phantasmagoria

読んだ本のこと、それ以上に買った本のこと、ときどきライブのことを書き散らかしてみたりする。


ある大学での爆発事故発生を受けて現場に向かっていた、捜査一課殺人班所属の刑事・入間祐希――イルマとその部下の宇野。だがそのさなかにオフィスビルの立てこもり事件が発生。大学の事件が殺人事件とは考えにくいとし、ふたりは立てこもり事件の方へと向かうことになる。警備員を含め数名を殺しているというこの犯人は元傭兵で、自作の特殊な武器を携行し、なおかつ立てこもっている上層階のフロア周辺に罠まで仕掛けていたのだが、イルマは単身エレベーターシャフトから該当のフロアに侵入。犯人に気付かれながらも、なんとか確保するのだった。その後、大学の爆発事故が殺人事件――被害者に爆発物が送り付けられていた――であると断定され、イルマもこの事件の捜査に加わることに。やがて第2の事件も起き、警察は送り状に書かれていた《ex》なる人物を容疑者と認定。最初の事件の際に、被害者への小包を届け、その後行方不明になっている新発田という男を《ex》であるとして捜査を始めるが、イルマは《ex》=新発田説に対し、次第に疑念を抱くように。一方その頃、立てこもり犯として逮捕されていた斉東が、拘置所で起きた食中毒騒動に便乗して逃亡したという知らせがイルマのもとに入る。実は彼は立てこもりの際、現場となったオフィスから何らかのデータを外部に流出させていたのだという。イルマは斉東の行動になんとなくひっかかりを覚え、爆発事件と何らかの関係があるのではないかと考え始めるが……。

事件に対する嗅覚と行動力から、一匹狼とも揶揄される孤高の女刑事の活躍を描くシリーズ第3弾。「小説NON」2017年3月号〜9月号で連載されていた作品の書籍化となっている。

前巻に引き続き、今回も爆弾魔が登場。とはいえ前回は海上プラントという密室状態だったのに対し、今回は都内だし、被害者の共通点は曖昧だし、敵の攻撃対象が次第に警察や一般市民といった不特定多数に広がりつつあるし、元傭兵などという物騒な人物がすぐそばで関係あるんだかないんだかよくよからない事件を起こすしで、さすがのイルマも対応が後手後手に回ってしまう。さらに《ex》の狙いや斉東の執着心、さらには警察内部からの反発なども改めて描かれ、イルマの特異性がますます浮き彫りになるという流れに。無茶しすぎの結果とも言えるが、しかしその行動や思い切りはなんとも清々しい。途中で一緒に捜査に当たっていたキャリア組の女性警官・伊野上の疑問――なぜそんなにも自信をもって行動できるのか、ということ――もむべなるかな、といったところ。

ちなみに前巻で痴話喧嘩中(?)だった部下・宇野との関係について、今巻ではなんとか修復されたのかと思いきや、イルマの独断専行に耐えかねた宇野が怒りだしてますます微妙な雰囲気に。元々人当たりがいいものの、その底を他人に見せないという性質の宇野に対し、そういった回りくどいことが苦手そうなイルマがうまく取り繕えるはずもなく――そしてそもそもふたりの関係が単なる「先輩後輩」なのか、あるいは男女の関係としての余地が含まれているのかわからないという宙ぶらりんな状況が、ふたりの関係の複雑さに拍車をかける。終盤で宇野が告げた台詞の真意、そしてそれに対するイルマの答えはどうなったのか――そのあたりもっと詳しく!と言いたくなってくるので、ぜひ続編も希望したい(笑)。


◇前巻→「捜査一課殺人班イルマ ファイアスターター」


無事ラハ・ラドマに帰国し、あとは挙式を迎えるだけ!ということになったフローレンスとイスカ。そんな中、エスカ・トロネアからはセリスが、そして正教会からは聖王アリオンがやって来ることが判明。セリスの政敵となっている第1王女リュシエラが正教会と繋がっていること、そして正教会が自らの勢力を拡大するため、ラハ・ラドマ内でセリスとアリオンのいずれか――または両方――を暗殺するのではないかと考えたフローレンスたちは、カフィエズを呼び寄せ正教会側に潜り込ませる一方、正教会の教義に凝り固まっている幼い聖王アリオンを、正教会の思惑から引き離すための策を考えることになり……。

花粉症がまたしても世界を救う!?なシリーズもこの6巻で完結。ついに主人公カップルの結婚式……と思いきや、最大の陰謀が企てられるという展開に。

自分たちの大事な結婚式が暗殺に利用されてしまう!?ということで、最後の最後まで大変な目に遭うことになってしまうフローレンスとイスカ。しかし逆にこれを防ぐことができれば今後は安泰ということで、でもって敵もいろいろと巧妙な手を使いはするものの、フローレンスとセリスの策士兄妹がそろえば怖い物なし!という感じで、いろいろありはするものの、最終的にはうまくいくという展開にはほっとひと安心。個人的にはここにきて登場したイスカの両親が気になってたりもする(笑)。ともかく、とてもいい夫婦になったおふたり、末永くお幸せに……。


◇前巻→「花冠の王国の花嫌い姫 クロサンドラの聖人」


「創世計画」の真相と「本能寺の変」の結末に動揺を隠せない武蔵勢だったが、そうしているうちに「大返し」とこれに連なる「山崎の合戦」の歴史再現を行うため、羽柴勢が接近してきていた。正純は安土の猛追を逆手に取り、これを「伊賀越え」の歴史再現にすり替えようと目論む。そこで竹中は、「伊賀越え」の一環として、史実ではそのさなかに犠牲になったとされる「穴山・信君」の死の再現をも迫ってきて……。

久々のシリーズ本編となる10-上巻は、「本能寺の変」および「創世計画」の真相が明かされたということで、まさにクライマックス直前!とも言える展開に。

トーリが明智・光秀の権限を得たこと、そして「本能寺の変」が起きてしまったことで、必然的に次に起こるのは羽柴が明智を討つ「山崎の合戦」。前半では逆に羽柴勢を明智と見立てた「伊賀越え」の再現にすり替え、とにかく逃げ切ろうとする正純の機転が描かれていくのだが、今回もよく言えば巧妙、悪く言えば屁理屈すぎて(このへんはネシンバラの微妙な入れ知恵も相当ありそうだが)、相対させられる竹中はそりゃ吐くのも仕方ないかなといった流れに(笑)。

しかし後半ではやはり「山崎の合戦」の再現は避けられず、武蔵は羽柴勢の侵入を許してしまう。あちこちで戦いが始まる中、今巻でさっそく決着がついたのが立花夫妻VS大谷&左近ペア。不死者である左近をあっさり追い詰める立花嫁の攻撃の鮮やかさもすごいが、鬼武丸と宗茂による、流派の歴史を内包した決戦もまた凄まじい。

しかし一方で、再現のためにわざわざ十本槍たちが武蔵に乗り込んでくる必要がないと気付く正純たち。ここで羽柴勢が隠していたもうひとつの「真実」が明かされるという展開には唸らされるばかり。なぜ十本槍の面々は、梅組の主だった人々に似ているのか――その理由は前作「終わりのクロニクル」における新庄の正体にも通じるものがあり、ある意味これも「歴史は繰り返す」ということなのかとしみじみ。しかしだからといって、「創世計画」の遂行を簡単に受け入れることはもちろんできない。世界の趨勢はこの「山崎の合戦」の結果に託されたと言っても過言ではない中、どのような決着がつくのだろうか。ちなみに次巻は「10-中巻」(12月刊行予定)のようなので、待ち遠しいけれどすべての決着が次巻でつくわけではないのか……ということで。


◇前巻→「GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン9〈下〉」

突然ですが「Fate/stay night [Heaven’s Feel] 」第1章を観てきました。ゲームは未プレイでアニメは「zero」「UBW」を見た&「zero」小説を読んだだけなので、今作についての情報(オチとか)は一切ない状態です。「zero」で桜が大変な目に遭っているのは知ってましたが、「UBW」ではずいぶん影が薄かったので、改めてクローズアップされてみるとなかなか難しいというかいろいろと重たい娘なんですね……。作中で桜が士郎に告げた台詞がAimerの歌う主題歌にも盛り込まれているんですが、それ聴いた瞬間に涙腺が崩壊しました。なぜだ。

しかしまあ映像の美しいこと。サーヴァント同士の戦闘シーンが楽しみで仕方なかったんですが、びっくりするぐらい本当によく動きますね……宣伝にも使われているランサー戦も期待以上の緻密さ&迫力でした。そしてストーリー展開自体も怒涛の勢いで、「これでまだ全体の3分の1なの!?」と驚いております。ここからどうなるんだろう。第2章は「2018年公開予定」とのことなので楽しみに生きていきます。

さて、つい最近も買ったばっかりなんですが、Tommy fell in love with sweets!がまた新作を出してたのでついついつられてしまいました。今回の新作はアップルパイです。あと、板チョコシリーズが復活してたので、ミントチョコを買ってしまいました。ちなみに板チョコはブローチなのですが、最近「ブローチコンバーター」という、針の部分に取りつけてバッグチャームにできる部品が販売されるようになったので、それを使う予定です。

20171014Tommy1
アップルパイがすっごいつやつやしててさあ……食べてしまいそう……!

ちなみに以前もアップルパイがあったので買ってたんです。その時とは形状が違うんですね。こんな感じで。

20171014Tommy2
左のが過去のアップルパイ。こちらは照りが抑えめですが、そのぶんパイの質感がかなりリアルです。どちらもけっこうデカい(半径7センチくらいある)んで、バッグにつけるとさぞかし目立ちそうですね。


*ここ1週間の購入本*
志村貴子「こいいじ」(KC kiss/講談社)
西炯子「たーたん2」
西炯子「初恋の世界3」(以上、フラワーコミックスα/小学館)
ジョージ朝倉「ダンス・ダンス・ダンスール7」(ビッグコミックスピリッツ/小学館)
黒乃奈々絵「PEACEMAKER鐵13」(MGコミックスビーツシリーズ/マッグガーデン)
入江亜季「北北西に曇と往け1」(ハルタコミックス/KADOKAWA)
長月遥「花冠の王国の花嫌い姫 祝福の赤薔薇」(ビーズログ文庫/KADOKAWA)
川上稔「GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン10〈上〉」(電撃文庫/KADOKAWA)
古野まほろ「警察手帳」(新潮新書/新潮社)
結城充考「エクスプロード 捜査一課殺人班イルマ」(祥伝社)
「米澤穂信と古典部」(KADOKAWA)


堕落王フェムトは「普通」になりたがっていた――それは彼が唯一持ちえないもの。それからというもの、ヘルサレムズ・ロットには毎日のように「堕落王」が現れるようになっていた。フェムト本人ではなく、なぜかフェムトの意識に乗っ取られたような状態で声を上げる人々。ただし実害はない――はずだった。しかし、電算呪術戦に長けた犯罪組織「神のくしゃみ」のアジトに踏み込もうとしていたレオたちのもとにもたらされたのは、「堕落王」化した少女がこのアジトに入り込んでいるという情報で……。

内藤泰弘の同名漫画のオリジナルノベライズ第2弾。今回は表紙はもちろん、中身も堕落王フェムトだらけというまさかの展開に。

「普通」を求め、「凡人」になりたがるフェムト。彼の考える「普通」とは一体何なのか――レオとザップ、ツェッドはライブラの任務の中で彼の奇矯な実験(?)に否応なしに巻き込まれていくことに。例えば人助けをする。ただそれだけではなく、自分でトラブルを起こし、それを自ら解決して賞賛を得る――なんというか小物感漂うこんな行為をもして見せる「普通」のフェムト。しかし「普通」であるがゆえに付け込む隙もできてしまい……ということでひと騒動起きるという展開に。なぜか自分をライブラの一員と思い込んでレオたちに付きまとうというエピソードにはつい笑ってしまうが、しかしこれがヘルサレムズ・ロットにとっていいことになるとは決して言いきれず、逆に状況が悪化してしまうというのがこのお話のいいところ(?)。事態収拾のためにレオたちが奮闘するわけだが、実は遠回りだったというのもならではといったところで、オリジナルエピソードのはずなのに自然すぎるなあ、とまたしても思わされるノベライズだった。


◇前巻→「血界戦線−オンリー・ア・ペイパームーン−」


平民から異端審問官にまで成り上がってきた青年司祭ジルベールは、黒魔術を用いて領民の娘たちを殺したとされるヴォワール辺境伯レオンを告発。権力に守られた貴族を裁く絶好のチャンスと意気込んでいたジルベールだったが、そんな彼の前に立ちはだかったのは、軍務大臣エドウィージユ侯爵のご令嬢である錬金術師・マリーだった。再調査を命じられたジルベールは、しぶしぶマリーを伴い現地へと向かうが、融通の利かないマリーはジルベールの思惑とは裏腹に、レオンが黒魔術を行使していないことを示す証拠を次々と見つけてしまい……。

それぞれ過去に訳ありな異端審問官&錬金術師のコンビが貴族の犯罪を暴き出すミステリ系ファンタジー。

レオンの罪を立証したいジルベールと、あくまでも錬金術学的見地から真実を追究したいマリー。最初は平行線なふたりだったが、ジルベールがマリーの過去を知ったことで関係は一変。貴族令嬢なのに「趣味で」錬金術に手を出し、あまつさえ人の顔が判別できないなどとうそぶき空気を読まないKY令嬢――というのがジルベールのマリーに対する印象だったが、それらにはすべて重すぎる理由が存在していたのだ。幼い頃に遭遇した凄惨な出来事のせいで、他者を認識できず、ゆえに他者との関係をうまく構築できないマリーの苦悩が、ジルベールの存在によってわずかずつではあるが和らいでいくという流れにはほっとさせられた。

事件の真相やその暴き方にはややすっきりしないところもあるが、ジルベールが思いのほかマリーを表でも裏でも守ろうと奮闘している姿がなんともいい。しかしこれで付き合っていないとは!ということで、ふたりの関係が微妙過ぎるので(お互いにかなり意識はしているみたいだけど……)、その後のふたりもぜひ見てみたい。


天の島と地の島を統べる「右記ノ國」には、禍神から国を守護する半人半竜の4柱の竜王が存在している。地上の里で海女として暮らしていた天涯孤独の少女・紗良は、その竜王の世話係――「神奴冶古」として召し上げられてしまう。簡単に命を落としてしまう過酷な任務と聞かされていた紗良だったが、竜王の世話と言っても他の式神たちがほとんどの雑事をこなしてしまい、紗良がすべき役目は龍王たちの身の回りの世話くらい。衣食住完備で他の使用人たちとは異なるその待遇に、紗良はただ首を傾げるばかり。しかも彼女を召し上げた由衣王を始めとする竜王たちはそろいもそろって人間嫌いだというが、冷酷な言動とは裏腹に、どことなく紗良の体調や心情を慮るような振る舞いを見せていて……。

新作はひょんなことから竜王の世話役となってしまった少女が波乱の運命をたどる中世和風ファンタジー。

文字通り雲の上の存在のお世話をすることになったヒロイン、ということで、これまでの作風から考えると、彼女にどんな過酷な試練が待ち受けているのか……と身構えていたのだが、少なくとも今回は紗良がそこまで痛い目に遭うことはないのでとりあえずひと安心。そんなことより(?)注目したいのは、彼女を取り巻く竜王たちの存在。言動は冷たいし思いやりのかけらもない感じなのに、内容を深読みすればするほど、彼らの発言は紗良への思いやり(ちょっと斜め上な部分もあるが)に満ちている。メンタリティの違いというのもあるだろうが、それにしても度を越した甘やかし&甘えっぷりにはついニヤニヤが止まらなくなってしまう。そんな彼らの振る舞いに、里から引き離され閉ざされていた紗良の心も次第に温かさを取り戻すという流れがとてもいい。

とはいえ、現時点で竜王たちの紗良に対する想いは「か弱いもの」に対するいわば庇護欲的な感情であり、まだ愛情ではなさそうだし、それは紗良の方でも同じなのだろう。終盤で紗良の立場が思いもよらぬ方向へと向かったことで、ここからは彼女の争奪戦が始まりそうな予感。なのでぜひとも続編希望!ということでひとつ。


朱西の出生の秘密を知った理美は、彼を守りたい一心で槌瑤竜畉Г鮗け、皇后になる決意をする。それからというもの、立后の準備に追われ、料理をする暇も与えられない理美。そんな折、和国人である理美の立后に反対する官吏たちが意見書を提出し、槌瑤鯒困泙擦襪海箸法さらに立后の儀式にあたり、講師として理美のもとにやってきたのは朱西だった。互いへの想いをむりやり封じ込めながら、表面上は講師と生徒として振る舞うふたりだったが、どうしても心のどこかで相手のことを気にしてしまう日々。そんな中、丈鉄は朱西が夜になるとたびたび姿を消していることを知らされる。その行き先は彼の亡き父の実家でもある鳳家だった。理美もまたその事実を知り、彼の真意を確かめようと試みるが……。

料理でひとの心を繋いでゆく中華風ファンタジー、急展開の5巻。

想い合うふたりが立場上それを「なかったこと」にせざるを得ないというだけでもつらいのに、さらに理美が完全に朱西の手の届かない存在――皇后になるという展開にはもうなんと声を掛けたらいいか……という感じ。しかし朱西のために槌瑤某圓そうと考える理美とは裏腹に、朱西の方にはなにか思惑がありそうで……という不穏な流れに。そのとばっちりで、朱西父の密偵として動いていた丈鉄がいろいろとピンチになり、今回は彼の存在やその過去にクローズアップしていくことに。飄々としていて、どこかつかみどころのなかった丈鉄が、どんな思いで槌瑤篌訐召叛椶靴討い燭、そしてふたりが丈鉄をどれほど信頼していたか――はからずも3人の絆が垣間見えるエピソードにはほっとさせられる。

理美を巡る宮廷内の陰謀にもになんとかカタが付き、とうとう理美も正式に皇后になってしまうのか、と思っていたら終盤でそれをひっくり返したのはやはり朱西。彼が何を思って行動していたのか、そして本当に彼の目的は言葉通りのものなのか――槌瑤詫美の心情を慮り切れていないところがあったりするので、関係性という点ではやはり朱西に軍配が上がりそうだが、しかし今回の行動が理美の気持ちにどう影響するかはまだわからない。こじれまくった三角関係はどう転ぶのだろうか。そして珠ちゃんの動向やいかに。


◇前巻→「一華後宮料理帖 第四品」


祖父である三ツ野剛太郎の来訪、そして再び閉ざされたサンルーム――あれ以来、冬基とカイの関係が前よりも悪くなっているように思えて仕方ない桃。そんな中、カイは国外での発掘作業の準備があると家に寄りつかなくなり、冬基はクーデターを起こして三ツ野グループを乗っ取ってしまう。さらに、桃の前には剛太郎が再び現れる。彼は桃の先輩を人質にとり、桃に亡き冬基の母の日記を探し出すよう要求してきて……。

シリーズ3巻は急展開。女子高生のミニシネマ再建奮闘記……ではなく、ふたりの兄の確執の原因、そして次兄・カイの動向を追うという展開に。

少しずつ歩み寄れていたような気がするのに、またしてもばらばらになりつつある3人。カイがテジェニスタンという情勢が不安定な独裁国家と関わりがあり、「月氏」の、しかも白鎖を雇ってまで探ろうとしているのはいったい何なのか――少しずつ明かされていく彼の素性や目的には不安要素しかなく、しかもそんな中で冬基までもがクーデターを繰り返して三ツ野グループを売却せしめ、カイの目的へと肉薄してゆく素振りを見せる。そんな中、修学旅行を抜け出してテジェニスタンにいるカイの元へと向かう桃の行動力には驚くばかり。いくら真礼がいるとはいえ、行く先々で他者の信頼を勝ち取り、あるいは印象を巧みに操って思い通りの結果を引き出していく桃の手腕がこれまた末恐ろしい。すべては兄たちのためとはいえ、彼女のこの振る舞いはどこまで意識的なものなのだろうか。

すべてがテジェニスタンへと集まりつつある中、しかし冬基、カイ、そして桃の目的はそれぞれ違う。冬基の言葉は基本的に信用ならないので(苦笑)、彼の祖父に対する憎悪――ひいては実母に対する感情(が実際のところどうなのかはまだ明らかになってはいないが)――を考えると、やはり何を言おうと素直には受け取れない。ひとつだけ救いがあるとすれば、それはカイが桃に対して心を開きつつある、あるいは「妹」として受け入れているであろうこと。これが彼のブレーキになってくれればいいのだけれど。


◇前巻→ 「異人街シネマの料理人2」

急にバンホーテンの500ml紙パックを飲みたくなったけどどこいっても品切れという話を先週したんですけれども、あの後スーパーやコンビニ行ったら在庫が大復活してました。しかし紙パックではなく、やっぱり430mlボトルという変わり果てた(?)姿で……。

バンホーテン2
なあ、昔のお前はどこに行っちまったんだよ……。

というわけでやっぱりリニューアルによる品切れだったんですね。しかし、なぜこのタイミングで急にココアが飲みたくなったんだろう私……虫の知らせというやつでしょーか。


*ここ1週間の購入本*
加藤和恵「青の祓魔師20」(ジャンプコミックスSQ./集英社)
秋田禎信「血界戦線−グッド・アズ・グッド・マン−」(ジャンプJブックス/集英社)
藍川竜樹「錬金術師と異端審問官はあいいれない」(コバルト文庫/集英社)
糸森環「竜宮輝夜記 時めきたるは、月の竜王」
三川みり「一華後宮料理帖 第五品」(以上、ビーンズ文庫/KADOKAWA)
福田和代「ゼロデイ 警視庁公安第五課」
内藤了「ゴールデン・ブラッド」(以上、幻冬舎文庫/幻冬舎)
嬉野君「異人街シネマの料理人3」(新書館)


霊感のあるホラー小説家・熊野惣介は、ネタ探しのために夜の山道を車で走っていた。同行しているのは怪奇小説雑誌「奇奇奇譚」編集者の善知鳥悍。その山道では、日付が変わった瞬間、車に何かぶつかるような音がするという。音に気付いた熊野が見たものは、人体を引き延ばしたような白い物体で、それが上半身をフロントガラスにびったんびったんと打ち付けている姿だった。熊野の反応からその存在を察知した善知鳥は「びったんびったん」を車から振り落としたうえに轢いてしまう。車から離れた「びったんびったん」にいやいやながらも近付き、その正体を直接聞き出そうとする熊野だったが、「びったんびったん」は電子音のような奇妙な音を発し、消えてしまうのだった。それを見て熊野はまたか、と思うのだった――ここ数週間、ネットなどで噂になっている心霊スポットをまわっていた熊野たちだったが、場所も姿も違うのに、「彼ら」はみな、最後には言葉にならない電子音のようなものを発して消えてしまっているのだ……。(「幽霊のコンテクスト」)

第24回日本ホラー小説大賞・優秀賞受賞作。霊感はあるが怖がりなホラー作家・熊野(ゆや)と、霊感はないが霊的存在には強い体質(?)の編集者・善知鳥(うとう)のコンビが「誰も見たことのないような、究極の恐怖たる作品」を作るために実際の心霊ネタを探し求めるホラー作。受賞作となった中編「幽霊のコンテクスト」に、ふたりの出会いを描く書き下ろし短編「逆さ霊の怪」の2本が収録されている。

まさか幽霊的なアレを車で轢くとは……と冒頭のエピソードから意表を突かれる本作。山道を走る車に取りつく「びったんびったん」、廃植物園に現れる巨大花の幽霊(?)とこれに集まる発光体、「胎内めぐり」の出口に現れる大きな首――これまで調査した怪異にいくつもの共通点があると気付いたふたりが、その正体を突き止めるという展開になるのだが、その真相にも驚かされる。情念の塊と言っていいこれらの霊的現象の正体がSF的というか、こちらも似たようなものではあるがまさかそうくるか、という結末がなんともいい。もちろん熊野と善知鳥のでこぼこコンビっぷりもたまらないので、ぜひ続編希望。

東京ダンジョン (PHP文芸文庫)
福田 和代
PHP研究所
2016-11-09

東都メトロで保線作業員として働く的場は、ある日の作業中、トンネル内でいるはずのない人影を目撃。それと前後して、ネット上では地下鉄の駅や線路周辺に潜伏する「地底人」の噂が流れていることを知るのだった。そんな折、実家で母親から、弟の洋次の様子がおかしいと相談を受ける的場。営業職として就職したものの、厳しいノルマ競争で体調を崩して退職していた洋次が、過激な発言で有名な経済学者・鬼童征夫のセミナーに足しげく通っているというのだ。弟を心配する的場もセミナーに参加してみたところ、その発言の過激さに驚きはしたものの、内容はしごくまっとうなものだったので、特に問題はないと判断。しかしその数日後、鬼童の勉強会に参加していた洋次が何者かに襲われて重傷を負う。しかも意識を失う直前に、洋次は的場への謝罪を口にしていたというのだ。鬼童のセミナーと何らかの関係があると考えた的場は、見舞いにやってきていた青年・朝宮に接触し、内部を探ろうと考えるが、朝宮の方もなぜか的場を勉強会に参加させようと熱心に誘ってきて……。

複雑化した東京の地下を標的とした陰謀を描くサスペンス長編。

最終的には「地下鉄がテロの標的に!?」ということで混乱が起こる中、的場がそれを食い止めるという展開になるのは予想できたのだが、そのテロを起こそうとした理由とその顛末にはなんとも驚かされる。鬼童や朝宮たちは経済学から世界を理解し、停滞かつ悪化の一途をたどる日本の状況をなんとか打破しようと考えるエリートたちだった。乱暴ではあるが、端的に言ってしまえば的場とは正反対に位置する存在。しかし的場はそんな彼らの言葉に正しく理解を示し、そして彼らもまた、的場の仕事や生き方に共感を示すのだ。

若者たちが自分たちの置かれた現状を憂い、声を上げるために暴力に訴える……というのは、先日読んだ「ハイ・アラート」にも通じるものがある。しかし本作では、テロ行為はあくまでも注目を集めるための手段であり、目的ではない。「裕福なエリート大学生たちの机上の空論」と断じることは可能だが――むしろ最初はそうとしか思えなかったが――、すべてをやり遂げた彼らの背中には、それだけで終わらせることはできない意志が秘められているようにも見えてくる。閉塞化した現代における「革命」というのは、こうしたかたちでないと実行できないものなのかもしれない。


タイムリープ、あるいはリプレイ――それは上原菜月が時折体験するようになってしまった現象につけた名前だった。ルールはふたつ――きっかけは不明だが、ある「1時間」を5回繰り返してしまうこと。そして途中の回で体験したことはすべてなかったことになり、最後の回が確定事項として扱われてしまうこと。これまでに2度体験したこの現象が菜月の身にみたび襲い掛かったのは、高校生活最後の文化祭当日だった。進路のことがきっかけで友人と気まずくなっていた菜月に声をかけてきたのは、明るく自然な立ち居振る舞いからクラスの人気者となっている天野拓未。拓未は自身が所属する軽音部のステージ発表の後で菜月を屋上に呼び出し、告白してくる。驚きながらも応えようとしたその瞬間、菜月の意識は暗転し、気付けばその1時間前、体育用具室で転んだところまで時間が巻き戻っていたのだった。久しぶりの現象に驚きながらも、その「ルール」を知っている菜月は【1回目】とはあえて違う行動をとることに。するとそのさなかに拓未が屋上から落ちて死んでしまい……。

ループする1時間の中で、クラスメイトを殺した犯人を探し続ける青春ミステリ長編。

時間遡行がテーマの話ではよく「歴史を変えてはいけない」というルールが明確に設定されていたり、あるいはルールがなくとも登場人物たちが意識的にこれを遵守しようとするが、本作では最後のターンのみが確定事項となるため、途中のターンでは何をしたってその後の時間に何の影響はない――という設定がなんとも面白い。しかし逆に言えば、ループを重ねても同じ事象が起きるとは限らないのだから、今回のような殺人事件の犯人探しには不利な設定かもしれない――なにせ今回は、毎回拓未の死に方が違ったり、あるいは拓未以外にも犠牲者が出たりするのだから。体育用具室で目を覚まして以後、菜月の周囲で起きること、そしてループが始まる前に菜月が見聞きしていたこと――例えばクラス委員の葉子の「拓未の秘密を知っている」というセリフだったり、菜月に相談を持ち掛けてきた後輩・一真の隠された性癖だったり、拓未にかかってくる謎の無言電話だったり――なにもかもが怪しいと感じられる展開には、菜月と同じく読んでいるこちらも混乱させられるし、そのまま菜月と同じ思考の陥穽に思いっきり嵌まらされてしまった。

ループを重ねるたびに、とにかく自分にできることから調べようと、半ば場当たり的ではあるがあちこちに顔を出し、なりふり構わず突っ込んだことを聞いていく菜月。元々この現象のせいで他人を信じられなくなり、当たり障りのない人付き合いしかできなくなっていた菜月が、その「他人」のためにこれほどまでに奮闘する姿には心動かされるものがある。最後の回で、どうしようもなくなった菜月が、仲たがいしていた友人たちに自分の能力を打ち明け、協力を頼むシーンは特に。事件の真相もさることながら、この現象のおかげで菜月自身が変わることができたと感じさせられるラストが爽快だった。


女性が本を読んだり学んだりといったことが認められていないバルデア国にあって、没落貴族令嬢のセシリアは「セオ」という男性名で覆面作家となったものの、なかなか売れる気配はなく、出版社からはまもなく選考が始まる文学賞を受賞しなければ契約を打ち切ると通達されてしまう。さらにそんな折、後見人兼(名目上の)夫であった王立騎士団長・ヒースを亡くしてしまったセシリア。そんな彼女に夫が残していたのは、多額の遺産と何通もの遺言状だった。セシリアが遺産をすべて受け取るためには、ヒースが遺言状で指定した人物――彼の部下であった騎士団副団長のクラウスと再婚することが条件。遺産目当てではないからと再婚をつっぱねようとするセシリアだったが、そこにかつて自分を捨てた父親が現れ、母親の病気の治療に大金が必要なのだと訴えてくる。さらにクラウスの方も、最初は結婚するつもりなどなかったが、父親が勧める縁談から逃げたいがために、そして尊敬するヒースの妻でもあったセシリアを周囲の悪評から守るため、偽装結婚を提案。利害が一致したふたりはとりあえず結婚を決めるが、そんな中、クラウスが「セオ」の大ファンであることが発覚し……。

コバルト文庫初登場となる作者の新作は、文学少女と堅物騎士の偽装結婚から始まるラブストーリー。

ヒロインとは親子ほどの年の差がある騎士団長ということもあって、落ち着きのある人格者かと思いきや、なかなかおちゃめな遺言状を複数用意していたヒース氏。そんな彼の思惑というか期待が、本来近付くはずのなかったセシリアとクラウスの運命を変えていく。最初の出会いこそ最悪だったが、共通の趣味である読書――本の感想をやりとりすることでふたりの距離は縮まっていく。特に面白いのはクラウスがセシリアの小説の大ファンであるということで(もちろんクラウスはその事実を知らない)、自信を失いかけていたセシリアが彼の言葉に励まされる姿はなんとも微笑ましい。ひとつひとつの出来事は結構派手だったりもするが、ふたりの関係は穏やかに、しかし着実に変化していくのもいい。終盤ですれ違いが起きたままクラウスが戦地へ向かうという展開にはハラハラさせられたが、それもあってふたりは自身の想いを自覚するという流れはとにかくドラマチック。きれいにまとまってはいるが、ふたりのその後もぜひ見てみたい。


交通事故で両親を亡くし、自身も大怪我を負った少女・深瀬綾乃は、伯父夫婦に引き取られて岡山で暮らしていた。不自由ない暮らしではあるが、恩のある伯父夫婦の勧め――例えば、ゆくゆくは伯父の勧める人物と結婚するというような――になんとなく息苦しさを感じるように。そんな彼女の心の支えとなっていたのが、幼い頃に洞窟で見つけた白蛇の「雨太郎」ことアロウ。今や立派な大蛇となった――さらには人間にも変身できるようになったアロウが何度となく囁く「結婚しよう」という言葉に、喜びながらも戸惑いを隠せない綾乃。そんな折、村祭りの舞手に選ばれた綾乃だったが、祭りの当日、近くのサーカスから逃げ出したアナコンダに襲われてしまう。明らかに綾乃を狙っているそのアナコンダから彼女を救ったのはアロウ、そして研究のため村にやってきていた民俗学者の大原先生だった。アナコンダを撃退した後、どさくさに紛れて村を出た綾乃は、大原先生の勧めで魔女を養成しているというディアーヌ学院へ転入することを決め……。

第2回創元ファンタジイ新人賞・優秀賞受賞作となる本作は、大蛇を婚約者とした少女が魔女修行をする中で数奇な運命を導き出すことになるボーイ・ミーツ・ガールな成長譚。

目次などに明確に描かれているわけではないが、本作は大きく3つの章に分かれている。岡山県北の村を舞台に綾乃とアロウの関係、そして旅立ちを描くイントロダクション的な内容の第1章、妖魅たちが魔女を目指して学ぶ「ディアーヌ学院」での学園生活を描く第2章、そしてひょんなことから故郷に戻った綾乃が過去へと跳ぶ第3章。本作の帯に「横溝正史×ハリー・ポッター!?」と書かれているのだが、前者は1・3章、後者は2章のことを指しているのだろう。とはいえ横溝正史的な感じは「部隊が岡山県北部の山村」「過去編が明治〜大正あたり」というくらいしかないような気もするがまあそれはさておき。

1章では、のちに綾乃が「しらたまおろち」と呼ぶようになる白蛇・アロウが登場。人間の姿にも変身し、綾乃に求婚するアロウだが、その出自は不明なまま。一方、2章からは大原先生の弟である雪之丞という少年が登場するのだが、彼は雪女と大蛇のハーフということで、黒い大蛇に変身できるのだという。最初は反発し合っていたものの、共通の趣味のせいもあってか徐々に距離を縮めてゆく綾乃と雪之丞。しかし綾乃の中にはアロウとの結婚の約束がある。なのでこの三角関係は早々に決着がつくだろうな……と思っていたところでまさかのどんでん返しが。まさに大団円!な結末がとても良かった。

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