May 2005

May 31, 2005

題名のない音楽会「歌舞伎 meets クラシック」

 題名のない音楽会「歌舞伎 meets クラシック」を観る。ゲストは中村福助。うーむ。クラシックに合わせて踊る企画そのものは非常に興味深かったのだが、その日舞の作り方、ディテールに大きな疑問を持った。振付は、藤間勘十郎、日舞界の頂点にいる人である。なにをかいわんや。私も、いい度胸だ。
 最初は、『カルメン』より「前奏曲」・「ハバネラ」。赤無地の振袖(赤姫の赤ではなく深紅)で、頭にバラの花を差した福助の一人踊り。藤娘と京鹿子娘道上寺の振りをアレンジしている。確かに、美しい。適度に現代的で、カルメンを和風にしたらこうなるだろうと思わせる、納得の衣裳。しかし、なんだろう、この違和感は。振りを、どっから持ってきてるかわかるからか? それもあるが、大きな理由は二つ。日舞にだってあるはずのリズム・拍子と、振りを全くシンクロさせていないこと。毒婦の要素、小悪魔的色気がポイントのはずのカルメンのキャラと、藤娘・道上寺の純情可憐キャラが全く合っていないこと。
 もう一つの踊りは、バレエ音楽『くるみ割り人形』より 「行進曲」・「金平糖の精の踊り」。福助、勘十郎の素踊り。勘十郎が踊りの前にコメント。「くるみ割り人形は少女の夢を舞台化したものなので、日舞でも、同様に夢をモチーフにしている夢椀久の世界と重なります」 えーーーーっ! 夢ってとこしか、合ってないですよぉ。夢椀久は、残された男性が死んじゃった恋人を思う話でしょ? 踊りを観て、えーーーっ!は現実の違和感になった。そもそも、椀久ものはかなりゆったり、はっきり言ってダルい踊りである。くるみ割り人形の中でも、「行進曲」・「金平糖の精の踊り」とは合わないでしょ、どう考えたって。藤間勘十郎は、本気で日舞にリズムはいらないと思っているのか? 
 リサイタルではなく、テレビ番組の企画に合わせて依頼されただけだから、こんなもんでしょっということなのか? オペラ、バレエの世界を日舞で! というせっかくの企画、ありものの日舞をアレンジしてごまかすっていう考え方自体、両方を冒涜していないか? 踊りなしで、「将門」をピアノとソプラノ用に編曲(番組では、さらにオケ用に別の方が編曲)した常磐津文字兵衛の取り組み方とは、明らかに違う。ま、こっちはこっちで、ソプラノの歌詞が、常磐津と同じくらい聞き取れないという問題はあったのだが。
 落語に詳しい知り合いが『タイガー&ドラゴン』を評価しないので、そんなものかと思っていたのだが、気持ちがわかった。気になるのだ、いちいち。そうだよねぇ、そんな簡単なことじゃないんだよねぇ。

usagian123 at 09:20|PermalinkComments(0)TrackBack(0) OTHERS