phantasmagoria

読んだ本のこと、それ以上に買った本のこと、ときどきライブのことを書き散らかしてみたりする。

久しぶりにgramのそばを通ったので、パンケーキを食べてきました。大変ふわっふわでした。最高……!

20190420パンケーキ

さておき。パンケーキを食べたのはたまたまで、この時の本来の目的は某大型書店に行くことでした。ちなみにラノベの新刊コーナーがどうしても見つからず、店員さんにお願いして探してもらったら、そもそもそんなコーナーはその書店にはなく、求めていた新刊もバックヤードにあったという謎展開だったんですがまあさておき(苦笑)。

この4月から、岡山では(というか西日本では)本の発売が首都圏より2日以上遅れることになりました。岡山の場合、今までは1日遅れだったのですが、もう1日プラスされたわけです。物流の問題だそうですが、やっぱり悲しいですね。それにそのせいで、いつ行けば確実に書店に並んでるのか、ますます見当がつきづらくなりました。今まででもマイナーな出版社の本や新人さんの本(どちらかといえば文庫より単行本)だと、公式発売日より2日ほど遅れることもあったので。すぐ読むわけではないので発売日に買う必要もないっちゃないんですが、オタクの性でどうしても早く手に入れたいという心理になってしまうんですよね(笑)。あと人気作以外は入荷数が少ないので売り切れもこわいし。

なんなら予約しとけばいいじゃないのという意見もあるとは思いますが、どうも予約って苦手なんですよね……以前、ちゃんと事前に予約したのに「なんですかそれ」みたいな対応をされたことがあったのでトラウマというかなんというか……結局1日経って店が誤りに気付いたようですが、謝罪どころか報告もなく、しれっと入荷連絡してきたりとかね……。それに予約したら、絶対にその書店に行かなければならないですしね。自宅と、職場と、よく利用する書店が全てバラバラの位置にあるので、取りに行くのが平日か週末(休みの日)かで、行ける書店も限られてくるんですよね。大きな書店がたくさんある都会がうらやましいったら。

物流危機に加え、(これはもう大昔から言われてますが)本を読まない人がさらに増えている(今は電子書籍もあるし)ため、本の流通にリソースやコストを掛けられないということなんでしょうけどね……かといってネット書店を使えば、地元の本屋はますます衰退するだろうし……悩ましいところです。


*ここ1週間の購入本*
九井諒子「ダンジョン飯7」(ハルタコミックス/KADOKAWA)
片瀬茶柴「虚構推理10」(KC月マガ/講談社)
草野原々「これは学園ラブコメです。」(ガガガ文庫/小学館)
草野原々「大進化どうぶつデスゲーム」
三方行成「流れよわが涙、と孔明は言った」
柴田勝家「ヒト夜の永い夢」(以上、ハヤカワ文庫JA/早川書房)
幾原邦彦・内海照子「さらざんまい(上)」(幻冬舎)


講義を行うチャイルドマンの顔には、どう見ても髭のようなものが描かれていた。講義後にようやく気付いたチャイルドマンは、生徒たちに向かって「我々は伝説と戦わねばならなくなった」と宣言し、彼らを3つのチームに分けたのだった。すなわち「年長大味組」のアザリーとレティシャとフォルテ、「なに考えてるか本人たちにも分からないーズ」のコルゴンとコミクロン、そしてキリランシェロとハーティアにチャイルドマンも加えた「余り物子守チーム」に。そんな彼らが対峙することになったのは、かつてチャイルドマンが仕留め損なったというヴァンパイアの末裔、ブラディ・バース・リンなる人物。半信半疑で偵察に向かった「年長大味組」の3人は、さっそく3階の窓の外から逆さ吊りの状態で笑う女と遭遇し……。(「往時編 怪人、再び」)

同名シリーズの番外編として刊行されていた「無謀編」シリーズにおいて、書き下ろしエピソードとして収録されていた過去編をまとめた「プレ編」第2弾。今回もわりと本編の根幹というか、チャイルドマンの正体に迫る内容も多めに含まれていたりする。

まあチャイルドマン教室の面々は相変わらずにもほどがある感じだが、この2巻に収録されたエピソードの中には、キリランシェロとアザリー以外のメンバーがメインになるものも。自分が無愛想であることに気付いた(なぜ今更……)コルゴンが、ティッシの勧め(?)に従い街へ繰り出してみたり、フォルテとコルゴンがチャイルドマンたちと共に天人遺跡の調査に向かったり、迷子のマジクの前にコミクロンが現れてみたり。アザリーたちの日頃の行いがひどすぎてあまり目立たないが、フォルテやコルゴンもたいがいアレな性格の持ち主なので、メインに据えられればそれはそれで面白いことになるのがなんとも。これで今のところ発表されている《牙の塔》時代の短編はすべてなのだろうが、また機会があれば書いてほしいなと思う。


◇前巻→ 「魔術士オーフェンはぐれ旅 プレ編1」


化け狸たちが人間社会に隠れて生きていくために作った任侠団体「愛宕組」、その組長の娘である椿(もちろん彼女も狸)とのお付き合いを継続するため、愛宕組に入ることになってしまった化け猫の千歳。椿の父親である組長になにかと仕事を命じられ、お目付け役の諏訪と共にしぶしぶ働く中で、なんとなく椿に対してこれまでのような想いを抱けなくなっていることに気付いた千歳は、少しずつ彼女と距離を置くように。そんななか、千歳は諏訪がストリートミュージシャン・多摩子の歌を聴いているところを目撃する。本人は仕事だと言い張るが、以前に多摩子が喧嘩に巻き込まれそうになったところを助けたということもあり、多摩子の方は諏訪に気がある素振りを見せていた。そこで千歳は諏訪と多摩子の仲を取り持とうとするが……。

化け猫の千歳が、化け狸の任侠集団に混じり「人」として社会に溶け込もうとする中で、自分の進むべき道について再び悩み始めるシリーズ第2弾。

「千歳と椿の恋に暗雲が!?」と「諏訪の恋!?」の2本立てで物語が進む本作。前者では以前のように椿に接することができなくなった千歳が悩む様が、後者では無愛想で不器用な諏訪にロマンスが!?というにわかに信じがたい(笑)展開が描かれていく。しかしどちらのエピソードでも共通しているのは、千歳と諏訪、それぞれの「不器用さ」が図らずも浮き彫りになっているということ。「化け猫」と「化け狸」という種族の違いはあれど、自身の生き方について悩んでしまうのは彼らも、そしヒトも、みな同じ。特に家族から忌み嫌われている千歳と、家族をみな亡くした諏訪は、意味合いは多少違えども、周囲に無条件で頼れる者がいない――と本人は思っている――という境遇は一致しているので、抱えるものもきっとかなり近いに違いない(そしてそれが、千歳にとっては椿へのわだかまりというかたちで現れてしまったのかもしれない)。だからこそふたりはわかりあえる――というほど単純なことではないかもしれないが、それゆえに相手に欠けているものがよく見えるのだろう。きっとふたりは、これからもっといい「相棒」に慣れるに違いないと、そう感じさせられた結末だった。……ただ、千歳の懸念についてはどうしても気になってしまうが(笑)。


◇前巻→「猫と狸と恋する歌舞伎町」

先週は2日連続でお出かけをしていたのですが、その反動(というわけでもないけど)で今週は特に予定もなく、なのでちょっとお散歩してきた話でも。

もう桜は散り始めてますが、他の花はいろいろと咲いてますね。スミレやらツツジやら。

20190413散歩1

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あと近所に八重桜が1本だけあるのですが、こちらはまだこれからといったところ。来週あたりには満開になりそうなのでまた行ってみなければ。

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田んぼにレンゲがたくさん。そしてそれを畦道から見つめる黒猫。残念ながら私は猫に近寄れない(体質的な問題ではなく、単純に逃げられる)ので遠くからそっと見つめるのであった。

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*ここ1週間の購入本*
岩本ナオ「マロニエ王国の七人の騎士3」(フラワーコミックスα/小学館)
糸森環「椅子職人ヴィクトール&杏の怪奇録1 欺けるダンテスカの恋」(ウィングス文庫/新書館)
乾石智子「夜の写本師」
モーリス・ルブラン「怪盗紳士リュパン」(以上、創元推理文庫/東京創元社)
しきみ「獏の国 しきみ作品集 WORLD OF THE TAPIR」(一迅社)

なぜこのタイミングで「リュパン」なのかというと、それは何を隠そう創元推理文庫の60周年フェアのせいです。「人気漫画家による描き下ろし特別カバー仕様」とか言われたら釣られるしかないですよね(笑)。なお「リュパン」は種村有菜、「写本師」はヤマザキコレでした。


大学生の谷中千歳は、実は人間に化けることのできるオスの三毛猫。ドーナツ屋でバイトしている愛宕椿という女の子とお付き合いしている千歳だが、もちろん自分の正体を明かせるはずもなく、彼女との関係を進展させることも当然できない。そんな中、椿の周辺にストーカーとおぼしき男が現れ始めたことに気付いた千歳だったが、男を追い詰めようとした瞬間、逆に捕らえられてしまう。その男は椿の父親の手下で、そして椿の父親である君彦は歌舞伎町を縄張りとする任侠団体・愛宕組の組長だった。正体までバレてしまった千歳は、君彦に命じられるがまま椿と別れることになるが……。

どこにでもいる普通の大学生、しかしてその実態は化け猫!?な主人公が、ひょんなことから恋人の父親に命じられ、ヤクザの仕事(ただし非合法ではない)を手伝わされることになってしまう、奇妙な物語。

オスの三毛猫、しかも正真正銘の「化け猫」であるがゆえに、家族から爪弾きにされてきた千歳。ゆえに椿という「居場所」ができて幸せな日々を送っていたはずだった。しかし椿とは別れさせられ、ヤクザと関わる羽目になり、大阪から借金に追われて逃げてきた親子と関わることになり……となかなかジェットコースターな展開に。そんな千歳を取り巻く周辺の人々(?)もまた、自分の居場所を見出すのに必死になっていた。組長の娘であることを嫌って家出していた椿、とある事情を抱えたまま愛宕組に入った諏訪、そしてこれまた諸事情により愛宕組を頼るしかなかった香里親子。とりわけ諏訪とは、香里親子に関わる中ではからずも相棒的な関係になってしまうのだが、(どちらかというと千歳が一方的に)反発し合いながらも、なんとなく絆のようなものが出来上がっていく展開がなんとも楽しい。

自分だって生きることに必死で、しかもその目的だって見失いつつある中、それでも香里親子を助けようとあがいて見せたり、あるいはふとした瞬間に椿のことを思い出したりする千歳。そんなお人好し(ただし千歳は猫なので……「お猫好し」?)な性格だけに、これからも椿の父には利用されてしまうのだろう。けどそれも含めて千歳という存在なのだろうし、実は千歳と同様に大変な秘密を抱えている椿ともうまくやっていけるに違いない(まあ椿と君彦は親娘だし……)。意外と抜けてたりちゃっかりしたところのある諏訪とのコンビがこの先どうなっていくのかも気になるところ。

広島遠足の翌日に、今度は県内のイベントへ参加してきました。コンベックス岡山で開催されていた「岡山ミネラルマルシェ」です。たまたまタウン誌に宣伝ページがあり、居合わせた後輩ちゃんが興味ありそうだったので、一緒に行ってみることに。なおどちらも専門的知識は皆無ですが「石初心者でも安心」と書かれておりましたのでそれを信じることにしました(笑)。

その名もずばり「ミネラルマルシェ」という会社が主催しているイベントで、全国各地で開催されているそうで、岡山は今回が2回目だったようです。鉱石・宝石・隕石・化石などの様々な「石」を展示即売しているということで、たくさんの会社だか店だかグループだかが出展しており、全部回ったら2時間くらいかかってました(笑)。原石をそのまま販売していたり、アクセサリーにしていたり……と売り方も様々。「さざれ」という破片のような状態で量り売りとか「スプーン1杯200円」という感じで売ったりもして。あと4/5(金)〜4/7(日)の3日間開催ということもあってか、最終日の日曜は半額セールとかもしてました。

聞いたことのある石もない石も様々ありましたが、ボールペンの先くらいの極小粒も数万円したり、逆に手のひらに乗る程度のサイズでも数百円だったりと、サイズ感も金額もピンキリすぎて、なんというかいろいろと価値観がひっくり返ってしまうような世界です。あとやはりこの業界でも「宝石の国」は話題らしく、「宝石の国に登場する石」というポップがついているところもちらほら。だいたいが小さい粒なんですが、結構でかいフォスフォフィライトが置かれてるところもありました(笑)。ちなみに辰砂を売っているところも1か所見つけましたが、「取り扱いに注意」というメモが。剣呑剣呑。

それと、出展者が日本人ではなく東南アジア系の男性オンリーというところも結構多く、「宝石商リチャード氏」の世界だなあ……としみじみ。そういう方はスマホ片手に電話してることが多く、何かの交渉中なのかしら、と気になったり。なお、この日一番印象に残ったのは、そんな東南アジア系のディーラーさんがアメリカで買い付けてきたという、中国産のフローライト。10センチくらいの高さのものが3〜4万くらいするということだったんですが、ご本人が「一番気に入っている」と熱弁されてました。その方は「インディゴブルー」だと言われている通りの深い青色で、しかも目立つキズもなく、加工もしていないのに見事な柱状。同行していた後輩ちゃんもすっかりとりこになったらしく、他の店のフローライトと比べては「あの店のが一番きれいだった」と感嘆してました。私も同感です。

せっかく来たのだから……ということで、私もささやかながらいくつか買ってみました。どれも数百円の安価なものではありますが、まずはこちら。

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透明なのは水晶、黒いのはスモーキークォーツ、青いのはフローライトです。スモーキークォーツは濃淡がいろいろあって、私が選んだのはグレーっぽい濃さのものです。写真では透明感がわかりづらいのですが(苦笑)。

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こちらもフローライトと水晶。フローライトは薄緑で八面体の粒状。水晶はペンデュラムになっているそうなので、これでダウジングをして石油か温泉を掘り当てたいと思っています(笑)。ちなみにパワーストーンとしての効力を帰って調べてみたところ、スモーキークォーツは「精神安定」、水晶は「浄化」、フローライトは「抑圧からの解放」という感じらしいのですが……なんというかよっぽど疲れてるんですかねわたし(笑)。

おかんに誘われて、旅行会社企画の日帰りバスツアーに参加してきました。実はこういうツアーに参加するのって初めてだったりします(笑)。

今回参加したツアーは広島行き。まずは「やまだ屋」というもみじまんじゅうの工場兼直営店へ。しかし工場見学とかそういうことではなく、いきなりもみじまんじゅうの買い物タイムです(笑)。とはいえあらかじめ箱に入ったものだけではなく、変わりダネの商品もバラ売りされていたので、あえてあんこ以外の味ばかり買ってみました。イチゴとか黒ゴマとかオレンジとか。とはいえ帰り際にツアー客へのお土産的な感じでふつうのもみじまんじゅうももらえたので大変ラッキーでした。なお私の手元には現在、10個くらいもみじまんじゅうがあります(笑)。

次はイオンがやっているらしい「THE OUTLETS HIROSHIMA」へ。またしてもお買い物タイムです。ここは面白い構造になっていて、外にあるアウトレットエリアが「2階」、その下のフードコートや雑貨店(アウトレットではない)が入っている部分が「1階」という扱いになっているようです。高台にあるせいでそういう感じになっているのでしょうか。で、1階には大きめのフタバ図書があったので、私としてはそこに行くしかないですよねもちろん……まあアウトレットでも買い物しましたよ一応(笑)。

この時点で時間はすでに13時過ぎ。ここからようやく昼食というか、本日のメインイベントに向かうことに。実はこのツアーのメインイベントは「ホテルでのストロベリースイーツバイキング」だったのです。個人的には今年2回目ですね。しかし交通事情がよかったせいか現地に早く着きすぎて、準備が間に合ってなくてしばらく待たされたり、始まったら始まったで参加人数のわりに部屋が狭いのかあるいは種類が少ないのか、どのコーナーも行列が半端なくて、軽食は後回しでスイーツを先に食べるしかなかったりしたのはちょっと残念。しかし逆に甘い物→しょっぱい物→甘い物の順で食べたことで飽きが来にくく、いつもより多めに食べることができたような気もしますので、結果オーライですね(笑)。

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そしてラストは広島城へ。ライブとかで広島に行くとき、いつもバスセンターの手前にお城があるな〜と眺めてはいたのですが、中に入るのは初めてです。ちょうど桜も満開で、しかもこの日はとても暖かかったので、絶好の花見日和でした。

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城そのものはもちろん原爆によって破壊されてしまったため、現存している天守閣はもちろん復元されたもの。中は最上階の展望台を除き、展示室になっていました。城そのものの歴史から始まり、広島の文化史だとか、広島ゆかりの鎧兜や刀剣展示だとか。個人的には最近某審神者になったこともあって、刀剣に関する展示のフロアは興味深く見させていただきました。広島城を作ったのは毛利輝元ですが、その後で輝元が転封となり、代わりに福島正則が城主になっていた時期があるそうですね。その縁もあってか、日本号の複製が展示されていたのですが、寄贈したライオンズクラブの名前まで彫られていたのがミスマッチというかなんというか(笑)。あとは刀の重さを体験するというコーナーがあったのですが、重さが1キロくらいあるということで、握力が小学生レベルの私にはなかなか厳しかったです(笑)。

そんな感じでまる1日、バスに揺られつつ楽しんできました。自分で移動方法や行き先を考えずに連れて行ってくれるというのは楽でいいですね。欠点としては1か所に留まる時間があらかじめ決められていることかな……広島城はもうちょっと時間がほしかったなーとか。しかしまた、何か自分に合いそうなツアーがあれば参加してみたいなーと思いました。

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おまけ。広島城のマスコット「しろうニャさん」。かわいい。


*ここ1週間の購入本*
加藤和恵「青の祓魔師23」(ジャンプコミックスSQ./集英社)
三川みり「一華後宮料理帖 第八品」(ビーンズ文庫/KADOKAWA)
秋田禎信「魔術士オーフェンはぐれ旅 プレ編2」(TO文庫/TOブックス)
白洲梓「九十九館で真夜中のお茶会を 屋根裏の訪問者」(集英社オレンジ文庫/集英社)
吉上亮「泥の銃弾(上)(下)」(新潮文庫/新潮社)

地下にうごめく星
渡辺 優
集英社
2018-03-26

40代の会社員・松浦夏美は、職場のアイドルオタク・前原に誘われ、後輩女子と共に地下アイドルのライブを観に行くことに。周囲の空気を読んでの参加であり、前原が推しているというグループ「インソムニア」のことも調べずにいた夏美だったが、ステージで輝く少女たち――とりわけインソムニアのメンバー・カエデを見た瞬間に虜になってしまう。しかしその直後に発表されたのは、インソムニアが次の新曲リリースのタイミングで解散してしまうという事実で……。(「リフト」)

2017〜2018年にかけて「小説すばる」にて発表されていた、「地下アイドル」とそれを取り巻く人々の姿を描く群像劇的連作集。

起伏のない日々を淡々と生きてきた夏美にとって、初めて地下アイドルに出会ったという体験は、まさに彼女の人生を変えてしまうほどの出来事だった。そんな一目惚れにも等しい出会いの後に知らされたアイドルグループの解散劇が、彼女の変化にさらなる拍車をかけてゆく――なんと所属グループを失ったカエデをスカウトしてしまうのだ。これには彼女の周囲はもちろん、読んでいるこちらもびっくりするしかない。

そんな夏美の熱意に引っ張られるかのように、続くエピソードで様々な人々が「地下アイドル」に夢や希望――ひいては自身の「居場所」を見出していく。インソムニア解散に揺れるカエデ、女装好きな男子高校生の翼、自称「天使」の女子高生、東京で活躍している人気地下アイドルのアイリ……十代後半から二十代前半の彼女たちは、将来に不安を抱いていたり、あるいは家庭や学校に自分の居場所を見出せないでいたりするお年頃。「地下アイドル」の輝きはそんな彼女たちの心も捕らえていくのだ。

しかし一方でこうも思ってしまう――「地下アイドル」になりたいと願うことは、彼女たちの抱える問題をいちどきに解決するツールに過ぎないのではないか、と。それを裏付けるかのように、夏美の始めたアイドルプロジェクトは意外な展開を見せてゆくことになる。簡単に手が届きそうな地下の星――けれどずっと輝き続けられる本物の星はきっと数少ない。しかしその輝きが一度は消えてしまったとしても、またどこかで輝き始めることはできる。希望とそうでないものが綯い交ぜになったかのようなラストがとても印象的だった。

銀座ともしび探偵社 (新潮文庫nex)
小松 エメル
新潮社
2019-02-28

銀座に居を構える「ともしび探偵社」は、巷間に湧き出る「不思議」を集めている。「あれ」を探す迷子の少女、「欲しい物」が入っているという白い箱、謎の歌姫、夜更けになると針が勝手に動き出す大時計……探偵社のメンバーたちはそれらの不思議を橙色のともしびに変え、手にしたランプに入れて持ち帰り、所長のランプへと移しているが、その先のことは誰も知らないのだった……。

2017〜2018年にかけて「小説新潮」に掲載された短編をまとめた連作集。「ともしび探偵社」の面々が遭遇する「不思議」について綴られてゆく。

つかみどころがなく不真面目に見える小山田、美形だが女嫌いの木下、類稀な美声の持ち主である能瀬、そして地味だが温厚な性格の町川――「不思議」を感知することのできるこの4人の「探偵」たち(ただし町川のみ、はっきりとは見ることはできず、その気配をなんとなく感じられるのみだが)は、見つけた「不思議」が起こす事件を解決し、それをともしびに変えて所長へと渡している。基本的には探偵社に依頼のあった事件や、街の噂などから不思議を探し出しているのだろうが、今回収録されている作品では、町川、能勢、小山田の過去や個人的な事情にも触れる「不思議」が登場し、彼らの内面や葛藤をも垣間見せてくれる。

しかしそもそも、この「不思議」とはいったい何なのか。それは断章形式で語られる会話、そしてプロローグとエピローグにてその一端が示されている。そしてともしびに変えられた「不思議」は、所長の手に渡ったのちどうなっているのか――こうなると所長がある意味黒幕のようにも見えてくるが、所長の持つランプ――これまで集めた不思議をすべて取り込んでいるそれの「意志」と、所長自身の考えが異なることもまた示されている。所長の持つランプは一体何なのか――謎は深まるばかり。

今日で3月も終わりですね。はやっ。
東京ではもう1週間も前に桜の開花宣言が出てましたが、我が地元でもようやく先週半ばに開花宣言が出ました。そこから遅れること数日、我が家の桜も6割くらい咲きました。春ですねえ。

20190331桜1

ちなみに世の中はすでに桜の開花から新元号発表へと話題が移ってますね。個人的には最近やっと今年が「平成31年」だということを覚えつつあったのに、もう忘れなければならないというのがなんだかショックです(笑)。仕事柄、お役所とか銀行の書類を書くことが多いんですが、あれってだいたい和暦なんですよね。だもんで、年が変わるとしばらくうろたえてるので(笑)。今後は新しい元号で覚えるというだけでなく、過去に作成された資料で和暦表示になってるものがあれば、新元号とか西暦だと何年の話になるかというのを考えながら仕事しないといけなくなるのがなんというか面倒ですね……がんばろ(笑)。


*ここ1週間の購入本*
よしむらかな「ムルシエラゴ14」(ヤングガンガンコミックス/スクウェア・エニックス)
新八角「ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?」(電撃文庫/KADOKAWA)
額賀澪「獣に道は選べない」(新潮文庫nex/新潮社)
上田岳弘「私の恋人」(新潮文庫/新潮社)
ホノジロトヲジ「シキノメモリエ ポスターブック」(パイ・インターナショナル)


エルメイア皇国とよく 似た建国神話を持っているがために、その昔ひと悶着起こり、長らく国交が断絶している隣国・アシュメイル王国。かの国が「魔王であるクロードがアシュメイルを侵略しようと魔竜を送り込んできている」と主張したため、アイリーンはレイチェルやセレナ、そしてリリアも伴い、査問のため中立国であるハウゼル女王国へ向かうことに。しかしその途上で、アシュメイルの聖王バアルにさらわれてしまう。バアルの後宮に押し込まれたアイリーンは、現状が「聖と魔と乙女のレガリア」第3弾のシナリオをなぞっていると判断。しかし正ヒロインであるはずの「神の娘」サーラは、聖王の側近であるアレスと結ばれるルートに入っているはずなのに、起きるべきイベントがなぜか起きていないうえ、ラスボスを倒すために必要な聖剣も修復されていないようで……。

乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が、ゲームの記憶をもとに魔王を落としてストーリーを改変し生き延びていくファンタジーシリーズ第4弾。今回は魔力の封じられる隣国にて、アイリーンが蹴落としたはずの正ヒロイン・リリアと共闘するまさかの展開に。

今回ももちろんゲームの記憶を駆使して現状を打破していく……はずだったが、本来の流れとは異なる展開になっているということでさあ大変。魔力は使えないし、手駒となるのはレイチェル以下たったの3人――しかもそのうちのひとりはリリアだということで、先行き不透明なことこの上ない。信頼はしていないけど信用はしている、というアイリーンのリリア評には頷かされもしたが、やはり野放しにしておきたくない存在であることを改めて気付かされてしまった。セドリックがうまく手綱を握ってくれればいいのだが、やはり元ネタであるゲームを熟知しているがために、アドバンテージは彼女の方にある――セドリックだけでなく、アイリーンにとっても――というのがなんとも不安。

アイリーンとクロードのバカップルぶりはまあ相変わらずというか、すれ違いつつもお互いに考えていることは同じというのが楽しいやら微笑ましいやら。お互いに相手の行動に憤慨していたが、もうこれはどう見ても似た者カップルでしかないので末永くお幸せに(砂糖を吐きながら)と言うしかなかったりして(笑)。しかし気になるのは「アンコール」と題された断章。作者があとがきで「爆弾」と呼ぶそのエピソードは、この先への不安を煽るばかり。アイリーンはゲームの展開を知ってはいるが、それはあくまでも「ゲームのプレイヤー」が知りえる情報に過ぎず、だからゲームに描かれていないことは知ることができない。少なくともクロードにはそういう(いわば)「裏設定」があるようで、それが今後のふたりの関係に影を落としそうな雰囲気。いったい「魔王」の過去には何があったのだろうか……。


◇前巻→「悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました3」

君と読む場所 (新潮文庫nex)
三川 みり
新潮社
2019-02-28

鈴川有季は職場体験で図書館の手伝いをすることになった。森田麻友という別のクラスの女生徒も一緒に実習をすることになっているのだが、彼女は保健室登校をしているのだと聞かされる。不安を抱えつつ、七曲老人の家のそばを通った有季は、気弱そうな少女が例の「自動販売機」にお金を入れるところを目撃。いつものように七曲が10冊の本を押し付けようとするが、彼女は噛みつくような叫び声を上げ、七曲が驚いた隙に逃げ出してしまうのだった。その2日後、実習のため向かった図書館で有季を待っていた「森田麻友」は、先日七曲を撃退(?)した例の少女で……。

尾道を舞台に、本に興味を持ち始めた中学生と本を偏愛する老人の間で繰り広げられる攻防(?)を描くシリーズ第2弾。今回は人見知りの激しい読書好き女子・麻友も加わってますますにぎやか(?)な展開に。

有季と麻友との距離を縮めるきっかけをつくってくれた山本周五郎の「さぶ」。図書館への本の寄贈を巡り、同じ本好きであるはずの七曲と司書の利香子が反目しあう状況を解決してくれたサリンジャー「ライ麦畑でつかまえて」。亡き母の追悼に来たと言いつつどこか様子のおかしい男性に七曲が渡そうとした、平野啓一郎の「空白を満たしなさい」。そして過去の事件を暴かれたせいで引きこもってしまった七曲を救ったのは角田光代の「さがしもの」。

最初の3冊は七曲や利香子の言葉や行動がきっかけとなって有季が手にした作品だが、最後の1冊はたまたま見つけて、そして七曲に「読んでほしい」と強く想った作品だった。誰かに勧められてばかりだった有季が、自分の読書体験をもとに「誰かに読んでほしい」と思えるようになったという、そのことだけでもうぐっとくるものがある。まして最後の最後で、七曲の「終活」を積極的に手伝おうと考え始めるところなんて余計に。もし続編があれば、有季のアイデイアがどうなるのかが気になるところ。


◇前巻→「もってけ屋敷と僕の読書日記」

カゲロボ
木皿 泉
新潮社
2019-03-22

小3の時に初めて「カゲロボ」という存在の噂を聞いた笹野冬。それは人間そっくりのロボットで、家庭や学校で虐待やイジメなどが行われていないかをチェックするための監視カメラのような存在であるらしい。そのことを改めて思い出したのは、冬の同級生が自殺したときのことだった。事件の直後に学校を早退したGという女生徒が、自殺した生徒をいじめていた犯人だとカゲロボに告発され、警察に呼ばれたという噂が広まっていたのだ。そのことが気になった冬はGに会いに行くことに。彼女は自分が疑われていることではなく、自殺した生徒のことを誰も悲しんでいないことに憤慨していたのだ。しかしクラスで目立たない冬がわざわざGと話しに行っていたことが周囲にバレ、Gはイジリの対象として扱われ始める。そこでGは自分こそがカゲロボである、という噂を自ら流し、周囲を牽制するが……。(「はだ」)

2014〜2016年にかけて「波」および「小説新潮」に掲載されていた短編をまとめた連作集。「カゲロボ」という存在が見え隠れする世界で、不意に湧き上がる悩みや苦しみを抱える人々に寄り添い、救いを与えてくれる物語。

自らを「カゲロボ」と称した女生徒、いじめっ子に強要されて猫の足を切った少年、友人であるはずの女性に翻弄され自分を見失う老女、不登校のクラスメイトの代わりだという「箱」を渡された少年……他にもたくさんの人々が登場するが、彼らはその時、どうしようもなく「ひとり」だった。そしてひとりだったからこそ、直面した問題にもうまく立ち向かえないでいた。そんな彼らの前に現れたのは、彼らを真正面から見つめてくれる「誰か」の存在だった。

その「誰か」は常に実在する何者かではありえない。時には「カゲロボ」と呼ばれる都市伝説であり、またある時には自分以外にその存在を立証できない第三者であったりする。しかしそうやって自分以外の他者と向き合い、見つめられることによって、彼らは自分の在り方を、そして明日から生きていく方法を、再びその手に掴み直すのだ。「かげ」というエピソードで、飼い猫(として一緒に暮らしていたロボット)を喪った明日美は、「シュレディンガーの猫」の話を思い出す。それは「生きている猫」と「死んでいる猫」が箱の中で重なり合っているという、有名な思考実験のことであるが、この「実験」そのものが本作のテーマであるようにも思える。日常と非日常――「何か起きること」と「何も起きないこと」は重なり合っていて、たまたまどちらかを選びとっているだけに過ぎないのが「現実」。そして誰かに観測されることで、ふたつの状態が重なり合う箱の中身が確定するように、彼らもまた誰かと向き合い、あるいは見守られることによって、自身の存在を確定させることができるのだ、というような。そうしてそれは、足元のぐらついた、不安定な「彼」または「彼女」の支えとなるのだと

響野怪談 (角川ホラー文庫)
織守きょうや
KADOKAWA
2019-02-23

響野家の末っ子である春希は中学生。怖がりだが霊感が強く、しばしば見てはならないモノを視てしまう。そしてよせばいいのに、怖がりながらもつい怪異に近寄ってしまうことも。そしてそんな彼の反応に怪異の方も気付いているらしく、様々なモノが春希の周囲には「寄って」くる。留守番中にかかってくる電話、捨てても捨てても家の前に落ちているスニーカー、時々消える兄、春希を訪ねてくる謎の声……。

霊感の強い少年・響野春希の周囲で起きる様々な怪異を描く掌編連作。雑誌「幽」「怪」に掲載された作品群に書き下ろしを加えた33編が収録されている。

ひとつひとつはありふれたホラーといった感じではあるが、これがひとりの少年の周辺でのみ起きていると言われると、恐怖が倍増するような気がする。(本人が気付いている・いないに関わらず)春希本人に降りかかっているものもあれば、その周囲に起きている事柄も多数。ホラー雑誌の編集者である父親や普通の学生であるはずの兄たちのみならず、クラスメイトや近所の子、果てはたまたま旅先で会っただけの少女まで。そして極めつけは春樹の兄――春希と同様に霊感を持っていると思われる冬理の存在もまた、春希に連なる怪異の一端を担っている。

様々な怪異が語られる中で、何度も繰り返されるのが夜の教室のエピソード。なぜか深夜の教室で目覚める春希。理由も何もわからないまま、校舎から出ようとする春希だが、なかなかうまくいかない。このエピソードは冒頭に続けて3作置かれ、最後に「再訪」というタイトルで再び語られる。しかしこの最終エピソードで語られているのは一体何なのだろう。冬理という兄、そしてシロという番犬的な存在を得たはずの春希に一体何が起きているのか……考えるだに恐ろしい。

山手線謎日和(2) (ハルキ文庫)
知野みさき
角川春樹事務所
2019-01-11

営業先でもあるカフェ「SATSUKI」のオーナー・小岩井、そして同僚の鳥飼と共に、喫茶店「デザート・ムーン」へ行くことになったイズミ。ふたりを招いてくれたオーナーの榊、そして店の常連である怜史も交えたその席で、小岩井は自分の店で起きたある出来事について語り始める――店内で客同士がぶつかり、売り物であるマグカップが落ちて割れてしまった。ぶつかった側の女性客はその場から逃げてしまったのだが、バイトの子が言うには、その客は店長である小岩井のことを探るような行動をとっていたのだとか。小岩井に思いを寄せているらしい榊や鳥飼はストーカーではないかと心配し、イズミにそれとなく探りを入れてくるように。榊の頼みで「SATSUKI」にやってきていた怜史と共に、イズミは逃げた女性客を探し始めるが……。(「渋谷駅事件」)

お人好しで正義感の強い編集者のイズミと、洞察力は鋭いがひねくれ者の読書家・怜史が、山手線周辺で起きる奇妙な謎を解き明かすライトミステリ第2弾。今回も絶妙なコンビネーションを見せてくれるふたりから目が離せない。

小岩井のストーカー疑惑、イズミの正義感が裏目に出てしまうコインロッカー事件、中国人女性と男子小学生の縁を繋ぐエピソード……と、今回もなんというか不思議な事件が勢ぞろい。ひとつの話に対し、メインの事件とは別の小さな事件が絡んでくるため、多少散漫な印象がなくもないが、イズミと怜史はこれらの事件をひとつずつ解明していくことに。2巻ともなるとだいぶイズミも怜史の扱い方に慣れてきたようで、ひねくれ者な怜史の手綱をうまく操っているのがなんとも楽しい。とはいえ怜史の方はとうの昔にイズミの扱い方はマスター済みなので、うまいこと利用されることの方が多かったりもする(笑)。実はこのふたりより、鳥飼・榊・小岩井の三角関係(?)の方が進展している気配もあるので、続編があればイズミと怜史の関係の進展も期待したいところ。


◇前巻→「山手線謎日和」

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