HPF2016
箕面東高校
『追う女追われる男』
作・演出/志水直樹
@シアトリカル應典院

いつも通りにしっかりと設えた舞台装置は舞台中央奥に高台が在り、その両側は階段で中段の踊場に降りられる。
上手と下手の両脇に在る中段から舞台外側に床面に降りる陰段、舞台内側には舞台中央に向かう階段が施され、舞台奥には天井から4枚の吊り物が吊られた左右対称の舞台美術。
中央の高台の下部には紅白の布がX型にクロスして張られている。
アングラ色の強い照明プランも普段通りだ。
内容はアングラファンタジーだが、演技は既にアングラから脱却してきたので、アングラやファンタジーや復讐劇や色々な要素を含む挑戦作である。
だが今回はストーリーに疑問が残る。
世界を旅して廻る貧乏サーカス団の団長が、どこかの国のスラム街で出会った女と恋に落ち、サーカス団はその地を去ってしまったが、女は身ごもっていて女の子を出産したが、女の子が8歳の時に母親が死んでしまう。
ここから彼女の父を追う旅が始まるのだが、死んだ母親の肉をスラムの貧民たちに喰い始め、8歳の娘も飢えを凌ぐため母親を食するのだ。
ハンニバルかと思った。
これが元で彼女の人格に影響を来し、発狂するでもなく、父親に復讐するため研究員から惚れ薬を買ってサーカスへ向かう。
何故に惚れ薬!?
夏の夜の夢?
食人の設定は必要と思えず、惚れ薬もどうかと思うぞ。
研究員も団長に惚れ薬を渡して何故に自ら暴露する?
特に後半に入ってからは、サーカスを辞めると言う女性団員を辞めさせないなように惚れ薬を飲ませ、それを見たスイも惚れ薬で毒牙に掛ける。
スイのサーカス団での存在意義って何だったの?
スラム街で生まれた娘が一体どこで大金を?
記者よ、惚れた女に惚れ薬飲んでどうする?
記者ともあろう者が、安直に惚れ過ぎ、仕事しなさ過ぎ!
サーカスで貧乏なのに世界を廻れる?
客が無くても律儀に挨拶。
15歳からサーカスを始め、一体何歳で団長に?
団長になってからスラム街の興行で女と出会い、娘が大人になって復讐に来たとして、団長は少なくとも40歳以上?
夢の中に現れる謎の女、謎のまま終わる衝撃!
どう考えても母親だろ!!
等々とツッコミどころ満載で、狙い通りならお見事である。
せっかくのサーカス団なのだから、冒頭もサーカスのパフォーマンスをすれば良いのに、何故に花一匁(もんめ)?
前半、団長と女の物語を交互に見せる2プロット構成の展開で、前半をマジメに作り過ぎて後半が乱雑になってしまう。
照明もその煽りを受けてか、2プロット進行で2パターンの地明かりを作り、場面転換をブルーで繋ぐまでは良かったが、中盤から異なる転換明かりになってしまう。
登場のために一瞬暗転を何回か使用するが不要である。
2パターンの地明かりと転換明かりも2通りにしてラストまで構成出来れば良かったが、脚本が途中から迷走を始めると、照明も一緒に崩れ始める。
統一感のある転換を心掛けたい。
音響は総じてレベルが大きく、音楽が流れるとスピーカー近くの席はセリフの声が聞き取れない。
スピーカーのmaxレベルは観劇に支障を来すので、必ずチェックすること。
演出では高低差のある舞台装置に手こずり、転換時の移動や板付きに時間を要し、間延びしてしまう。
この作品に、この大道具は合わなく思う。
サーカスのパフォーマンスがあるなら、最大限の効果が期待できるが、今回の脚本なら中段までで十分に思う。
高台下の紅白の布、天井から吊られた4枚の板、特に意味のない美術は必要ない。
それを仕込むために要した時間を、場当たりや稽古に充てた方が良い。
ここまで一読すると、ずいぶん酷評に感じるかも知れない。
しかし、それほど気に病むことはない。
元々演劇に必要な全ての項目に於いて箕面東は平均以上の実力を持っているし、演出や演技力も劣る部分は何もない。
講評はダメ出しではないが、たくさんダメがあると言うことは、改良点や改善策がたくさん試せると言うことで、それだけ多く伸び代があることに他ならない。
少なくとも私にとっては、勧善懲悪でミスのないお利口さんな舞台作品よりも、どれだけ未完成で未熟であっても自分たちで考え工夫して、試行錯誤の挑戦の末にできた失敗作の方が、時として輝いて見えることがある。
箕面東には常に挑戦者であって欲しい。