phantasmagoria

読んだ本のこと、それ以上に買った本のこと、ときどきライブのことを書き散らかしてみたりする。

D坂の美少年 (講談社タイガ)
西尾 維新
講談社
2017-03-22

美少年探偵団副団長にして指輪学園中等部生徒会長である咲口長広ももう3年生ということで、ようやく次期生徒会長選挙が開かれるという運びに。しかし最有力候補であった現副会長・長縄女史が交通事故に遭い、選挙への出馬を断念。生徒の自主性を削ごうとする学園側に対抗するため、現政権の維持を最重要課題とする会長により、なんと眉美が立候補することに。かくして探偵団のサポートの元、眉美は会長選挙に立候補するかたわら、長縄の事故について検証することになるのだった――長縄の事故は偶然ではなく、選挙戦を妨害したい何者かの工作である可能性が高いという結論に達したがために。一方、探偵団だけでなく前会長・双頭院踊による支援があるにも関わらず、眉美の支持率は2位止まり。しかし1位をキープしている立候補者・沃野(実は眉美のクラスメイト)はどこにでもいそうな、およそ特徴らしき特徴のない平凡な男子生徒。なぜ彼がこれほどまでに支持を集めているのか、眉美には理解できず……。

ついにロリコン会長が卒業!? しかも次期会長候補は眉美!? というまさかの展開から幕を開けるシリーズ6巻。

眉美のクズっぷり(本人自覚済)は留まることを知らず、なんでこの娘が主人公かつヒロインなのだろう……とその資質に首を傾げることしばしばなこのシリーズなのだが(ってまあそこもある意味魅力のひとつなのかもしれないが・笑)、そんな眉美がまさか、学園内で最も人望やら人徳が必要そうな「生徒会長」なるポストを目指さねばならないのか――あるいはそんなことが可能なのか(笑)というところから始まる本作。しかしまあ眉美のクズっぷりを知っている面々だけに、車で轢かれてもいい人物として選ばれるのだからさもありなん(笑)。――そう、敵対陣営(?)は、候補者を車で轢いてもいいと考えるような存在というのがまた恐ろしい。

そういう手段を選ばない的な人物といえば――というかこういった局面で、裏で糸を引いていそうな人物といえば、真っ先に札槻嘘を思い浮かべてしまうのだが、今回はそうではないことも明らかに。となればいったい敵は何者で、どんな目的を持っているのか……ここにきて新たな謎が出てきたということで、今後の展開が楽しみ。


◇前巻→「パノラマ島美談」


帝京ではどんな病でもたちどころに治してしまうという「箱薬」が流行。そんな折、紺は黒い肌の少年・治太が箱薬を買い求めようとして他の客に突き飛ばされるという場面に遭遇する。両親に死なれ、盲目の老人「先生」とふたりで暮らしているというその少年は、体調の思わしくない「先生」のために薬を買おうとしていたのだった。しかし社に戻った紺が上司から見せられたのは、「箱薬」が人体に有害で依存性があるとする記事の草稿だった。時同じくして、治太が行方知れずになったという知らせが紺にもたらされ……。

男装の新米新聞記者・紺と、あらゆる箱を開き、閉じることができるという「箱娘」うららが、奇妙な事件に巻き込まれては解決してゆく連作短編シリーズ2巻。今回はサブタイトルとなっている「怪人カシオペイヤ」の正体に迫る展開となっている。

予告状で巷間の耳目を集め、標的の秘密を暴くことを旨とする「怪人カシオペイヤ」。前巻でも現れた謎の人物が、再び紺とうららの前に姿を現すことになる。そしてもうひとり、紺の前に現れたのは、前巻の事件で関わった放蕩子爵・時村燕也。原稿を受け取りに行った屋敷に居合わせた燕也と険悪なムードになる紺だったが、その後ふたりの関係は思いもよらぬ方向へと転がってゆくことに――すなわち「怪人カシオペイヤ」、そして「箱娘」が結びつける関係へと。

「悪いおとこには、きをつけてね」と、自ら屋敷を出てまで紺を助けに向かったうらら。そして箱娘の正体を追う「怪人」。今巻でそれぞれの狙い、目的、立ち位置が見えてきたようで、実はまだ何も見えていないのかもしれない。そんな不穏な霧の中、 紺はうららが自由になれる道を求めて進んでゆくことに。しかしそれが本当に「いいこと」なのか――開けてはならぬ箱なのではないかと、そんな不安も拭えない。


◇前巻→「大正箱娘 見習い記者と謎解き姫」


友人のメアリ・アンを連れてヴィクトリアの元にやってきた令嬢・アミーリア。なんでも実家が困窮していることを嗅ぎつけたミスタ・フォックスなる詐欺師から、メアリ・アンが日本のミカドの持ち物と騙られた香炉を買わされたのだという。日本通で知られる建設省の要人・ミットフォードに探りを入れ、対価として渡していたメアリ・アンの宝飾品を見事取り返したヴィクトリア。そんな折、ミスタ・フォックスと繋がりがあると目されていた「日本人村」で火災が発生。焼け跡から刃物で殺されたと思しき遺体が発見される。さらに時同じくして、シーモア邸の真ん前で怪我を負って倒れた日本人男性をローズが保護。その男性は火災発生前にローズが訪れた「日本人村」でサムライとして舞台に立っていた人物だった。目を覚ました男性は、自身が記憶喪失であること、そしてシーモア邸にやってくる前に人を殺したと語り……。

ヴィクトリア朝のロンドンを舞台に、型破りな未亡人・ヴィクトリアが奇妙な事件を解決してゆくシリーズ第3弾。今回はジャポニスムに湧くロンドンで催されている「日本人村」なるイベントを巡り、チーム・ヴィクトリアの面々が大活躍するという展開に。

詐欺師を追っていたはずのヴィクトリアたちだったが(とはいえ詐欺事件自体はあっさり解決)、気付けばふたり分の殺人事件に巻き込まれていたのだからさあ大変。しかも殺されたのはいずれも日本人。実は冒頭に日本人留学生・山内のモノローグがまるまる1章分置かれているので、彼がこの事件に何らかの関与をしているというのは想像に難くないのだが、ではどう関係しているのかというとこれがさっぱり。しかしそんな複雑な事件もチーム・ヴィクトリア(というヴィタ自らが命名したチーム名になごむ・笑)にかかれば面白いくらいに解決してゆく。相変わらずの手際の良さと先読みの確かさ、そしてチームワークがなんとも清々しい。前巻でチームに加わったローズも活躍していて何より。


◇前巻→「レディ・ヴィクトリア 新米メイド ローズの秘密」


伯母の強引な命令から自身を救ってくれた「お父さん」候補の4人に心を許し始めた一花。そんな折、橘家にジェラルドと名乗るドレス姿の美貌の人物が現れる。ジェラルドは葉介がかつて所属していたサーカス団の関係者で、勝手に退団したという葉介を迎えに来たのだという。葉介を自分の所有物のように言い張るジェラルド、そしてそんなジェラルドをかばうような態度を見せる葉介に、一花はなぜか苛立ちを隠せず……。

天涯孤独の女子高生・一花と、母の死後に現れた4人の「お父さん」候補との危険な同居生活を描くビジュアルストーリーシリーズ、第3弾。前巻の終わりに4人の不穏な裏事情が見え隠れしたということもあり、今巻はますます先の見えない展開へと転がってゆくことに。

葉介を連れ戻しに来たというジェラルド(ってこの人、見た目は美少女だけど実際は男のような気が……)の登場からスタートし、今巻では千晃、次いで蛍が次々と豹変してゆく。千晃が暴走するのはなんとなく予想が憑いてはいたが、まさか蛍まで実力行使に出るとは、と驚きを隠せない。とはいえ、蛍の出自が明かされはしたものの、その目的は依然として不明。もちろん、一花とのDNA鑑定を急がせるほどに焦っているその理由も。これに比べたら千晃の一花拉致からのデートなんてのはカワイイものというかなんというか……。そして一方で、葉介に対してもつっかかる蛍。一花に対して何も望まないということは無関心と同義、と断じる蛍の発言には一理あるような、そうでもないような……しかしこの蛍の発言のせいで、葉介も何か考え始めた様子。順番から言えば次になにかやらかすのは葉介のような気もするので(と言いつつ「順番」でやらかしてるつもりは当人たちにはないだろうが)、葉介がどんな答えを出してくるのか気になるところ。


◇前巻→「Home, Honey Home 1〜2」


幼い頃の事故で負った怪我のせいで周囲から不良との誤解を受け続け、高校を中退した直哉。ある夜、カツアゲに遭っていた青年を助けた直哉は、蒼史と名乗るその青年から傷跡のことを「オリオンがいる」という不思議な言葉で褒められるのだった。彼の経営する古びた天文館に連れていかれた直哉は、いつしか蒼史の語る星の物語に惹かれ、興味を持ち始める。そんな折、街で直哉はかつての同級生の鳴坂と再会する。テストの順位で直哉に負けていた優等生の鳴坂は、直哉に理不尽な言いがかりをつけた直後に階段から転落。自分の不注意にもかかわらず、これを直哉のせいだと言い張り、結果として直哉は高校中退に追い込まれていたのだった……。

周囲から不良というレッテルを張られ孤独をかこつ少年・直哉が、星をこよなく愛する美貌の青年・蒼史と出会い、星を通じて互いに救い救われていく物語。

直哉の置かれている境遇はそれはもう理不尽なもので、読んでいると理解のない周囲への怒りがふつふつと湧いてくるのだが、それが蒼史と出会い、星の世界と出会うことで、少しずつわだかまりが解け前向きになっていくという展開に救われる。しかし物語はそこで終わらず、今度は蒼史の境遇へとシフトしていくのだ。誰もが振り向くような美貌の青年である蒼史は、天文学の分野でも目覚ましい成果を挙げる前途有望な研究者。星が好きすぎてあれこれ欠落している部分があるのはまあ仕方ない……と思っていたら、そこには彼の過去が関係していて、という展開やその理由はやっぱり理不尽そのもの。雨の夜にのみ現れる友人「コガネ」の存在が、不安感に拍車をかけてゆく。しかしそんな蒼史を救うのは直哉の存在。人とのつながりが孤独を癒す、そんな優しい物語だった。

この冬、朝ごはんがわりに肉まん5個入りパックを買っては1日1個もちもちと食べていたのですが、今日スーパーにいくと……な、なくなってる……! もう春だからですね? そうなのね? そういえば職場の自販機からもコーンポタージュ缶がなくなってたわ……。なので代わりに(?)、岡山名物・ピーナッツ豆腐をゲットしました。こちらは朝ごはんではなく夜ごはん用ですが。以前は夏にしか置いてなかったのに、最近は結構早い時期から(というか年中?)置かれてるみたいです。相変わらずおいしゅうございました。

さて、ちょっと前の話ですが、久しぶりに上京してきました。映画「ハイ・スピード」のイベント、題して「岩鳶中学水泳部記録会お疲れ様パーティー」追加公演のためです。場所は2年前の「Free!ES」イベントと同じく、今回も両国国技館。しかし今回はすごい。なんと1階桝席だったんです。しかも結構前の方。だからモニターを観なくてもキャストさんたちの表情がわかる。これで私は今年のくじ運を使い果たしたに違いない。

内容としては「Free!ES」イベントの時とほぼ同じで、キャスト(もちろん遙・真琴・旭・郁弥・夏也・尚の中の人6人)が選んだ名場面振り返り、キャストたちによるミニゲーム的な出し物、オリジナルの朗読劇。合間にビデオメッセージ(貴澄と凛の中の人)。そして今回もラストに大発表。「ハイ・スピード」の内容(特に旭と郁弥の存在)を盛り込み、かつ新規カットを加えてのTV版「Free!」総集編が4月と7月に公開! さらにTV版のその後を短編形式で描く新作映画が今秋公開!会場はマネージャーたち(=もちろん観客)の歓喜の叫びに包まれたのでした。もちろん私もうめいた。びっくりして。俺たちの夏はまだ終わらないらしいですよ……!

ハイスピパンフ (2)

今回もパンフ買ったった……開場時間になって買いに行ったのでまったく待たずに済みました。あと最後に銀(青)テープ飛んできましたのでそれも。「See you next the movie…Free!-Timeless Medley-」と書かれてます。本当に映画化なのね……!

でまあ今回も空き時間は本屋とかうろふら。とはいえ今回の状況は日・月で、しかも月曜は祝日だったので新刊が出る日でもないので、そんなに買う本もないだろう……とか思ってたけどついつい。あと今回はいろいろあって(特に費用的な問題で)、飛行機で上京してみました。飛行機に乗るのは高校の修学旅行以来だからゆうに10年以上は経過してるし、そもそもひとりで飛行機に乗るのは人生初でしたので多少まごまごしましたが、まあなんとか乗れました。ええそれはいいんです。問題は飛行機酔いです。特に羽田着陸前、高度を下げていく間が一番ヤバかった……あんなに吐き気を催したのは、不眠症で数時間しか寝てない状態で曲がりくねった山道を車に乗せられて走ったとき以来ですかね……懐かしい思い出です(違)。しかし帰りは大丈夫だったんですよね……もう慣れたのか私(笑)。


*ここ1週間の購入本*
matoba「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。4」(ガンガンコミックス/スクウェア・エニックス)
あらゐけいいち「CITY 1」
石川雅之「惑わない星2」(以上、モーニングKC/講談社)
瀧波ユカリ「あさはかな夢みし3」(アフタヌーンKC/講談社)
潮文音・雲屋ゆきお「Home,Honey Home 3」(シルフコミックス/KADOKAWA)
山本亜季「ヒューマニタス」(ビッグコミックススペリオール/小学館)
長谷敏司「ストライクフォール2」(ガガガ文庫/小学館)
野崎まど「なにかのご縁2 ゆかりくん、碧い瞳と縁を追う」(メディアークス文庫/KADOKAWA)
椎名蓮月「あやかし双子のお医者さん一 ばけねこと鈴の記憶」(富士見L文庫/KADOKAWA)
風森章羽「夜の瞳 霊媒探偵アーネスト」
紅玉いづき「大正箱娘 怪人カシオペイヤ」
篠田真由美「レディ・ヴィクトリア ロンドン日本人村事件」
西尾維新「D坂の美少年」(以上、講談社タイガ/講談社)
織守きょうや「霊感検定」(講談社文庫/講談社)
江波光則「屈折する星屑」
福田和代「プロメテウス・トラップ」(以上、ハヤカワ文庫JA/早川書房)
新井素子「そして、星へ行く船 星へ行く船シリーズ5」(出版芸術社)
三雲岳斗「密偵手嶋眞十郎 幻視ロマネスク」(双葉社)


店長が突然、店でサイン会を開くと言い出した。呼ぶのは人気の若手ミステリ作家・影平紀真だという。これまでサイン会などのイベントを開いたことがないうえ、呼ぶのは人気作家ということで戸惑う杏子だが、この話には裏があったのだった――この話を持ち込んだのは取次の担当者・藤永。実は影平がネット上で親しくしているファンが、影平の作品をもとにした暗号を提示し、サイン会で自分の正体を見抜いてほしいと連絡してきたのだという。しかし自力でその正体を暴けなかった影平は、謎を解いてくれる書店でサイン会を行いたいと言いだしたのだ。知人の伝手でその話を聞いた藤永が成風堂の店長に伝えたところ、多絵の存在を当てにした店長が乗り気になったということらしい。驚きあきれつつ、影平から預かった暗号を多絵に渡す杏子。するとさっそく多絵は暗号を解き明かしてみせたのだが、その顔色はどうもさえなくて……。(「サイン会はいかが?」)

書店で起きる謎をバイト店員が解き明かす、書店限定のミステリシリーズ第3弾。今回は短編集形式に戻り、おなじみ駅ビル内の成風堂書店で起きた大小様々な謎を杏子と多絵が解いていくという展開に。

表題作の「サイン会はいかが?」では、成風堂書店で初のサイン会が開かれるという展開に。テナントも巻き込む初めての大イベントに右往左往する杏子と、その裏側で作家のファンの正体探しという謎解きに勤しむ多絵。とはいえ多絵の謎解きパートについては、作家の著書を読み込まないとできないことなのでさして紙幅を割かれておらず、解決パートが来るまでは、基本的にイベントを開くにあたりどんなことをしているか、という書店業務の裏側が覗ける流れになっているのが本シリーズらしい展開といえる。ひとくちにサイン会と言っても、成風堂の場合、店内のみでできるわけではないので、テナントや周辺店舗との打ち合わせがもちろん必要。そして会を開くにあたり、整理券の準備、列形成の手順、かかる時間、写真撮影をどうするか……などなど、段取りは大小さまざま。地方住みなのでサイン会の光景を目にすることはめったにないが、大変なことだというのがよくわかるエピソードだった。

もうひとつ、今巻収録のエピソードで印象深かったのは、「君と語る永遠」という短編。社会科見学にやってきた小学生の少年・広希だが、学校では本屋に見学に行くことをなぜか嫌がっていたという。しかし見学後、しばしばひとりでやってきては、杏子たち店員に妙な質問を繰り返すように。おりしもその頃、市内で小学生から中学生くらいの男の子が、小さな女の子を連れ去って空き家などに閉じ込めるという不審な事件が多発。やがて広希がクラスでその犯人と疑われ、姿を消したという知らせが入って来て……という内容。ここで杏子と同じく不思議に思うのは、本屋見学に対して不満を持っていたはずの広希が、なぜ本屋にしばしば姿を見せるようになったのか。見学したことで好きになったというわけではなさそうなので(見学の日と、それ以後の来店時の態度に変わった点がないので)、ではなぜなのか……というのが、このタイトルに繋がってくるのだ。広辞苑を片手で持とうとしてできなかった、というエピソードにはぐっとくるものがある。いつか彼が自分で広辞苑を買い、片手で持てるようになる日が来るのが待ち遠しいと思った。


◇前巻→「晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ(出張編)」


駅ビルの書店「成風堂書店」で働く杏子のもとに、元同僚の美保から手紙が届いた。なんと彼女が現在勤めている地方の書店「まるう堂」に幽霊が出たのだという。店主や他の従業員、そして美保自身も目撃してしまったため、その謎を京子と多絵に解き明かしてほしいというのだ。あまり乗り気ではなかった杏子だが、その話を聞いた多絵は俄然やる気を出し、結局は美保の思惑通りまるう堂へと出向くハメになってしまうのだった。実はまるう堂のある久住市には、嘉多山成治というかつての人気作家が住んでいたのだが、彼は何十年も前に自宅で殺されていたのだという。犯人として逮捕されたのは、嘉多山の屋敷に書生として住んでいた青年・小松だった。しかし小松は逮捕から2年後に獄中で病死。昨今まるう堂に出ているのは、その小松の幽霊だと噂されていて……。

シリーズ第2弾は長編。「出張編」と題し、杏子と多絵が地方の老舗書店で起きた幽霊騒ぎ、そして何十年も前に起きた殺人事件を3泊4日でスピード解決してしまうというまさかの展開に。

「本屋に何時間でも滞在することができる」「本屋の棚作りを眺めるのが楽しい」といった「本屋あるある」は健在な本作。特に今回は地方の個人経営の書店が舞台ということで、冒頭のまるう書店の描写にはなかなか興味をそそられるものがある。そんな中、杏子と多絵は美保の手引きで、いつの間にか昔の殺人事件について調べるはめに。もちろん多絵の斜め上すぎる洞察力はすさまじく、幽霊騒ぎの話だったはずが、何十年も前の殺人事件の真相を暴くことになるという展開には驚かされた。あと不器用すぎて絵も下手という多絵のエピソードにも(笑)。


◇前巻→「配達あかずきん 成風堂書店事件メモ」


駅ビルの6階に入っている「成風堂書店」。その正社員である杏子のもとに、配達に出ていたバイトの博美が駅の階段から落ちたという電話がかかってくる。翌日、足首をひねり休んだ博美を心配しつつ、その日の配達の準備をしていた杏子の前に、配達先のひとつである「バーバー・K」のオーナーが現れる。実は先日、「ノエル」という美容院で妙な騒動が起きていた――とある女性客に出された雑誌の最新号に、「ブタはブタ」と書かれたその女性の写真が挟まれていたのだ。もちろん女性は怒り狂ったが犯人は見つからず、怒りの収まらない女性は周囲にノエルの悪評を言いふらしているのだという。ノエルのオーナーと親しいというKのオーナーは、くだんの雑誌を配達したのが成風堂であることを知り、準備中や配達中に写真の混入が起きる可能性について聞きに来たのだった。すると、博美の代わりに配達に行ったバイトの多絵が、配達中に何者かが博美を呼び止め、言葉巧みにノエルへの荷物を開けさせて、その際に混ぜ込んだのでは、と推測。さらに杏子が多絵と共に調べを進めるうちに、博美が階段から落ちたのは、近くにいた男に突き飛ばされたからだという証言が出てきて……。(「配達あかずきん」)

本の知識が豊富なしっかり者の書店員・杏子と、洞察力に優れたバイト店員・多絵が、本にまつわる様々な事件を解き明かしていくライトミステリシリーズ第1巻。

駅に隣接したファッションビルの中にある書店――ということなので、幅広い品揃えが望める大きな書店ではないのだろうな、というのが第一印象だったりするがそれはさておき(書店にしばしば寄る身としてはここは重要・笑)。そんな店内で杏子や多絵たち店員は、日々の業務に追われながら、客からの奇妙な依頼を解き明かしてゆくことに。雑誌配達にまつわる表題作をはじめとして、暗号めいたメモから何の本を指しているのか当ててみせたり、漫画「あさきゆめみし」を見たのをきっかけに姿を消した女性の行き先を調べてみたり、成風堂で勧められたという本からその勧め主を探してみたり、人気漫画の陳列ディスプレイを汚損した犯人を捜してみたり。はからずもこれらの謎解きに乗り出すはめになる杏子同様、読んでいるこちらもさっぱりお手上げな内容ばかりなのだが、これをさらっと解決してしまうのがバイトの多絵。仕事面ではちょっとおっちょこちょいな部分もある多絵だが、こういう謎については驚くほどに鋭い視点でその真相を暴き、杏子たちをうならせるという一面も。その鮮やかな推理ぶりにはもはや感嘆の声しか出てこなかった。


ついに想いを通わせ合った香乃と雪弥。「異性と付き合う」ということがよくわからず戸惑いながらも、雪弥が店に戻ってきてくれた喜びを噛み締める香乃なのだった。そんな折、店に祖母・三春を訪ねる老婦人が現れる。三春の女学生時代の友人だという桜子から、病の香りを感じ取る香乃。顔を合わせれば口喧嘩を繰り返すような仲の三春と桜子だったが、まもなく入院が決まっているという桜子から、後日、茶事の誘いが届くのだった。三春と共に招かれた香乃と雪弥は、桜子が可愛がっているという親戚の花野とも出会う。しかしその席で、仕事に行き詰っているという花野が桜子の茶道教室でも継ごうかな、とつぶやいたところ、桜子は激怒。その翌日、桜子が姿を消したと花野から連絡が入り……。

他人の感情を匂いで感じ取れる少女と、過去にいろいろと問題を抱えている青年が惹かれ合い、周囲の人々を救う中でゆっくりと距離を縮めてゆくハートフルラブストーリー、シリーズ完結巻。

両想いになったのになぜか「恋人」という気配が希薄というか、とりあえずどうしたらいいのかよからない状態な香乃。まさかそこからか!と驚きつつ、こちらの気分も祖母の三春さんと同じく見守るモードに入ってしまうのはまた仕方ないとして(笑)。微笑ましすぎるふたりの関係とは裏腹に、ふたりの周囲ではまたしても様々な事件が起きることに。

仕事に悩む女性と大叔母の想い、香乃の親友・チヨちゃんの祖父の仏像が消えた理由、突然届いた雛人形の謎、そして外国人留学生の女性が源氏香図で書いた手紙の真意……どれもこれも相変わらず不思議な出来事ばかりだが、それを引き起こしたのはいずれも、誰かが誰かを想ってのこと。そんな彼ら彼女らの想いをふたりが繋いでゆく中で大きく進展したのが、雪弥の父親問題だった。

実の父親である各務氏について雪弥が調べたことを聞き、当時なにがあったのか想像する香乃に対し、雪弥は「きれいな話にしてくれようとしなくてもいいんです」と告げる。それは香乃への遠慮ではなく、かつて彼自身も考えたことなのかもしれない。そしてそれとは相反する現実、あるいは周囲の声によって、手放さざるを得なかったのかもしれない仮定。しかし、そうして今まで否定し、目を逸らそうとしてきたことに向き合ったからこそ、見えてきたものがある。そうなれたのは、香乃がいたからこそ。かつて香乃が雪弥に救われたように、雪弥もまた、香乃に救われたのだ。そうしてふたり寄り添って、ゆっくりと歩く――そんなイメージがぴったりなふたりの将来はきっと素敵なものだろうと、ただ祝福したい気持ちでいっぱいになるラストシーンがとても素晴らしかった。


◇前巻→「鎌倉香房メモリーズ4」


帝国による侵攻を見事退けたイスカとフローレンスだったが、なぜかふたりともラハ・ラドマへの帰還が許されず、騎士団領に留め置かれていた。帰還後に行うはずの結婚のお披露目を楽しみにしていたふたりに対し、和平交渉にあたっていたセリスが告げたのは、ふたりの婚約破棄、およびフローレンスの帝国への輿入れだった。和睦の条件ということで拒否することができないフローレンスは、1年の間に皇帝と離縁するとイスカに誓って旅立つのだった。フローレンスの言葉を信じるものの、しかしただ待つこともできないイスカは、アルフルードを伴って帝国へ潜入。どうにかして皇帝と直接対話を試みようと考えるが……。

シリーズ4巻、前巻で恐れていた事態がのっけから実際のものとなるという衝撃的な展開に。

セリスから一方的な婚約破棄および帝国皇帝との結婚を命じられたフローレンス。王族に課せられた義務であるそれを拒むことはできない、しかしイスカと思いを通じ合わせた今となっては受け入れられない――そんな相反する思いに苦しみながらも、表面上は迷うことなく前者を受け入れてみせるフローレンスの王族としての振る舞いがなんともつらい。しかし一方で、国益に反しない範囲で自分の願いを通したいと画策を始める、その強い心には素晴らしい!の一言。あるいはこれもセリスの教育の賜物なのかもしれない。

帝国に入り、さっそく後宮で情報収集に乗り出すフローレンスに呼応するように、イスカもまた帝国に潜入し、カフィエズを頼りに行動を開始することに(とはいえ、彼を頼みの綱と言っていいのか、あるいは泥縄なのか、いまいち測りかねる相手ではあるが)。合理的かつ戦略的に物事を見据え動いていくフローレンスと、理知的な思考を有してはいるが、基本的には人の情を信じ、これを根幹に据えた行動をとるイスカ。同じ目的に向かって動いていても、そのアプローチは似て非なるものではあるが、一方でお互いの足りない部分を補い合っているのがよくわかる。離れていてもいいカップルだとしみじみ感じさせられたエピソードだった。


◇前巻→「花冠の王国の花嫌い姫 騎士と掲げるグラジオラス」


横浜の老舗百貨店に勤めている服部美苑は、なぜか最近やたらと眠気に襲われるように。さらに時を同じくして、来店する客たちの中に怪しげな影を見かけるようになりつつあった。そんな彼女に突然下った辞令は、銀座本店の「特別外商部」への異動だった。美形だが毒舌な先輩・泰原や、存在感の薄い上司、そしてこの百貨店の守り神だというタケハル様に迎えられた美苑が相手をするのは、客は客でも神さまやあやかしといった人ならざるモノばかり。もちろん美苑に最近備わった「人ならざるモノが見える」という能力による辞令ではあるのだが、その能力と眠気は何らかの呪いによるものということがわかり……。

百貨店外商部を舞台に、主人公たち(人間)が買い物を通じて、神さまたちの悩みを解決してゆくハートフルストーリー。

いつの間にか何者かに呪われている!?というショッキングな身の上の主人公・美苑。しかしデパートガールとしてのやる気はもちろんあり、それは相手が人ではなくとも関係なし。猫神父娘の喧嘩を仲裁したり、想い人を探す水妖の浴衣選びを手伝ったりするうち、ひょんなことから自身に呪いをかけた黒幕に遭遇する美苑。そんなこんなで美苑は呪いを解いてもらうため、相手が必要とする商品を探し求めるという展開に。しかし目的が何であれ、お客様のほしいものを探すには、相手の心に寄り添うことが必要――それはたとえ自分を呪った相手であっても同じでなければならないのだ。戸惑いながらも外商員として奮闘する主人公の姿がなんとも眩しく映る。ついでに言うと、口は悪いが面倒見のいい先輩・泰原もなかなかステキなキャラクターなので、もし続編があればふたりの関係にも期待したい。

先週の日曜の話で恐縮ですが、QUARTET NIGHTのライブビューイングを観に行ってきました。アイドルのライブを観るのも、ライブビューイングを観るのも、どっちも初体験でございます。とても素晴らしいライブでしたが、まあ一言で表すと「カルナイって実在したんだ……!」です(笑)。えっあの人たち二次元じゃなかったっけ!? 違うの!?

……などと動揺していたその数日後、シュノーケルの新譜「popcorn labyrinth」がリリースされました。普段はタワレコ派なのですが、店舗特典がタワレコだとDVD、HMVだとCDで、個人的にあんまりDVDって見ないので今回はHMVにしてみました。通販にしたらちゃんと発売日に届いてひと安心です。

popcorn labyrinth
シュノーケル
TURTLE RECORDS
2017-03-15


で、アルバム。1曲目の「シュレーディンガーの僕」が、イントロなしでいきなり勢いよく歌い出すという曲で、これだけですっかり掴まれてしまいました。インスト含めて全12曲、最後までトップスピードで駆け抜けていきます。前作の「EYE」の時も思ったんですけど、活動休止というブランクを挟んでいたにもかかわらず、いい意味でホント彼らは変わってない。というかブレてない。シュノーケルの「芯」あるいは「軸」のようなものは、11年前に初めて彼らの楽曲を聴いて感じたものとまったく同じだと改めて思いました。でもちゃんとバンドとしては進化してる。

ちなみにHMVでの特典は「『popcorn labyrinth』全曲西村弾き語り+KABAラップ+山田雅人の唄ってみたCD-R」。実は本編CDよりも収録時間が長いんです。タイトル通り、本当に全曲弾き語りが収録されてます。それとベーシスト・香葉村くんによるKABAラップと、ドラマー・山田くんが歌う「シュレーディンガーの僕」と、ついでに謎のおまけがひとつ(笑)。なにこの内容豪華すぎじゃないですか……お金払ってでもほしいやつですよこれ……!と慄いております。来る東名阪ツアーが今から楽しみです(行くぜ大阪!)。


*ここ1週間の購入本*
コトヤマ「だがしかし7」(少年サンデーコミックス/小学館)
海野つなみ「逃げるは恥だが役に立つ9」(KC kiss/講談社)
長月遥「花冠の王国の花嫌い姫 縁を結ぶゼラニウム」(ビーズログ文庫/KADOKAWA)
佐々原史緒「神さまの百貨店 たそがれ外商部が御用承ります。」(富士見L文庫/KADOKAWA)
野崎まど「舞面真面とお面の女」
野崎まど「死なない生徒殺人事件〜識別組子とさまよえる不死〜」
野崎まど「小説家の作り方」
野崎まど「2」(以上、メディアワークス文庫/KADOKAWA)
阿部暁子「鎌倉香房メモリーズ5」
相川真「君と星の話をしよう 降織天文館とオリオン座の少年」(以上、集英社オレンジ文庫/集英社)
皆川博子「みだら英泉」(河出文庫/河出書房新社)
笙野頼子「猫道 単身転々小説集」(講談社文芸文庫/講談社)

突然ですが野崎まどブーム始まりました。


吹奏楽部を辞めたものの、ジャズに興味を持ちしばしば上京していることが母親にバレてしまった典子。逆上した母親にサックスを壊されショックを受ける典子だったが、やがて気を取り直して再び上京。尾之上という楽器修理を請け負う人物と知り合い、見事修理してもらうのだが、そのやり取りの中で典子のサックスの下の持ち主が「トモキ」という人物であることが判明するのだった。そんな折、メンバーを募集していた大学生のジャズバンドに参加しようと考えた典子。しかしそこで遭遇したのは、以前ジャズバーのセッションで出会ったサックス奏者の水之江由加里だった。由加里も典子と同じくメンバー募集の貼り紙を見て応募してきたというのだが、オーディションの結果、ふたりとも採用されることに。プロを目指しているという由加里の技術には到底及ばない典子だったが、そのプレイスタイルの違いや将来性を買われてのことだった。しかし典子をライバル視する由加里には見下され、メンバーに勧められてジャズの理論を学んだものの、今度は「面白味がなくなった」と酷評され……。

アルトサックス奏者の女子高生・典子が、両親の過去にまつわる因縁に巻き込まれながらも、ジャズに魅入られ成長していく青春音楽小説、完結編。

いよいよ本格的にジャズへの道に進むことになる典子。試行錯誤しては何度も壁にぶつかり、悩みながらも「ジャズ」について自分なりの答えを見出そうとする展開はまさに青春小説そのもの。まさにタイトル通り、典子は「風」から「嵐」へと変貌を遂げてゆくのだ。

しかしそんな彼女に忍び寄る影――典子のサックスの元の持ち主であるプレイヤー「トモキ」の存在。父親の死の真相と、母親の常軌を逸した過保護ぶりの理由。そしてチコの正体。ジャズの世界へ向かってゆく中で、いくつもの真相が明らかになってゆくのだが、それすらも典子の糧になってゆく。ちょっとうまくいきすぎなきらいもあるが、それでも一途に音楽の道を突き進んでゆく典子の姿が清々しかった。


◇前巻→「ウィンディ・ガール サキソフォンに棲む狐1」



新宿で父親が事故死して以来、以前にも増して過保護になった母親の反対を押し切り、高校の吹奏楽部でアルトサックス奏者となった永見典子。理不尽なほどに厳しい顧問・ボンパのしごきに耐えつつも、次のコンクールに向けた部内オーディションに向けて練習に励んでいた典子だったが、そのさなか、クラリネット担当の祥子が大怪我を負ってしまう。実は先日の帰宅途中、祥子が「烏塚」と呼ばれる石碑を壊していたことから、怪我はカラスの呪いだという噂が流れる部内。典子が所有する質流れ品のサックスに棲む「管狐」のチコは、状況証拠から真犯人を導き出して典子に伝え……。

吹奏楽部でアルトサックスを担当する女子高生が、自らの楽器に棲む「管狐」なる存在と共に、周囲で起きた奇妙な事件を解決しつつ、やがて音楽の道にのめりこんでゆくライトミステリ的青春音楽小説、第1弾。

部内やその周辺で起きた奇妙な「日常の謎」をサックスに潜む「管狐」ことチコがあっさり解き明かしてゆくライトミステリパート、そしてサックスという楽器とその可能性に目覚め、やがてジャズに興味を持ち始める主人公の姿を描く青春音楽小説パートが並行して進んでゆくのが本作。そこに事故死した父と過保護すぎる母による永見家の過去も絡んできて、とにかく息をつかせぬというような展開が次々と畳みかけてくる。

偶然聞いた有名プレイヤーの演奏によってジャズに目覚めた典子が、少しでもその世界に近づこうと初めてのバイトを始め、ジャズの曲を聴きこんだりプロに師事したりなど、いろいろと試行錯誤してゆくという展開がやはり中心となるのだが、新しい世界への好奇心に加え、過保護すぎる母親への反発心をもバネにしてがむしゃらに突き進んでゆく典子の姿には「若いなあ〜」と何度もしみじみとさせられる。若さゆえの無謀さと言ってしまえばそれだけかもしれないが、しかし本当に好きなものに向かって邁進してゆく典子はとても眩しく、そして少しうらやましくも感じられる。ここまで好きになれるものがあるなんて、と。

一方で、物語は永見家の家庭の事情へとシフトしていきそうな流れも見える。典子が幼い頃、なぜ夜逃げをするように今の町に引っ越してきたのか。それから後に、なぜ父親は遠く離れた新宿で泥酔した状態で死んでいたのか。カスタムメイド品だという典子のサックスと、そこに棲むチコ(推理力もすごいが、それ以上にやたらジャズに詳しいところも怪しい)の正体も含め、謎は深まるばかり。


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