吹田高校
『恋人としては無理』
作/中屋敷法仁
演出/市瀬大樹
@ウイングフィールド

「柿喰う客」の2009年作品を早くもHPFにて上演する。
本家より随分解りやすい。
実に王道的な高校生らしいアプローチで、「柿喰う客」上演時に高速かつ複雑に構成された演出を、一つ一つ丁寧に拾い集め、正攻法の演出でまとめ上げている。
今更ながら気付かされるのは脚本が実に良く出来ていることだ。
全員が幾つかの配役とモブキャラクターを演じながら描く群像劇ながら、主となる配役にはワンポイントの衣裳や小道具を与え、整理しやすいよう構成している。
舞台は完全なる素舞台で、衣裳も普段の稽古着であり、音響も一切使用しない。
元々、音響効果のない作品なのだが、照明変化を多用するなら、音響も使用した方がバランスが良い。
逆に照明変化を抑えて、地明かりの明暗と一灯のサス明かりだけで構成した方が、作品には馴染むだろうと思われる。
照明変化のタイミングも、場面変化とモノローグだけに絞るのが良く、照明変化に意味付けが欲しい。
暗転も同様で、暗転する意味合いが必要となる。
照明プラン自体は悪くないが、音響を使わないなら出来るだけシンプルな方が良い。
稽古場風の味わいが際立つ筈である。
数人が立ち話をする場面では、全員が立ち往生し勝ちなので、もう少し動きたい。
シンプルな内容とシンプルなテーマを、シンプルな演出によりシンプルに描くことで、非常に明快な潔い作品を描くことに成功している。