phantasmagoria

読んだ本のこと、それ以上に買った本のこと、ときどきライブのことを書き散らかしてみたりする。



これまで、東京創元社からは「年刊日本SF傑作選」として年度ごとの再録アンソロジーが出ていたが、このたび書き下ろしアンソロジーシリーズが新たにスタート。第1弾となる今回は久永実木彦、高山羽根子、宮内悠介、秋永真琴、松崎有理、倉田タカシ、宮澤伊織、堀晃の8人による短編と、加藤直之、吉田隆一によるエッセイの合計10作が収録されている。個人的に特によかったのは以下の通り。

◇宮内悠介「ホテル・アースポート」
宇宙エレベーターのふもとにある寂れたホテルを舞台に起きた殺人事件。2010年の「第7回ミステリーズ!新人賞」の最終候補となった作品の改稿版ということだが、確かにSFでミステリー。ホテルの従業員であるアイシャが出した香水にまつわるクイズの、その答えが最後まで余韻を残す。

◇秋永真琴「ブラッド・ナイト・ノワール」
〈夜種〉と呼ばれるようになった吸血鬼が人口のほとんどを占め、逆に数の減った人類が〈王族〉と呼ばれ特別視される世界が舞台の短編。視察旅行を抜け出した〈王族〉の少女と、〈夜種〉のギャングの青年との出会いはまさに「ローマの休日」的な展開ではあるが、ロマンス感だけでなく、そこはかとなく漂うハードボイルド感がたまらない。ぜひシリーズ化してほしい。

◇松崎有理「イヴの末裔たちの明日」
AIが発達した結果、「技術的失業」によって職を追われた男性が始めたのは治験のアルバイト。ただしその内容は「くじ運が良くなる薬」「モテる薬」「事故死しない薬」というところが面白い。そもそもそんな薬は実現可能なのか……というのがテーマではもちろんなく、というところがまたいい。ただ、その結末は面白いというだけではなく、どこかうすら寒いものがなくもないのだが。

◇宮澤伊織「草原のサンタ・ムエルテ」
地球外知性の憑依体が起こす人知を超えた事件を、同じ憑依体である少女ニーナと、彼女の協力によって憑依体に対抗しうる「歩法」を習得した特殊部隊が解決していくアクションSF。希望の見えないファースト・コンタクト――そこに答えはあるのかどうか。

私に付け足されるもの (文芸書)
長嶋 有
徳間書店
2018-12-18

シェーンブルン宮殿に併設されている動物園、そのトラの檻の前で、秋美はトラについて考えていた。トラがいれば「トラだ!」と思うだけなのだろうが、トラが目の届く範囲で不在とあっては、逆にトラの姿や歩き方に思いを巡らせてしまう。そのあたりが同行してくれている通訳係のジョシュにはうまく伝わらない。思いがけず歩きやすいウィーンの道、薄着なのに寒そうにしていないジョシュ、トラに「襲われたい」という気持ち。そのあたりもうまく伝わらない――伝えられない。決してトラに襲われて死にたいということではないのだが……。(「四十歳」)

2013〜2018年にかけて各種雑誌に発表され短編11本に、書き下ろし「瀬名川蓮子に付け足されるもの」を加えた短編集。

収録されている作品はどれも繋がっているわけではなく、ひとつひとつが独立した作品である。しかし読むにつれ、どうもどこかで繋がっているような気がしてくる。例えば「四十歳」で秋美がトラに対して「襲われたい」と考える、その理由。「Mr.セメントによろしく」で、友人がプラモデルを作る姿からにじみ出てくるもの。「どかない猫」で、タイトル通り布団の上からどかない猫や布団の奥底から這い出てくる猫。「潜行するガール」で、かつて母親が車の運転中に「セイコちゃん」を歌っていたこと――などなど。主人公たちが不意に感じる、あるいは見て取るのは、自分や他者が知らず知らずのうちに獲得している「居場所」のことなのかもしれない。ただそこに「いる」、または「ある」という自然な、しかし時には難しくすらあるその営みを、作者は手を変え品を変え描き出しているような気がする。

帯には「くだらないのに難しい、願望の話」とある。その通り、一見すれば取るに足りないようなただの「日常」なのだ。しかしそれは傍から見るからこそ取るに足りないのであって、当事者にとってはもちろんそうではない。その「願望」が叶っているのかどうかは当人にはわからない――またはその存在に気付いてすらいないのかもしれない。そういったささやかで些細な願いが叶うことこそが、もしかしたら「奇跡」と呼べるのかもしれない。

昨日の話ですが、大阪へ行ってきました。今年初の遠出(?)です。
とはいっても昨年最後(ほんの2週間ほど前)に行ってきたばかりのような気もしますが(笑)、今回は会社の後輩と一緒で、またしてもお笑いイベントを観に行ってきました。

今回の会場は高槻市にある高槻現代劇場。サンドウィッチマンが所属している事務所(グレープカンパニー)が主催しているイベントということで、去年行った福山のイベントとはまた違い、グレープカンパニー所属の芸人7組が出演。初めて観る人もいれば、新年のお笑い番組で見かけた人もいます。

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私と後輩の共通の目当てはもちろんサンドだったのですが、実は私が永野も気になっていたので、こちらも目当てだったりします。トリはサンドでしたが、その前に「サンドウィッチマンの前座」と自称しながら出てきました永野。もちろん例のラッセンはばっちり聞けました。というか2回もしてました(笑)。最初はひとりでラッセンを歌い、その後別のネタ2本(これがまたしょーもない←褒め言葉のつもり・笑)をしてから、最後に希望者全員をステージに上げて全員でラッセン。なおこの客とのラッセンについては動画を録られていて、その日の夜にTwitterにアップされてました。ちなみにステージに上がったのは若い子や子供がメインでしたが、真っ先に出て行ったのが壮年のおじさまだったのが意外でした(笑)。さすが大阪というべきか。

で、トリはサンドだったんですが、噂に聞いていた「サンドデビュー当初からのファン」である小島さんとやらがこの日も来ていたそうで(しかも前方に座ってる)、伊達さんに名指しされてしばらく立たされ、どんな人かという説明をされてました(笑)。しかし栃木から夜行バスでわざわざ来たとかすごいなーと思ってたら、以前にはふたりを追ってロンドンまで来たことがあるそうなので、もはやこの人もサンドのメンバー(または事務所のメンバー)なのではと言いたくなりますね(笑)。

で、イベントが終わってからは梅田→なんばと移動しながらなにかしら食べてました。というかこの日、着いて早々、新大阪で551の肉まんを食べ、その直後に昼食としてお好み焼きを。イベント終了後、梅田の阪急三番街をしばらくうろついた後、4時すぎから何か食べようと彷徨い始め、しかし行きたかった店が満席なうえ待つこともできず、改めて検索したり迷ったりしながらたどり着いたのが、東梅田駅の近くにある「純喫茶サンシャイン」でした。確かに「純喫茶」と言いたくなる佇まいの、こぢんまりとしたお店だったのですが、PayPayが使えたりフリーWi-Fiがあったりというギャップにびっくり(笑)。

なお、夕食だというのに、私はパンケーキセットを注文。あまりにもおいしそうだったのでつい……(笑)。あと「アミココ」という謎の飲み物があったので注文してしまいました。説明によると「コーヒーとココアを混ぜている」飲み物だそうなので、「アメリカン・ミルク・コーヒー・ココア」の略なのかしらと勝手に思っています。正解をご存知の方がいたら教えてください(笑)。そしてパンケーキはふわふわだしアミココも甘さと後味のコーヒー感が絶妙で、大変美味しかったです。

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その後は心斎橋へ移動して、これまた今回の遠足の目当てとしていた「心斎橋サンド」を買いに。テイクアウト専門の店で、開店が18時、しかも周囲は呑み屋街ということで、客引きをかわしつつ行ってまいりました。こちらで買ったたまごサンドは今朝食べたのですが、これもたまごとパンがふわっふわで美味しかったです……! 昨日は15,000歩くらい歩いたみたいですが、たぶん食べてる量の方が多い気がしますね(笑)。

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ちなみにたまごサンドの下にあるのは、サンシャインで買った「珈琲羊羹」です。コーヒー専門店でコーヒー豆を売っていることは多々ありますが、まさか羊羹とは……!


*ここ1週間の購入本*
水野英多「裏世界ピクニック2」(ガンガンコミックス/スクウェア・エニックス)
一口坂食堂「日本の菓鳥図鑑〜サブレの鳥たち〜」(自費出版物)


書き下ろしSFアンソロジー「NOVA」が3年振りに再開!ということで、第3期スタートとなるこの「2019年春号」も10人の作家による読み切り短編が収録されている。執筆者は表紙にある通り、新井素子、小川哲、佐藤究、柞刈湯葉、赤野工作、小林泰三、高島雄哉、片瀬二郎、宮部みゆき、飛浩隆となっている。個人的に特によかったのは以下の通り。

◇新井素子「やおよろず神様承ります」
家事育児介護のトリプルパンチに悩まされる専業主婦の「私」が出会ったのは、「宗教の勧誘に来ました!」と宣言する謎の女子・メイ。彼女に勧められた「順番順番いっこっつ」なる神様(?)の教義(?)の通りに生活し始めたところ、「私」の悩みは解消することに。しかしこのメイの目的はいったい……というところは最終的にさほど問題にならないところがまた面白い。SFというよりは教訓的な話のような気もする。

◇佐藤究「ジェリーウォーカー」
映画やドラマに登場するクリーチャー造形家として有名なピート・スタニック。彼の想像力の源泉はいったいどこにあるのか……と思っていたらとんでもない結末が待っているバイオSF。「魚にも寿命はある」のだろうが、果たしてその後、アレはどうなったのか……。

◇柞刈湯葉「まず牛を球とします。」
タイトル通りに牛を球にしている話。しかし読み進めるにつれ、牛を球にすることに端を発する食糧問題よりも、この物語の世界観の方がとんでもないことになっていたりする。「外人」の狙いは一体何なのか……因果応報というのはこういうことなのかもしれない。

◇片瀬二郎「お行儀ねこちゃん」
海外出張中、付き合っている彼女から飼い猫を託された圭一は、うっかりその猫を死なせてしまう。SNSで相談したところ、「お行儀ねこちゃん」なる猫のしつけ用器具を勧められた圭一は、これを使って死んだ猫を動かすことに成功するが……という、編集後記にあるように猫好きには許しがたい展開の短編。とはいえ、最終的にこの圭一くんが行きつく先はSFというかホラーというか……どうなったか具体的な描写がないのがある意味救いかもしれない。

◇宮部みゆき「母の法律」
虐待を受けた子や、虐待を行った親を保護・更生させるための「マザー法」なる法律によって、ある夫婦の養女となった二葉。しかしその法律では、養父母が離婚、または一方でも亡くなった場合は、養子縁組が解消されることになっていた。養母を亡くした二葉は、同じく養女として引き取られていた姉の一美と共に施設へと戻ることになるが、ひょんなことから二葉は、実母が死刑囚になったこと、そして実の娘に会いたがっているという話を聞かされて……という、わりとSF度は低めで、しかしなんとも皮肉に満ちた短編。法律で救えるものもあれば、そうでないものもある。難しい話だなとも思う。

本と鍵の季節 (単行本)
米澤 穂信
集英社
2018-12-14

利用者の少ない図書室で、図書委員としての業務をこなしている高校2年生の堀川次郎と松倉詩門。そんなふたりのところに、委員会を引退した先輩女子の浦上がやってきた。亡くなった祖父が遺したダイヤル式の金庫の開け方がわからないため、暗証番号をふたりに推理してほしいのだという。以前、乱歩の小説に出てきた暗号をふたりが解いていたのを思い出したがための人選らしい。実は浦上にほのかな好意を寄せていた堀川と、それを察知していた松倉は、中身によっては謝礼を出すという浦上の依頼を受けることに。「大人になったらわかる」というヒントに首を傾げつつ、浦上の祖父の部屋へ入ったふたりは、他とは毛色の違う本が並べられた本棚の一角に目を付けるが……。(「913」)

2012〜2018年にかけて「小説すばる」に発表されていた短編5本に、描き下ろし1本を加えて書籍化。図書委員の男子高校生ふたりが、本にまつわる謎を解いていく短編連作となっている。

大親友というほど仲が良いわけではないが、同じ図書委員であり、本や委員の仕事に対するスタンスも似ていて、互いのことをそこそこ知っている、という微妙な関係のふたり。持ち込まれた謎に対し、堀川も松倉もそれぞれ異なるアプローチで、互いにわからない部分を補い合いながら解決してゆくという流れがなんとも楽しい。

しかし「男子高校生の日常の謎系ライトミステリ連作」と思って読んでいると、なにか違うなという印象を受ける。それはふたりが解き明かす謎の裏に、わりと黒い感じの真相が隠されているからかもしれない。特に雑誌掲載の最終エピソードとなっている中編「昔話を聞かせておくれよ」と、その完結編ともいえる書き下ろし短編「友よ知るなかれ」は、松倉の家庭の事情にまつわる、なんともやりきれない物語となっている。

高校生が関わるにはあまりにも重たい内容ではあるが、松倉にとっては死活問題でもあるこの「謎」が解かれた時、松倉の人生は、そしてふたりの関係は大きく変わってしまうこととなる。謎解きを手伝ったとはいえ、部外者である堀川が言えることは、本当はないのかもしれない。それに部外者であるからこそ言えるきれいごとだったのかもしれない。けれど、近くて遠い微妙な関係だからこそ、言えることもあるだろう。松倉の「いつか守れなくなるかもしれないお題目でも、せめて守れるうちは守りたい」という言葉がこんなにも重いとは思ってもみなかった。けれど堀川が繰り返したこの言葉が、ちゃんと松倉にも届いていると信じたい。


スリランカで宝石鑑定の修行を続ける正義の元に届いたのは、リチャードの母であるカトリーヌが正義に会いたがっているという知らせだった。その背後にオクタヴィアがいることを察知したリチャードはなんとか阻止しようとするが、正義はリチャードを守るため、反対を押し切ってフランスはプロヴァンス地方へと向かうことに。リチャードにそっくりな美貌と天真爛漫な女王様気質の持ち主であるカトリーヌに振り回されつつも、ふたりは彼女から提示された「ゲーム」――オクタヴィアの援助で買い戻したヴィラに隠した32個の石を探すこと――を受けることに。実はそれらの石は書きつけのある紙にくるまれていて、すべて繋ぎ合わせるとヴィラに隠された宝の在処がわかるのだというが……。

世界へ飛び出したジュエルミステリシリーズ8巻。今回はフランスにてリチャード親子の仲直り作戦?ということで。

リチャードと母・カトリーヌの微妙な関係だけでなく、そこにオクタヴィアが絡むとあっては、正義が見過ごすことができないのも、またリチャードが正義を巻き込むのをよしとしないのも、どちらの気持ちもわかる。そして同時に、お互いがお互いをこのうえなく大切に思っているということも。現状、ふたりが別々の場所で暮らしていたり、プロヴァンスにやってきても別行動が多かったりはするものの、カトリーヌからの試しともとれるような言動にも屈せず、互いへの好意をきちんと示すふたりの絆(そしてそれを聞いた時の反応も含めて)がなんとも愛おしい。

しかしここにきてもなお不透明なのが、オクタヴィアとヴィンスの動向。リチャードがかつての彼女と別れたことが許せない、というのが第一の行動原理と思われるオクタヴィアだが、そのやり方は――クレアモント家の事情が絡んでいるせいもあるようだが――一歩間違えばシャレにならないようなことばかり。しかしそれを誰も力ずくで阻止しようとはしていないあたり、正義が懸念するように、まだなにか大きな問題が隠されているのだろう。そしてそんなオクタヴィアよりもさらに謎なのがヴィンス。今巻のラストでようやく正義に接触してこようとしているようだが、彼の狙いは果たして何なのか。ヴィンスがリチャードに説教する姿を見て、正義は自分とリチャードとの関係にそっくり重なることに気付いてしまった。このことが正義の行動に影を落とさねばいいのだが。


◇前巻→「宝石商リチャード氏の謎鑑定 紅宝石の女王と裏切りの海」

年始に見かけて「これはかわいい!」と思ったものの小銭がなく、両替機も故障中でできなかったとあるガチャガチャを今日回してきました。チュッパチャプスのポーチです。入れるものなんか特にないくせにまたそんなものに手を出して……という声が聞こえてきそうですがあーあーあー聞こえなーい(笑)。

20190109ガチャ

マスカット柄でした。直径約11センチと、思ったより大きめ。
ついでにもうひとつガチャってきたのが、左上にあるのはハムスターです(見ればわかる)。これはカプセル=本体となっていて、中にハムの持ち物が入っているので、いったんふたつに割って中身を出してから組み立て直すようになっています。なのでそこそこでかいです。まるっこくてかわいい……!


*ここ1週間の購入本*
縞あさと「君は春に目を醒ます3」(花とゆめコミックス/白泉社)
青崎有吾「早朝始発の殺風景」(集英社)

2018年も終わってしまいましたので、下半期のまとめに入りたいと思います。7〜12月に読んだ本で特によかった12作とひとこと感想です。なお上半期はこちらです。


◇柚木麻子「ねじまき片想い」(創元推理文庫/東京創元社)
おもちゃメーカーのデザイナーである主人公が、片想いの彼のために奮闘!しかし空回り!という短編連作集。しかし振り回されっぱなしではなく、自分の足で、自分のために歩き出すラストはとても清々しいです。


◇岩城裕明「呪いに首はありますか」(実業之日本社)
代々30歳で死ぬ呪いにかけられている主人公が、その呪いの「治療」のために幽霊を探す物語(ただ主人公に霊感はない)。タイトルの意味がわかるラストにはなんだか切なくなってしまいます。


◇小野不由美「屍鬼 全5巻」(新潮文庫/新潮社)
小野不由美のホラー大作を夏に再読。特殊な状況下に置かれた人間の心理――特に集団心理――があぶり出される終盤は、ただ恐ろしいの一言に尽きます。


◇東堂燦「ガーデン・オブ・フェアリーテイル 造園家と花を枯らす少女」(集英社オレンジ文庫/集英社)
触れた植物を枯らしてしまう呪いに蝕まれた天涯孤独の少女と、そんな彼女を見守る「許嫁」の不思議な関係を描くラブストーリー。ふたりが出会えて本当に良かったと思います。


◇嬉野君「異人街シネマの料理人4」(新書館)
祖父の遺したミニシネマを守るために女子高生が奮闘!……のはずが、気付けば世界を股にかけた復讐劇に巻き込まれることとなったシリーズ完結編。ある意味「才能」とはいえ、海千山千な兄たちを手玉にとったヒロインの強さがたまりません。


◇壁井ユカコ「2.43 清陰高校男子バレー部 春高編」(集英社)
男子バレーボール小説シリーズ、第3シーズン。弱小バレー部がついに全国大会「春高」へ!ということですが、全国の壁は高かった……。しかしこれまで以上に熱い戦いと、意外な展開にぐいぐい引き込まれます。


◇藤井太洋「ハロー・ワールド」(講談社)
少し先の未来に実現しそうな世界を舞台に、新たな技術とその「正しい」使い方を模索するエンジニアの姿を描く短編連作集。


◇尾崎世界観・千早茜「犬も食わない」(新潮社)
1組のカップルの日々を、尾崎世界観が男性側、千早茜が女性側から描く合作小説。なぜ付き合っているのか、という理由を見失いつつあるふたりが、その時になって初めてきちんと向き合うようになっていくという流れが、フィクションのはずなのにどこかリアルに感じられます。


◇佐藤究「QJKJQ」(講談社文庫/講談社)
家族全員殺人鬼という一家で起きた殺人事件。兄を殺した犯人を探すうち、意識の陥穽に嵌まり込んでしまう妹の末路が描かれていきます。「平成のドグラ・マグラ」とは言いえて妙。


◇川上稔「GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン11〈下〉」(電撃文庫/KADOKAWA)
学園戦国ファンタジーシリーズ、10年の年月をかけてついに完結!ということで。何も失わせない、完璧なラストでした。


◇森晶麿「黒猫のいない夜のディストピア」(東京創元社)
黒猫シリーズ、第2期のスタートにして第1期のエピローグといったところ。新キャラも登場し、ふたりの立場も変わっていくけれど、関係性はきっと変わらない――または良い方向に変わっていくのだろうと予感させる展開にひと安心。


◇野梨原花南「ちょー東ゥ京〜カンラン先生とクジ君〜」(eコバルト文庫/集英社)
久しぶりのちょーシリーズ新作は、タロットワーク一族のカンラン先生と、魔力を帯びない特殊体質の持ち主であるクジ君と共に様々な事件に巻き込まれるというお話。ぜひ2巻とセットで読んでほしいです。

明けてしまいました。2019年ですね。
旧年中はお世話になりました。
今年もよろしくお願いいたします。

さて、例年通り、今日は初詣&初買い物に行ってきました。
初詣ですが、今年もいつも通り9時台に某稲荷へ向かったのですが、去年よりもさらに渋滞列が長かった気がします……わりと暖かかったからでしょうか? さすが暖冬です。というか午前中はわりといい天気でよかったです。無事、干支お守りもゲットできましたし。
20190101お守り

その後、これまた例年通り、イオン倉敷へ。ちょこちょこ本買ってきました。しかし内容がSFマガジン(百合特集)、SFお仕事小説、web系少女小説、web系少女小説のコミカライズ、TLコミックというカオスさ。私の今年1年を暗示してくれているのかもしれません(笑)。

そして今年の読書1冊目について。
今年は歌集です。初谷むい「花は泡、そこにいたって会いたいよ」です。先日の東京行きの際、タイトルに惹かれて衝動買いしました。


恋愛の歌がメインで、ふたりの世界を存分に謳歌する様が描かれています。しかし「うれしい!たのしい!大好き!」的なわかりやすい明るさはおそらく表層だけであり、その中には薄氷の上を歩くような危うさが秘められているような気がします。この恋が終わった時、歌の中の「彼」または「彼女」は死んでしまうんじゃないか、と。しかし一方で、その刹那の感情を彼女たちは「知って」いるような気がしてなりません。いつか――そのいつかはもう間もなくかもしれないけれど――終わりが来ることはわかっていて、それでも会いたいんだと、そう言っているかのような。


*2019年最初の購入本*
ヒダカリョウ「アンドロイドは愛の夢をみるか?1」(ピンクシェリーコミックス/三交社)
あき「復讐を誓った白猫は竜王の膝の上で惰眠をむさぼる1」(フロースコミックス/KADOKAWA)
夏野ちより「チート少女が暴君聖王に溺愛されそうですが、今は魔法に夢中なんです!」(アイリスNEO/一迅社)
神西亜樹「東京タワー・レストラン」(新潮文庫nex/新潮社)
「SFマガジン 2019年2月号」(早川書房)

web系は相変わらずタイトルが長い(笑)!
2019年もこの感じは続くんだろうか……。


クジの父親である魔法庁長官の久知とこれからのことについて話すことになったカンラン先生(とクジ)。そこで久知長官が語り始めたのは、「古来(こき)」という災厄をもたらす存在がクジを狙っており、それを阻止するためにカンラン先生を呼んだのだという話だった。クジが古来について隠していたことに腹を立てたカンラン先生はひとりでホテルへと戻るが、そこに保志門と古来が現れ、カンランとネオンジウムのひとつを攫ってしまい……。

電子オリジナルとなるシリーズ第2弾。クジ君が外界の魔法使いを呼び寄せたかった本当の理由が明かされることに。

魔力を一切帯びていないという特異体質のため、「古来」なる存在にその身体を狙われているクジ。古来は圧倒的な災厄ともいえる存在ではあるが、クジを狙う理由は「生きている実感を得たいから」というごくシンプルなもの。それでいて、実体化したとしても気が向けば世界を滅ぼしもするし、とにかく「人間」として生きたいわけでもないという厄介な存在だったりする。隠し事をしていたクジといったんケンカはするものの、でもって一時はその古来に囚われたりするものの、カンラン先生はそれでもクジを救おうとする。それはなぜか。

前巻を読んだ時、カンラン先生の面倒見の良さはタロットワーク一族の習い性のようなものかと思っていた。しかし実際は違った――そうかもしれないけど、それだけではなかった。彼の心の奥底には今でもなお「サリタ・タロットワーク」がいて、彼を救えなかったことがカンラン先生の中では大きな後悔として横たわり続けていたのだ。

クジを助けるためにカンラン先生は「サリタ」の元へと向かう。それはカンラン先生の記憶が作り上げた虚像なのかもしれないし、けれどももしかしたら、本物の「サリタ・タロットワーク」の意識だったのかもしれない。けれどカンラン先生はその「サリタ」と向き合うことで、そしてクジはそんなカンラン先生の姿を目の当たりにすることで、解決の糸口を手にすることになるのだ。

そうしてクジが選んだ方法は、ある意味反則のような気もするが、でもクジ君らしいなと思わされるものだった。そしてカンラン先生の思い切りの良さも同じく。人生なんてろくなもんじゃない、とカンラン先生は古来に語ったけれど、そんな「人生」を思い切り謳歌しようと先生も思い始めたのかもしれない。それもまた人生、ということで。


◇前巻→「ちょー東ゥ京〜カンラン先生とクジ君〜」


ミヒルが姿を消し、メニー・メニー・シープの住人たちと《救世群》との戦いは終結したものの、彼らの住むセレスはふたご座ミュー星への航行を終えつつあった。しかしその星を統べるカルミアン――イスミスン族は他の宇宙勢力との戦争の真っただ中。地球からやってきたとされる2PA艦隊はその宇宙勢力のひとつ「エンルエンラ」と激突して勝利したものの、その戦果は決して楽観できるものでもなかった。MMS副大統領に就任したエランカ、そして《救世群》の新たな代表となったエフェーミアは、2PA艦隊副司令官としてやってきた唯一の「人間」・コルホーネンから、太陽系人類――そして地球がどうなってしまったかを聞かされることになり……。

シリーズ完結巻となる10巻の刊行がついにスタート。最終エピソードの第1弾となる今巻は「終わりの始まり」ともいうべき内容となっている。

巻頭に置かれたのは過去のエピソード――2079年、《救世群》が月へ初めて向かった時のこと。その頃も、そして今も、彼らが抱える問題は変わらない。ヒトであるはずなのにヒトとして扱われない、自分たちはいったい何者なのかということ。それはコルホーネンがこのタイミングでMMSへとやってきたその目的だったり、あるいは彼が過去に宇宙で見聞きしてきたことの中にも表れている。すべてを奪われていると感じたミヒルは、ヒトと敵対することですべてを取り戻そうとする。しかしそうしたからと言って、彼らが元に戻れるわけではない。ミヒルが崇拝する「チカヤ」――檜沢千茅は孫のダイアに「私は絶望していない」と語り掛ける。それはきっと、自分もまたヒトであるということを信じていたということなのだろう。

一方で、ラゴスやカルミアンの女王・リリーもまた、ヒトという存在の定義に近付きつつあった。ラゴスはその外側から、そしてカルミアンは自分たちの在り方から。カドムたちもまもなく、その問題にぶち当たることになるだろう。「多様性」という単語で片付けるには重いけれど、しかしその言葉で包括できるであろうこの問題は、宇宙の存亡という難事と共に大きく横たわっている。


◇前巻→「天冥の標9 ヒトであるヒトとないヒトと PART2」

2018年もあと数日となりました。そんな年の瀬ではありますが、東京と神戸に行ってきました。このタイミングで年内最後の遠足です。

まずは24日の東京行きについて。
この日は佐藤拓也さんのクリスマスイベントに行ってきました。翌日は平日ですので、当日の朝に行って夜には帰ってくる東京弾丸旅行ふたたびです(笑)。しかし今回の場所は前回と違い、虎ノ門のニッショーホールだったので、移動がわりとラクでしたね。よかった。

私が参加したのは昼の部で、ゲストは興津和幸さん。興津さんも好きなので嬉しいですね。そしてダブル眼鏡だ(笑)。クリスマスイブですのでふたりともサンタ帽を被ってました。内容はふたりのトーク(事前に募集した質問メールに沿ったり沿わなかったり)と、シチュエーション当てゲームのふたつ。その後に興津さんははけて、佐藤さんひとりでクリスマスがテーマの朗読劇が10分程度ありました。

過去にも佐藤さんのイベントに興津さんが招かれたことが何度もあるらしく、前半はふたりともノリノリでトークしたりゲームしたり。ちなみにクリスマスということでシャンメリーで乾杯していたのですが(またその開け方がひどい・笑)、おやつとして出された神戸風月堂のゴーフル(興津さんが兵庫出身だったためのチョイスだそうな)を佐藤さんが初めて食べるというところで会場全体がびっくりしてました。いたのか……ゴーフル知らない人……。

そんな感じで抱腹絶倒だった前半に対し、後半の朗読劇はとてもしっとりと落ち着いた雰囲気。あるのカップルの話だったのですが、佐藤さんこういう何気ない日常会話の演技がホントうまくてさあ……ガチで感動しました。さすがプロです。かっこいい。来年のイベントもちらほら決まってるらしいですし(全部東京だけど……)、今後のご活躍がますます楽しみです。またひとつくらいは何か行きたいなーと。

そして27日の神戸行きについて。この日はUVERworldのアリーナツアーに行ってきました。場所は神戸ワールド記念ホール。2018年のライブ納めです。とはいえ24日に休んだばかりなので(祝日は休みではない職場なので……)、この日は半休を取って午後から神戸へ。妹と一緒に現地へ向かい、着いたらすぐお昼。その後ちょっとうろうろしてからすぐにお茶。そしてライブが終わったら夕食……と、ライブ以外はなんかずっと食べてました(笑)。

今回のライブはレコ発ツアーではないので、曲も新旧取り混ぜな感じで。序盤は最近の曲が多かったのですが、中盤でかなり古い曲(EMPTY96だとか)が出てきたのはびっくり。あとTAKUYA∞が途中で歌詞を飛ばしてしまい、その理由が彰だった(直前にミスした彰と目が合ったから)というのにさらにびっくりしました(笑)。仲がよろしいようでなによりです。

あと、アリーナですので会場後方にもステージ的なものがあり、インスト曲の時にボーカルおよびドラム以外の4人がそちらで演奏するという演出は過去にも見たことがありましたが、今回はそのあとでTAKUYA∞がひとりでそちらにやってきて1曲歌うという演出も。もしかしたら今までで一番近くで見れたのかもしれません(FCに入ってないのでいつも後方の席ばかりなので……)。でも本人はあとで、イヤモニと実際の音がズレて聞こえてちょっと気持ち悪かったと言ってたので、今後はまたやらなくなるかも……?

まあそんな感じで東西イベント&遠足納めをしてきました。今年は今日を除けばあと2日。大掃除がんばります(まだやってない)。

おまけ。このタイミングで神戸に行ったらゴーフルを買うしかなかった……。
いろんな柄の缶があったので悩んだ結果コリラックマ。

20181229ゴーフル



*ここ1週間の購入本*
matoba「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。9」(ガンガンコミックス/スクウェア・エニックス)
城平京「虚構推理短編集 岩永琴子の出現」(講談社タイガ/講談社)
泉鏡花「高野聖」(角川文庫/KADOKAWA)
初谷むい「花は泡、そこにいたって会いたいよ」
オガワカオリ「全国もなかぼん」(以上、書肆侃侃房)
萩原朔太郎・しきみ「猫町」(立東舎)
野梨原花南「私家版 マルタ・サギーは探偵ですか?7 マイラブ」(自費出版物)

黒猫のいない夜のディストピア
森晶麿
早川書房
2018-12-05

博士研究員となった「付き人」は、黒猫の付き人業務からは外れることとなった。そのせいもあって、恋人同士になったものの一緒にいる時間がなかなか取れず、すれ違い気味になるふたり。そんな中、彼女の暮らす所無で都市開発の計画が持ち上がるが、その内容は現在の街の様相とはかけ離れたもので、困惑を隠せない住人たち。しかもその反対運動のさなかに、「付き人」は自分にとても良く似た女性の姿を見かけてしまい……。

黒猫シリーズ、祝・第2部スタート!ということでシリーズ7作目。

ささいな――しかし「付き人」本人は酔っていたせいで忘れている――諍いの後、期せずして離れ離れになってしまう「付き人」と黒猫。しかもよりにもよってそんな時に、「付き人」は自分の存在そのものを疑ってしまうような事件に遭遇してしまう。しかし彼女のそばに黒猫はおらず、その黒猫は謎の女性を伴って出張中。「その女、誰よ――――!」と心の中で叫んでしまったのはきっと私だけではないはず(笑)。

さておき。そんな「付き人」の抱える謎にヒントを与えたのは、黒猫ではない別の男性――その研究スタイルから「ハイエナ」と綽名される反美学研究者の灰島。「付き人」は彼の鋭い論法に振り回されながらも、事態の真相を見抜こうと孤軍奮闘することに。黒猫不在による不安に悩まされつつも、灰島の切り込むような言葉にひるむことなく立ち向かっていく「付き人」を見ていると、彼女も強くなったなあとしみじみ思わされる。

これまで共に時間を積み重ねてきたことで、ふたりともそれぞれ強くなった部分もあれば脆くなった部分もあるに違いない。特に今回、黒猫不在の中で起きたこの騒動は、「付き人」の弱さを露呈させたような気もする。けれど立場や関係など様々なものが変わっていく中で、ふたりの結びつきは変わってはいないし、これからもきっと変わることはないのだろう。例の「諍い」の真相が明らかになったラストで特に、その認識は強くなった。今後のふたりの関係にますます注目ということで。


◇前巻→「黒猫の回帰あるいは千夜航路」

今日が22日……ということは2018年もあと10日以下……嘘だろ……

という気分で生きています。いかがお過ごしでしょうか。
年末なので職場ではこれから粛々と月末業務をこなし、家では大掃除をしたり年賀状を書いたりして、穏やかに日々を過ごしていく……つもりだったんですが、実はこの年末までの間に東京行きとライブが控えてたりするんですよね。なのでまだ気分は年末感が出ないというか、そわそわしっぱなしであります。

そういえば去年の今頃も三宮で推しに最接近遭遇したりしてたので2年連続で年末感の薄い年末を送ってるんだなーとしみじみ。ていうかあれからもう1年経ったんだ……当時のことを思い出そうとするといまだにいろんな意味で悶絶しそうになります。助けて(笑)。

さておき。そんな感じなのであまり本も読めてないんですが(言い訳)、最近は「天冥の標」の最終巻が出るってんで直前の巻を読み返したり(いまさら!?)、あとはこれを読んだりしてました。「仁義なき宅配 ヤマトvs佐川vs日本郵便vsアマゾン」です。宅配業界の闇に切り込むルポ本ですね。



この筆者のすごいところは、なんといってもヤマトや佐川などでバイトとして働いて、現場の声を聞き出してくるところ。以前、週刊文春でユニクロにも同様の潜入取材をしていたのを読んだことがあるんですが、そのやる気だけでもうすごいなーと。だからこそ、経営者や上層部といった現場にいない人が語る話とは全く異なる現実が浮き彫りにされてくるわけです。あと、なぜ佐川から我が家に来るのが「佐川男子」ではなく私服&一般車のおっちゃんなのかもわかりました(笑)。

ここ何年か、残業代未払いなどで問題となっていた、宅配便ドライバーの仕事の実態が詳らかにされているのですが、「自分の子供にヤマトや佐川で働いてほしいと思うか」という問いかけにはNOとしか言えないような内容。会社の成り立ちの違いというのもあるんでしょうが、今や宅配便はなくてはならないサービスになってしまっているので、破綻させることなくちゃんとした構造に代わってほしいと願うばかりです。


*ここ1週間の購入本*
シギサワカヤ「魔法少女は死亡する」
水谷フーカ「14歳の恋9」(以上、楽園コミックス/白泉社)
羽海野チカ「3月のライオン14」(ヤングアニマルコミックス/白泉社)
野々村朔「おとなりコンプレックス3」(クロフネコミックス/リブレ)
藤崎竜「銀河英雄伝説12」(ヤングジャンプコミックス/集英社)
辻村七子「宝石商リチャード氏の謎鑑定 夏の庭と黄金の愛」(集英社オレンジ文庫/集英社)
小川一水「天冥の標10 青葉よ、豊かなれ PART1」(ハヤカワ文庫JA/早川書房)
中野京子「怖い橋の物語」(河出文庫/河出書房新社)
長嶋有「私に付け足されるもの」(徳間書店)
夏目漱石・しきみ「夢十夜」(立東舎)
堀 晃ほか「創元日本SFアンソロジー Genesis 一万年の午後」(東京創元社)

外科室 (立東舎 乙女の本棚)
泉 鏡花
立東舎
2018-12-15

好奇心も手伝って、親友である外科医・高峰に頼みこみ、彼が執刀する外科手術を見学することになった「私」。本日の患者は貴船伯爵夫人ということであったが、夫人はその時になって突然手術を拒み始める。麻酔をかけられると譫言を――心の裡に秘めていることを喋ってしまうと聞いたらしい夫人は、それを恐れるがゆえに、手術をしないか、あるいは麻酔なしで手術してほしいと要求し……。

幻想・耽美系の短編小説を、有名イラストレーターの描き下ろしイラストを伴って絵本化する「乙女の本棚」シリーズ第9弾。

夫人がどうしても口にしたくないと訴える秘めた想いとはなんだったのか、というのが焦点となる本作。実はこの作品は「上」と「下」の2部構成となっており、「上」は貴船伯爵夫人の手術の顛末、そして「下」は9年前に「私」と高峰が遭遇したある出来事について描かれている。この「下」で起きていたことがすべての始まりであり、終わりであることが示されるのだが、その物語の運び方は想像以上にドラマチックで、強く時代性を感じさせられるものでもあった。ホノジロトヲジによるイラストも秀逸だが、とりわけラストを飾る1枚(表紙イラストにも使われている)が特に叙情的で素晴らしいと思う。

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