HPF2016
大谷高校
『十二人の怒れる女たち』
作/Reginald Rose
演出/三井玲奈
@メイシアター中ホール

1958年初演、レジナルド・ローズの名作『十二人の怒れる男』を大胆に十二人全員を女性に変更し、改題潤色する。
大谷高校得意の遊びを挿入できる箇所はいくらでもあるが、敢えて重厚な台詞を最低限の潤色に抑え、正統派の演技演出で構成し、90分の濃密な作品に仕上げている。
舞台美術は中割を閉じて広過ぎるアクティングエリアを狭くし、中央奥に黒板、黒板の前に広い間口を活かして横一列に並べられた十二脚の椅子、両袖に少しばかりの装飾を施すものの、机や扇風機と言ったお決まりの美術をカットして、本当に必要な最低限の装置だけが措かれている。
原作の持つ密室感や暑苦しさ、机や筆記具を省くことにより実務性を無くしてしまうことは否めないが、全員の顔と身体と演技を客席から最も観やすい状態に配置した斬新な演出プランである。
よって本作は原作のような現実味の溢れるリアル感や、討論劇に見る一触即発の危機的状況を作り出すのでは無く、役者を見せるための正面向き演技を基本として、演技力で物語を築き上げるように演出された作品となっている。
演技力勝負ゆえスタッフワークも最低限に抑えられ、美術・小道具を大幅に省略、大きな照明変化はラストまで無く、挿入曲も冒頭とラストに限られる。
付け鼻をすることで西洋人であることを明示し、冒頭で付け鼻も外してしまうので全てはお芝居ですよと観客に示される。
十二人を全員女性にした時点で既に演劇的なのだ。
登場や退場はコミカルでリズミカルにショーアップされていて、前説部分を含め大谷高校本来の持ち味を上手く活かしている。
照明変化も同じく、よく見かける最後の退場者がスイッチを触り室内の灯りを消すような演出は行わず、実に演劇的に照明変化し、ラストは舞台センターの小道具に単サスを残す超オーソドックスな照明プランで締めくくられる。
音楽の選曲も誰もが知る有名な刑事ドラマやミステリ・サスペンス映画のテーマ曲で統一され、それぞれに個性を強調する衣裳を纏い、全てに於いて実におしゃれ。
さすがに台詞が重いので中盤で少し中だるみするが、問題視するほどのことは無く、終盤でしっかり巻き返して来るあたりが大谷高校の底力の強さなのだ。