3e569ee4.jpg真夏の極東フェスティバル、伊丹公演終了。
何と800名以上の観客動員数を数える。
フェスティバルの前半戦は大成功と言える。
後半戦は来週25日から28日、東京・王子小劇場での公演で、両劇団とも初の東京公演となる。
このブログでは楽日に一作品ずつ感想を述べることにする。
まずは解らない、モヤモヤすると、質問の多い極東退屈道場の『サブウェイ』から。
すっきりするような感想を書きたい。

『サブウェイ』以前の林慎一郎氏の最高傑作は、OMS戯曲賞の最終選考に残った『夜ニ浮カベテ』ではなく、(劇)ミサダプロデュース時代に描いた『東風荘』だと思っている。
一見巨大なiMacのような舞台装置の中で繰り広げられる各場面は、Googleの検索上位をコラージュした内容で、2ちゃんねる用語が劇中に飛び交い、顔文字が映像で映し出される。
一言で言えば、「パソコン」の舞台化であった。
パソコンを擬人化するのではなく、パソコンそのものを舞台作品として表現したのだ。
ようやくGoogleが一般に認知され始めた頃であり、パソコンの知識を持つ人がまだまだ少なかった当時に、あまりにも早く発表され過ぎた作品で、作品が何を意味するかも理解できない観客が大半であった。
今ならほとんどの観客が理解できるであろう。
その傑作『東風荘』を押しのけて、私の中の林作品ナンバーワンを塗り替えたのがウイングフィールドで初演した『サブウェイ』であった。
地下鉄に関係する様々な事柄をコラージュした「映画」の舞台化。
暗闇の地下を走る地下鉄、その地中には地球の歴史を刻む地層があり、通勤の地下鉄内でひしめき合いながら目的地に向かう人々と、車内のいたるところに張り巡らされた膨大な広告の数々。
都会にしか無い地下鉄に乗るのは、ほとんどが地方から出てきた故郷喪失者であり、登場するのは映画製作のために選出された7人の地方出身者たち。
それに並行して進むのは、同じく故郷喪失者でありながら、都会で大成功を成し得た北島三郎の物語。
それらは微妙にリンクしながら収束し、映像の編集技術と制作者の都合により、とんでもない結末へと導かれるドキュメンタリー映画。
一見バカバカしい北島三郎のオチで誤魔化されてしまいそうになるが、娯楽作品に見せかけてはいるが、実は都会や広告、映像作品に対する風刺が描かれた林慎一郎最高傑作である。
インタビューを受ける人たちに重なって投影される字幕、インタビューと関係なく舞台上で同時進行するイメージ映像のようなパフォーマンス。
これらは全て映像作品に頻繁に見受けられ編集技術や演出手法である。
この作品は映画そのものであり、「映画」の舞台化なのだ。
初演時は驚くべきことに、ほぼ同じ舞台装置を当日乗り打ちで公演され、朝からウイングフィールドで仕込みを始め、夜にはしっかりと上演しているのだ。
もっとも初演時には7名の登場人物による月曜日から日曜日までの7日間を、創世記の天地創造の7日間に見立てた作品となっていた。
今回の再演に当たり、追加変更された部分が20分はある。
冒頭の客入れ時に『エダニク』チームによる映画館で3D映画を見る寸劇が足されており、スクリーンと思しき窓の中で、前説代わりの映画館の流れるアナウンス映像が、本編の登場人物によって描かれる。
この時点で観客に、今から「3D映画」が始まりますよ、今から始まるのは立体映画ですよと、明確に提示されている。
本編の最大の変更点は、7名による7日間を、8名による8日間にしたことで、8人目の登場人物として、映画の撮影現場における助監督を登場させている。
この助監督の存在が、各場面が映画撮影中の映像であることを判りやすくさせ、それに関連して8日目の月曜日を追加し、天地創造後に起こるノアの方舟の大洪水、バベルの塔建立までを描いている。
これらは3.11の大震災と津波、東京スカイツリーの建設に重なる。
更に7日目の終わりに当たり、新たに追加されたコマーシャルの連続編集のシーンは10分以上もあり、観客を呆然とさせるのだ。
昨今のTV番組やネット放送のCMの長さは膨大で、いつ始まるか知れない本編を待ちながら、垂れ流される長時間のCM映像を見せられ、画面の前での釘付けを余儀なくされる視聴者の気分を堪能できるはずだ。
もう一つ、素晴らしいのは、役者全員が初演よりも格段上手くなっていることである。
怪優、あらいらあ・小笠原聡の演技は、東京の観客も釘付けになるであろう。
井尻智絵、ののあざみ、二人はこれまでの舞台作品の中でもベストアクトは間違いない。
門田草、後藤七重、猿渡美穂、これまでにない新たな演技と魅力が発見できる。
7人が白い衣裳を纏う中、異質な黒の衣裳を着けた助監督の中元志保が、あまりにもキュートで初々しく、とても良い。
初演の『サブウェイ』が最高傑作と書いたが、深く理解すればこの再演もまた最高傑作であることが理解できる。
この成功の半分の功績は、振付の原和代の存在にある。
作品製作の初期から演出に関与し、作品の意図を深く理解した身体表現の振付なくして、この作品の成功はなく、演出と振付の共同作業が、この作品を最高傑作に昇華させている。


真夏の極東フェスティバル・東京公演データ
@王子小劇場
8/25(木)15:00[真夏]、19:30[極東]※1
8/26(金)15:00[極東]、19:30[真夏]※2
8/27(土)14:00[真夏]※3、18:00[極東]※3
8/28(日)11:00[極東]、15:00[真夏]
※印はアフタートークあり
ゲスト/1.楫屋一之、2.中屋敷法仁、3.竹内佑×丸尾丸一郎
料金/前売2500円、当日2800円、2公演通し券4500円、平日マチネ割引2000円