HPF2016
精華高校
『さんびきのおおかみver3』
作/いやどみ☆こ〜せい
潤色/鳥頭(顧問)三歩
演出/赤松麗那
@ウイングフィールド

仲の良くない生徒やクラスで浮いた存在の級友を交えた、文化祭の出し物のクラス劇を通して友情や団結を取り戻すストーリーに、歌あり、ダンスあり、群読あり、劇中劇ありで盛り上げる高校演劇のお手本的な脚本と構成。
劇中劇は「三匹の子ブタ」「赤ずきん」「狼と羊飼い」に登場する狼をクラスで浮いた存在の三人の生徒に重ね、劇中の女子生徒が創作したクラス劇で、暗転後の最終景で暗転までの物語が全て演劇であったことが明示される3重構造のメタフィクション作品になっている。
冒頭から群読・シルエット転換・歌&ダンスと盛りだくさんで、本編が始まると制服の上着を着たクラス劇賛同者8名が上手エリアに、上着を脱いだクラス劇に無関心な異端者3名は下手エリアと、明確に照明のエリア分けと衣裳の色分けで示され、その後の展開も相当数の照明変化と挿入曲があるだろうと思いきや、これまでが嘘のような地明かり芝居になる。
劇中劇の稽古の場面に音楽や照明変化が入りそうなのに、淡々と会話劇のように進行する。
途中に歌とダンスが1曲、回想シーンで照明が暗くなるものの、概ね劇中劇も地明かりだけで進行する。
激昂する場面も回想シーンの泣ける場も音楽の挿入は無い。
ここまで照明と音響を使わず進行するなら、正面向きの演技を減らし会話劇に演出を改めた方が良いだろう。
台詞のある者が舞台前、他の生徒は舞台中ほどに横一列、はみ出し者は舞台奥と配置されてからはほとんど移動がない。
役者が突っ立ちのまま動けなくなってしまう。
これは惜しい。
集団シーンで最も陥りやすいパターンなのだ。
終盤の音楽も不要である。
ここまで音楽の挿入も照明変化も無かったので異質感が強く感じられ、BGMレベルでも違和感は否めない。
音楽のキッカケも如何にもな場所なので気恥ずかしい。
BGMのINとOUTは、さり気なくが基本である。
再び照明が変化し音楽が挿入されるラストの手前は、群読の効果もあり詩的に美しくまてめられている。
暗転後の最終景は賛否の別れるところだろう。
今まで見ていた物語が唐突に劇中劇に変貌する劇的なシーンだが、どんな作品も一瞬にしてメタフィクション化する常套手段でもあり、タネ明かしにならないタネ明かしに思える。
物語自体は暗転前に終わっているので、更に本編を劇中劇にする必然性は薄い。
私は蛇足に感じる。
HPFで6校を拝見した内、精華だけが大黒幕を開きホリゾントを採用するのだが、前明かりが強過ぎてホリゾントに登場人物の影が幾重にも重なって落ちてしまう。
これは美しくない。
地明かりは上からの照明をベースに、前明かりは陰をフォローする程度の明るさに抑えると良い。
最も多いミスの一つだ。
パンフレットは顧問教師の演劇に対する愛に溢れている。
特に本作と部員たちに対する愛情は並々ならぬ深さを感じる。
次回公演『ファミリアー』の作者・瀬戸山美咲氏は、私の後輩で2009年に海難事故で亡くなった「くじら企画」主宰の大竹野正典に注目し、大竹野の人生を戯曲化するため昨年から何度も来阪して取材を行われ、私も何度か立ち会った。
戯曲は完成し、本年6月『埒もなく汚れなく』は大盛況に終わる。
私たちが出版した彼の戯曲集、大竹野正典劇集成(全3巻)を関東に知らしめた恩人である。
目の着け所が良い。
精華高校演劇部の健闘を祈る!