく保たれている。
そのオリジナルメンバーにしても、明らかに初日より完成度が高く、主演の二人を見事に際立たせることに成功している。
これによって内存する全ての物語が、最終的に時計塔の少女に集約され、初日に説明台詞と感じられた灯台の中の二人の場面も、少女の生きた台詞として見事に語られる。
全く同じ台詞でも、芝居や役者の仕上がりにより、随分と解釈が変わってくる。
台詞を生かすも殺すも役者次第、その役者を生かすも殺すも演出次第である。
気になる演出をもう一点。
やはりオープニングとエンディングは納得いかない。
暗転の中の足音も、ラストの赤いテープも、作品中に意味を成して来ない。
思いつきで演出をしてはいけないこともないが、印象深いシーンであるからこそ、それに対する意味付けは必要となる。
足音を後半のシーンで活かすことも出来たし、赤いテープの前振りも必要であろう。
これは是非とも次回のテーマとされるが良い。
もっとも自分の目指す作品の最終形が明白ならば、迷うことは必要ない。
今回の勝山作品に、既に迷いはない。
それはとても潔い。

ちなみに、私の好みに合わせて作品を作る必要など微塵もない。
お分かりかとは思うが、これまでもこれからも、舞台作品の感想を書く場合、私の生業として来た舞台監督の立場から、如何にすればこの作品がより良くなるかを考えて感想を述べている。
単に良くない部分を否定したり、好みにより一蹴するようなことは、絶対にしないよう心掛けている。
悪い所を述べるだけでなく、どうすれば良くなるか、個性を殺さずに欠点を独創性に変える術を考えている。
作品に点数を付けることはしないが、例えば100点満点で50点を鑑賞できるギリギリの点数とした場合、30点の作品には60点にするための、50点の作品を70点にするための、70点を80点に、90点を95点にと、留意して書いている。
完成度の高い作品ほど、難易度の高い注文を求める。
より良くするための方法を観客の視点と、舞台スタッフの観点から模索したいのだ。
だから私に難儀な注文を付けられるほど、きっと私のお気に入りの作品で、同様に他の観客にも愛されている筈なのだ。
それはアンケートや観劇の感想に、しっかり反映されている。
さて、千秋楽を迎えたばかりの彗星マジックだが、何と明日インディペンデントシアター1stにてチャリティー公演『復刊!月刊彗星マジック』が行われる。
19:15、劇団クライマックスによるフロントアクト「クライマックス前説」から始まり、西出奈々一人芝居『千年ラジオ』、「関西小劇場クイズ」等、盛り沢山の内容だ。
何故か私も、劇団クライマックスに出演する。
以前、ブログで劇団クライマックスに入っても良いみたいな事を書いたら、本当に出ることになった。
乞うご期待!?