荒木あかね「此の世の果ての殺人」
第68回江戸川乱歩賞受賞作。小惑星が日本の熊本県に衝突し、人類が滅亡するといわれている、その数か月前。世界は混乱を極め、暴動で亡くなる者、国外へ逃亡する者、そして自殺する者が後を絶たない。そんな中、小春はある目的を叶えるため、自動車学校へ向かう。しかし無人と思われた教習所にはイサガワという女性教官が残っており、小春は彼女の指導の下、運転技術を磨いていたのだった。しかしある日、教習者のトランクに女性の惨殺遺体が入っていることが発覚。元警察官だというイサガワは、小春を助手代わりに犯人を捜そうとする。人類が滅びるというこのタイミングで殺人を犯すというそのメンタルはなんなのか……「人類最後の連続殺人事件」という惹句がキャッチ―すぎる本作だが、ミステリとしては実にまじめというか堅実(?)な展開。ゆえに明かされる真相とには驚きを隠せない。どうせ犯人を見つけても、その少し後には犯人だけでなく自分たちも死んでしまう。けれどそれでも、自分たちが信じる「正義」をなそうとするふたりの姿が印象的。
倉知淳「占い師はお昼寝中」
約30年ぶりに大幅加筆修正を経て復刊されたという「改訂完全版」な本作は、タイトルの通り「占い師」が、依頼人の抱える悩みを解決していく連作短編集。ただしこの占い師、まったくもって霊験あらたかではなく、本当に洞察力のみで謎を解くのだから驚きしかない。そんな本作の語り手は「占い師」……ではなく、その姪で大学生の美衣子。母親に頼まれて叔父・辰寅の面倒を見つつ、助手として「占い師」の仕事を手伝っているのだ。その叔父・辰寅は「霊感占い所」にやって来る「お客さん」から悩みを聞き出し、その「霊感」で解決法を伝授しているのだが、もちろん(?)辰寅に霊感などはない。しかしその洞察力はピカイチで、ともすれば「占い」やら「霊感」やらを標榜する相手に、悩みのすべてを正直に洗いざらい話すわけではないし、話していたとしてもそれだけで真相を見抜くなど無理からぬ話……かと思いきや、なぜか辰寅はたちどころにその話の裏に隠れた部分まで推理してしまうのだ。ぐうたらすぎる性格に対しては怒りっぱなしの美衣子だが、その推理には一目置いていることがうかがえる。ただ、すごいのにすごそうに見えないところがある意味彼の人徳(?)なのかもしれない。
真門浩平「ぼくらは回収しない」
第19回ミステリーズ!新人賞受賞作「ルナティック・レトリーバー」に、書き下ろし短編4編を収録した作品集。個人的によかったのは「カエル殺し」と「速水士郎を追いかけて」。「カエル殺し」は「井の中のかわズ」というお笑いコンピが主人公。じわじわと頭角を現していき、ついて大きな賞を獲った「かわズ」。順風満帆に見えたふたりだったが、テレビでの露出仕事が増えたことで、バラエティ番組における自分たちの力量のなさを思い知らされるように。そんな中、ピン芸人の先輩が大きい賞を獲った直後に何者かに殺されてしまう。作中にも出てくる「蛙化現象」をテーマにした短編だが、まさかのオチには驚かされる。「速水士郎を追いかけて」は、繊細すぎる高校生・速水士郎と、彼と仲良くなりたいサッカー部員・一ノ瀬による日常の謎系ストーリー。こちらも「まさか!」と言いたくなるような真相の事件が起きるのだが、これはこれで青春だ、という感じもしていい。なお、本作品集のタイトルを冠した作品は収録されていない。が、最後まで読むと、なぜこのタイトルになったのかがよくわかる。この作品集自体が謎解きの答えになっているということに、またしても「まさか!」と驚かされてしまった(笑)。

































