タイトル通りなのだが、光州の新世界百貨店の1階にあるルイ・ヴィトンの店の前には、いつ行っても入店を待つ人の行列ができている。

平日でも必ず何組かの客が入口の前で待機しているし、週末などは店舗の周囲をぐるりと取り囲むように長い列が形成されている。

自分はこの列は、


ルイ・ヴィトン側による一種の印象操作


であるとずっと信じて疑わなかった。

新世界百貨店の1階にはルイ・ヴィトンの他にディオール、フェラガモ、バーバリーも店を構えているのだが、入店を待つ人の列ができているのはルイ・ヴィトンだけである。

通りすがりの人がこの列を見れば、


「ディオールもフェラガモもバーバリーもあまり人が入っていないのに、ルイ・ヴィトンはさすがに人気があるのね。やっぱりブランドとしての格が他とは違うのかしら」


という印象を抱くだろうし、見る人にそのような印象を抱かせたいがために、ルイ・ヴィトン側が一度に入店できる人の数をあえて制限して、常に何組かの客が店の外で待機しているようにコントロールしているのだろう、と思っていたのだ。

自分はルイ・ヴィトンというブランドが特に好きというわけでもないし、店頭で実際に商品を眺めて目の保養をしたい、とも別に思わないので、この列にわざわざ並んでみようと思ったことはこれまでに一度もない。

が、母から譲られた古いモノグラムのアクセサリーポーチの持ち手がかなり痛んでいるので、機会があったらこの持ち手部分を修理してもらいたい、とはずっと前から考えていた。

そこで、何日か前に新世界百貨店に行った時に、新型コロナウイルスの影響で人々が外出を控えている今のタイミングなら、もしかしたら待たずに店内に入れるかもしれない、と考え、修理に出したいアクセサリーポーチを持参してルイ・ヴィトンに行ってみた。

すると、思った通り、店の前には誰もいなかった。

しめしめ。さくっと入って、さくっと修理の見積もりをしてもらって、さくっと出ることにしましょうか。しめしめ。

・・・と、意気揚々と店内に入ろうとしたら、入口に立っていたマスク姿の女性店員に止められた。彼女に指し示された方向を見ると、そこには見慣れない端末が設置されていた。

入店を希望する人がその端末に電話番号を入力すると、入店可能になったタイミングでカカオのメッセージがスマホに届く仕組みになっているらしい。

一瞬迷ったのだが、せっかく来たんだし、ということで電話番号を入力。すると、なんと自分の前に34組もの人が入店を待機していることが判明した!


「34組ですと、だいたい1時間半ほどお待ちいただくことになりますね」


と、店員さんにサラリと告げられた。店の前から行列こそ消えていたけれど、待機者はちゃんと存在していたのだ。

ルイ・ヴィトン側の印象操作だと勝手に思い込んでいたのだが、実はそうではなく、本当に人気があって、ひっきりなしに客が訪れていた、という事実がここであらためて判明。

基本的に待つことが嫌いなので、1時間半も待たなければならない、という点にものすごい心理的な抵抗を感じたのだが、娘のスニーカーを探したり(←ピンと来るものがなかったので残念ながら買わなかった)、食事(←地下に新しくできた中華料理のお店が手頃な価格帯なのに美味しかった)をしたりして待てばいいか、と考えを改めた。

店員さんの予言通り、ほぼ1時間半後にスマホにメッセージが届いた。メッセージが届いてから10分以内に入店しないと「入店をお断りする場合がございます」とのことだったので、慌てて店に向かった。

今回、修理を依頼したかったアクセサリーポーチはこちら。



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おー、見るからに年季が入っていますねー。

本体はまだ普通に綺麗な状態なのだが、持ち手のヌメ革が黒ずんでしまっている。自分はこの持ち手を取り外し、手持ちのゴールドの長いチェーンを付けて斜め掛けにして使っていたのだが、よく考えてみると斜め掛けってあんまり好きじゃないんだよね(←超今さら)。

でもって、ヌメ革も好きではないので、希望としてはこんな感じに短めのゴールドのチェーンを新しく付けたかった。



スクリーンショット (837)

ミニサイズのアクセサリーポーチにゴールドのチェーンが使われているのだから、そのチェーンを少し長めにしたものを取り付けてもらえれば、と思って聞いてみたところ、答えはノーだった。


「確かにミニサイズのアクセサリーポーチには金属のチェーンが付いていますが、お客様がお持ちのポーチの持ち手はヌメ革です。もともとのデザインを修理の際に変えてしまうことはできませんので、チェーンはお付けできませんが、ヌメ革の持ち手部分を新しくすることはできます」


えー、ダメなの? と一瞬思ってしまったけれど、冷静に考えてみたら、そりゃそうだわ。もともとのデザインを変更してしまうのは、もはや修理じゃなくて改造だし。

天下のルイ・ヴィトン様に向かって、


「ここのデザインがちょっと気に入らないから、こういう感じに変えてよ」


と要求するなんて、「お前、何様?」状態もいいところである。

参考までにヌメ革の持ち手部分を新しいものに交換した場合の修理費用を訊ねてみたところ、8万ウォンだそう。

仮に持ち手のヌメ革を新しくしても、ファスナー部分の先端に付いているヌメ革の色との差が逆に目立ってしまっておかしなことになる気がする。

結局、今回は修理に出すことはなく、そのまま店を後にした。滞在時間はトータルで5分ちょっとだったと思う。この5分のために1時間半も待ったのかい! という感じだけど、まあ仕方がない。

当面はこのまま斜め掛けで持ち続けようと思う。




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さて、実はここからが本題だったりします。っていうか、前置き長すぎ?

ここで、なぜルイ・ヴィトンはこんなに人気があるのだろうか? とあらためて考えてみたい。繰り返しになるが、同じ新世界百貨店の1階にある他の高級ブランドの店はどこもさほど混んでいないのに、ルイ・ヴィトンだけ異様な混み方なのである。

ルイ・ヴィトン側による印象操作ではなかったことが判明した今、ただ単にルイ・ヴィトンは他のブランドよりも人気が高い、という解釈でいいのかな?

何人かの身近な韓国人の友人に聞いてみても、「私はそんなに興味ないんだけど、うーん、好きな人が多いんじゃないの?」という曖昧な返答ばかり。

2019年12月に朝鮮日報の日本語版に韓国人が好きなハイブランド1位は? というドンピシャな記事がアップされていたのだが、それによると堂々の1位はグッチで、2位がシャネル、肝心のルイ・ヴィトンは3位にようやくランクイン、という結果になっている。




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光州の新世界百貨店の同じフロアに入っているバーバリー、ディオール、フェラガモの3ブランドに比べると圧倒的に高い人気を誇っているものの、1位のグッチには倍近くの勢いで引き離されている。

グッチは光州ではロッテ百貨店の1階にあるが、こちらはいつ見てもわりと閑散としていて、店の前に行列ができているようなことはもちろんない。2位のシャネルは、残念ながら光州には店舗がない。

続いて、年齢別のグラフを見てみたい。




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10代と20代はグッチがぶっちぎりの1位だが、30代以降ではシャネルが1位に躍り出ている。ルイ・ヴィトンは10代から50代までは安定的に(?)3位から4位をキープ、60代以上の世代でようやくグッチとの順位が入れ替わって2位に。

実際、最近のミッキーマウスとのコラボ商品なんかもそうだけど、グッチは比較的若い層をターゲットにした商品展開が増えているので、これはまあ納得できる結果かもしれない。

では新世界百貨店のルイ・ヴィトンの店の前で列に並んだり、店内で商品の説明を受けているのは年齢の高い人ばかりなのか、というとそんなことは全然なく、どちらかというと30代を中心とした若い世代の方が多そうな印象。

せっかく統計結果を見たのに、ますますわけがわからなくなってしまったので、NAVERの質問ページ(←ヤフー知恵袋の韓国版みたいなやつ)で疑問をダイレクトに投稿してみたところ、投稿した1分後に誰かから早速回答が寄せられた。




ルイ・ヴィトンのバッグは長い歴史と伝統に裏付けられています。多くの人にとって、ルイ・ヴィトンは他のブランドよりも格がずっと上、という認識です。価格は高い方ですが、お金があるなら(他のバッグを買うより)ルイ・ヴィトンを買う方がずっといい、という認識です。


うーむ、なるほどね・・・。

人によって好みはまちまちだけど、ルイ・ヴィトンのブランドとしての格に疑問を挟む人はおそらくいないと思うし、何かの記念にバッグを、となった時に、ルイ・ヴィトンを選んでおけば間違いない、という安心感のようなものは確実にある。

確かに、中途半端な価格帯の中途半端なブランドのバッグを買うのだったら、もうちょっとがんばってルイ・ヴィトンのバッグを買う方が長い目で見るとずっといいのは理解できる。

どんなに古くなっても、壊れてしまっても、ブティックに持って行けばちゃんと修理もしてもらえるし、デザインにもよるけれど、親から子へ、子から孫へ、という具合に同じバッグを代々受け継いでいくことができる、数少ないブランドの1つであると思う。

あらためて考えてみると、一口にハイブランドと言っても、クラフトマンシップ(職人の技巧)を大切にしているブランドと、どちらかというとデザイン性や遊び心を前面に打ち出しているブランドとに分かれる。前者の代表格はエルメスで、グッチやシャネルなどは後者に属する。

ルイ・ヴィトンの場合、このクラフトマンシップとデザイン性のバランスがいい具合に取れている気がする。高価ではあってもエルメスほど高価ではなく、グッチやシャネルに比べると縫製面などの技術は格段に上。

まあ要は、


ルイ・ヴィトンを選んでおけば安心


というのは確実にあると思うので、それが店舗での待ち時間にも反映されているのかな、というのが現時点での結論だったりする。

今回は修理に出さなかったアクセサリーポーチも、中途半端に持ち手だけ交換しないで、もうちょっと使った後でファスナーが痛んできたら、ファスナー部分の金具も含めて本体以外を総取り替えして、まったく新品同様状態にして娘に譲るのもアリかもしれないな、なんて思ってしまった。

正直に告白すると、この記事を書き始めた時は、ルイ・ヴィトンの一体どこがそんなにいいのだろう? と半ば疑問に思っていた。

しかし、まったく意図していなかったにもかかわらず、頭の中で情報を整理しながら文章を書き進めていくうちに、ルイ・ヴィトンというブランドの魅力にあらためて気付かされてしまったような気がする。


最後までお読み下さってありがとうございます♪

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