7/22(土)HPF2017
関西大学第一高校
『走れ、あの日のヒーローみたいに』
作/楽静
演出/西村まりな
@シアトリカル應典院

自分たちが演じるに相応しい脚本は、それを見つけ選んだ時点で公演の50%が成功したと言える。
既成戯曲を演劇作品として上演する時、脚本選びは最も重要な作業の一つである。
関大一高が選んだこの脚本は構成が素晴らしく、短い時間に上手くまとめられている。
冒頭の印象的なヒーローの登場。
三者三様の異なる考えを持つ3人の主人公。
傷付き、悩み、励まし合い、時に仲違いし、苦しみも喜びも共に分かち合い、同じ時間を共有する。
誰もが学生時代に当たり前に経験した事の数々が描かれている。
高校生にとっては現在がその真っ最中で判らないかも知れないが、既に後戻りできない年齢になって初めて、その時その時間が如何に素晴らしく輝いていたかを痛感するのである。
3人に対比して、それぞれに近しい関係の大人や先輩に、励まされ、叱られ、時に厳しく、時に悪者になり、常に見守ってくれる存在がある。
彼らもまた、若い頃に同じように励まされ、叱られて、常に見守られていた事を今はよく解っているのだ。
終盤に入り、公園を屋上に見立てるくだりがとても良い。
冒頭のヒーロー登場の場面で、実は3人が子供の頃に既に出会っていたことが判明する仕掛けも面白く、ラストの屋上に上がり鍵を開けてドアを開けると、意外にもよごれてきたない屋上が広がっている劇終が非常に良い。
これは彼女たちの未来を表わすメタファーである。
卒業したあと彼女たちが出会う社会は、決して希望に満ち溢れたものではない。
社会には、時に矛盾と不条理が横行し、諦めたり妥協したり、間違いを間違いと言えない場合だってある。
でも、そんなことは彼女たちも何となく知っている。
きたない屋上のドアを開いた彼女たちの顔は、曇ることなく輝いている。
美しく、素晴らしいラストであった。
HPFはコンクールではない。
だから基本的にはホメ出しをする。
ホメ出しはダメ出しの逆さまで、良かった所をたくさん誉めてあげたい。
だが、私は舞台監督を仕事にしている関係上、スタッフワークの改善を図らねばならない。
だから幾つかダメ出しもする。
終わった演劇作品は今さら修正できないが、改善点を後輩に代々伝えていけば、それはきっと未来の演劇部の財産となるだろう。
照明は前明かりが強過ぎる。
地明かりをベースにして前明かりは顔の陰影を消す程度の明るさにすると良い。
場所ごとに違う照明プランをしても、前明かりの明るさに色が消されてしまい、全て同じ地明かりになってしまう。
懐中電灯の場面も総じて明るいので、懐中電灯に違和感を与えてしまう。
一旦暗い照明の中で懐中電灯を強調し、そのあと徐々に明るくすると良い。
効果音は台詞に被るとすぐに落とすのではなく、台詞が始まったら音量を少し落とし、30秒ほど待って徐々に消すよう努めたい。
セミの声やチャイムが急速に消えるのは気持ち悪い。
冒頭に次の場面の小道具が既に置かれているのも変だ。
場面転換時の暗転で出すべきであろう。
音具の鳴子(鳥威し[トリオドシ]とも)をテルミンと言い切るのは無理がある。
もう少し良さげな名称を。
衣裳は場面によって、着替えても良い。
バイト先ではバイトの服に着替えるのに、他の人物が着替えないのも変だ。
女性の先生が毎日同じ服を着ることはないだろうし、母親も自宅では部屋着に着替るはず。
着替えなしで行うなら、先生はスーツ、母親は外出時も自宅内でも不自然にならない衣裳にすると良い。