phantasmagoria

読んだ本のこと、それ以上に買った本のこと、ときどきライブのことを書き散らかしてみたりする。

よく行く某ショッピングモールにガチャガチャコーナーが新設されたと聞き、喜び勇んで行ってきました。結論から申し上げますと、控えめに言っても最&高でした。とはいえ中にはサメフライ(リリースされたのは確か2013年頃)とか妙に古いものも並んでたりするので、どこぞの在庫整理?と首を傾げたりもするのですが、まあそれはさておき……ということで、勢いでガチャった戦利品です。

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その1は「座る犬」と「座る蛙」。「コップのフチ子」でおなじみのキタンクラブから出ています。以前「座る猫」というのがあり、そのシリーズの第2〜3弾なんだと思うのですが……猫ときて犬がくるのはわかるけど、なぜ蛙。しかも私が引き当てたやつ、「ツチイロ」というなんかあからさまにカエルカエルしているという……。

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その2は「顔面妄想シリーズ 隠崎さん」。カードゲームでおなじみのブシロードのグループ会社から発売されている、タイトルの通り顔が隠れて見えない女子高生・隠崎さんのミニフィギュア。こちらは「フルスイングで見えない」。めり込んでます(笑)。他にも4種類あるのですが、なぜか目出し帽をかぶっていたり、黒板消しをはたいた時に出る粉で顔面が覆われていたりと、なかなかシュールです。

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その3はバンダイから出ている「刀剣乱舞ジュエリーケース2」。そしてその4はネイチャーテクニカラーシリーズでおなじみのいきもんから出ている「缶詰リングコレクション」です。3の中に4が入っており、3は歌仙兼定モデル、4は「ほたて貝柱水煮」です。しかも4のリングはちゃんと指にはめられます。最初はリングの方を見つけて「なんだこれ!」と喜んでガチャったのですが、その後でケースの方を見つけ、ただこのリングを入れるためだけにガチャりました(笑)。個人的にはとうらぶというよりセーラームーンみを感じますね(世代なので)。なお、このリングはマルハニチロ公認だそうですヨ(笑)。


*ここ1週間の購入本*
原百合子「繭、纏う2」(ビームコミックス/KADOKAWA)
水野英多「裏世界ピクニック3」(ガンガンコミックス/スクウェア・エニックス)
KANA「女の友情と筋肉7」(星海社コミックス/星海社)
海野つなみ「逃げるは恥だが役に立つ10」(KC kiss/講談社)
ジョージ朝倉「ダンス・ダンス・ダンスール14」(ビッグスピリッツコミックス/小学館)
竹岡葉月「おいしいベランダ。 返事は7日後のランチで聞かせて」(富士見L文庫/KADOKAWA)
三雲岳斗「アヤカシ・ヴァリエイション」(LINE文庫/LINE)
深緑野分「戦場のコックたち」(創元推理文庫/東京創元社)
額賀澪「君はレフティ」(小学館文庫/小学館)
岩城裕明ほか「5分後に起こる恐怖 世にも奇妙なストーリー 呪いの螺旋」(西東社)
野梨原花南「猫2題プラス五月田君と岩田万丈のおばけ屋敷」(自費出版物)

遅ればせながら、2019年上半期が終了しましたので恒例のまとめをば。1〜6月に読んだ本で特によかった10作とひとこと感想です。なお前回はこちらです。


◇高野和「七姫物語 東和国秘抄〜四季姫語り、言紡ぎの空〜」(メディアワークス文庫/KADOKAWA)
日本と中国を混ぜ合わせたような世界観で紡がれる、7人の姫君たちの国盗り物語。末の姫として擁立された主人公・空澄の、その名の通り透徹したまなざしがなんとも印象的です。


◇渡辺優「自由なサメと人間たちの夢」(集英社文庫/集英社)
短編集。ぶっ飛んでいるのに、どこかリアルな物語たち。なんとなく自分の中にも彼女たちのような存在がいるような気がする。


◇小川一水「天冥の標10 青葉よ、豊かなれ PART3」(ハヤカワ文庫JA/早川書房)
ついに完結した大河SF小説。つまりは愛なんですよ。


◇織守きょうや「響野怪談」(角川ホラー文庫/KADOKAWA)
人ならざるモノに好かれやすい体質の少年・響野春希の周辺で起きる奇妙な出来事の数々。最終エピソードにはなんとも肝が冷える。まさに「怪談」。


◇木皿泉「カゲロボ」(新潮社)
「カゲロボ」なる都市伝説的な存在をめぐる短編集。いるかいないか、それは実際に箱のふたを開けてみなければ誰にもわからない。


◇糸森環「欺けるダンテスカの恋 椅子職人ヴィクトール&杏の怪奇録1」(ウィングス文庫/新書館)
人間嫌いで椅子を偏愛する椅子職人ヴィクトールの周辺で起こる霊的な現象(ただし当人には霊感なし)を、霊感アリの女子高生・杏がはからずも解決してゆく連作ライトミステリ。微妙にエキセントリックな感のあるヴィクトールの発言がなんとも楽しい(笑)。


◇雪乃紗衣「エンド オブ スカイ」(講談社)
それはきっと、命懸けにして運命の恋。すれ違いながらも育まれる絆がなんとも眩しい作品でした。


◇柴田勝家「ヒト夜の永い夢」(ハヤカワ文庫JA/早川書房)
粘菌で動くヒトガタは果たして神たりえるか。南方熊楠という実在の学者を主人公に、虚実織り交ぜて綴られる、ヒトのみる一夜の夢。


◇宮内悠介「偶然の聖地」(講談社)
幻の山「イシュクト」を目指す人々を描くロードノベル。その山にたどり着いた時に視える景色はいったいなんだったのだろうか。


◇結城充考「捜査一課殺人班イルマ オーバードライヴ」(祥伝社文庫/祥伝社)
自身の信じる正義を貫く孤高の女刑事・イルマの活躍を描くシリーズ4巻。過去最大のピンチに見舞われつつもブレないその姿がかっこいい。


元の世界に戻る方法を見いだせないまま、カンラン先生は引き続き東ゥ京にて魔法使いとして暮らすことに。そんな先生のもとに舞い込んだのは、竹中佐和という字を世からの依頼だった。彼女の母親はかつて、自分が亡くなったら、3日間だけ誰にも知らせずそのまま寝かせておいてほしいと言っていたのだという。そしてその母親が亡くなって、この日で3日目。クジとカンラン、そして佐和が見守る中、不意に母親は起き上がって外へ出て、今は使われていない近所のダンスホールへと向かい……。

魔法が存在する「日本」ならぬ「日本ン」を舞台に、異世界の魔法使いカンラン・タロットワークと、魔力を帯びない珍しい体質持ちの青年・クジが不可思議な事件を解決していくファンタジーシリーズ第3弾。

カンラン先生が元の世界に戻るために必要な「ネオンジウム」が3つとも見つかったとはいえ、うち2つはもう使えない状態……ということで、とりあえずこれまで通り、東ゥ京で起きる怪異をどうにかすることになったカンラン先生。ホテルの滞在条件のことや、そもそもの責任的なものもあり、クジも先生と一緒に行動するわけだが、それはそれとして、魔力が皆無であるという自分の特異体質について引き続き悩んでいるというのが現状。場合によっては足手まとい――しかも単なる能力不足ではなく、彼の体質がどう影響を及ぼすかわからないという、自分でもどうすることができない理由で行動を阻まれてしまうクジは、自分に何ができるのかというのを自問し続ける。しかし先生はちゃんと、その肩書通りの役割を果たしてくれるのだ――例えばとても小さな、しかし背中をそっと押してくれるような魔法を作ったりだとか。

「明日なんて来ないかもしれないスケジュールですよ」と先生はにこやかに呟く。それは彼自身のことでもあるし、他の誰にだってあてはまることでもある。先のことはわからない。けれど、だからこそ、落ち込んだり悔んだりしながらも、ただ前に進むしかない。当たり前で、ささやかな事実なのかもしれないが、それでも確かに勇気づけられた気がした。


◇前巻→「ちょー東ゥ京2〜カンラン先生とクジくんのちょっとした喧嘩〜」

少女は鳥籠で眠らない (講談社文庫)
織守 きょうや
講談社
2019-07-12

新米弁護士の木村竜一がこのたび担当することになったのは、21歳の家庭教師が15歳の教え子に淫行したとされる案件だった。しかし初めて接見したその家庭教師――皆瀬理人は、自分の罪状にぴんときている様子もなく、前科がつくと言われても他人事のような態度を崩さないが、かといって開き直っている風でもなく、木村は首をかしげるばかり。被害者である黒野葉月の両親は、二度と皆瀬が娘に会わないことを条件として示談を受け入れたいというのだが、皆瀬本人はそれだけはできないと頑なに拒むのだった。さらにその直後、木村の前に葉月本人が現れ、皆瀬の無罪を訴えてきて……。(「黒野葉月は鳥籠で眠らない」)

現役弁護士であるという著者によるリーガル・ミステリ連作。2015年に刊行された「黒野葉月は鳥籠で眠らない」の改題文庫化となっている。

まだ弁護士2年目であり、経験の少ない木村の前に、様々な事件が立ちはだかってくる。未成年との淫行疑惑に始まり、友人の不法侵入及び殺人事件、知人の後輩の離婚案件、そして頼れる先輩であるベテラン弁護士・高塚が担当している芸術家の遺産相続問題。どれもこれも表面上はよくありそうな問題ではあるが、そこには複雑きわまりない人間模様、そして彼らが持っている強い意志が潜んでいる。

先輩の高塚はさすがベテランだけあって、戸惑う木村に様々なアドバイスをくれる。しかしそれでも木村はやりきれない想いを抱え、時に絶望しながらも、目の前の依頼人と向き合っていく。ある依頼人の裏切りともとれる行為を目の当たりにした木村に対し、高塚が告げた言葉が胸に刺さる――「ただ、覚えておけばいいよ。絶対に欲しいものが決まっている人間が、どれだけ強くて、怖いものかを」。法律は人のためにあるのであって、人が法律のためにあるわけではもちろんない。しかし明確たるルールがなくては、社会というものは成り立たない。そんな中でどうやって生きていくのか――どうすれば自分の望みを叶えることができるのか。そんな当たり前で、しかし難しいことを実現するための答えが、そこにあるような気がした。それがいいことにせよ、悪いことにせよ。


広報課の千晶から、制服の代金についての相談を受けた沙名子。沙名子も制服代は会社持ちだと認識していたのだが、千晶が人事課に尋ねると、個人負担だと言われたのだという。しかし沙名子が再度調べたところ、やはり規則が変更になった形跡はない。沙名子は千晶に間違った情報を告げた人事課員・玉村志保に制服代の話を聞きに行くが、志保からはまともな答えが返ってこず、なぜか制服に対する文句を述べられてしまう。志保の態度について問題があると周囲からも聞かされていた沙名子は、彼女がなぜそんなにも攻撃的なのかを調べ始める。一方、秘書課の有本マリナの担当になっていた美華は、彼女がキャバクラでバイトしているという噂を確かめるために調査を続けていた。するとマリナが勤めるキャバクラで、天天コーポレーションの部長たちが企業買収専門のコンサルタントと会っていたことがわかり……。

日々提出される様々な領収書から社内の人間模様を描き出すシリーズ6巻。今回は天天コーポレーションに買収話!?というまさかの急展開に。

秘書課の有本マリナは、かつて沙名子が証拠不十分により横領を見逃してしまった相手。彼女のようにわかりやすくしたたかで、しかも役員たちの権力をバックにつけているような女性は、沙名子でなくとも苦手な相手だと言える。そんな彼女の不正に敢然と立ち向かうのは、経理課の新人(中途採用ではあるが)・美華。しかし彼女が見つけたのは、マリナが仲介し、大手メーカー「サンライフプロダクト」が天天コーポレーションを買収するかもしれないという可能性だった。そこで沙名子は、営業部の山崎のアドバイスも受けつつ、対応策を練っていく。

何事もイーブンと平穏が大事で、事を荒立てるのをよしとしない沙名子が、会社の存亡を賭けた事態に乗り込んでいくというのはどこかちぐはぐなことのようにも思える。しかし会社の存亡はすなわち、彼女を含めた一般社員の待遇そのものに関わってくる。さらに同期にして親友である美月が、専務である円城格馬と結婚するという話を聞かされたからにはなおさら。自分のため、そして親友のために、一芝居打ってまでマリナを追い詰めようとする沙名子の姿はなかなかのカッコよさで、その行動力や洞察力は、同じ経理担当者として驚くばかりでもある(笑)。

とはいえ、今回の事件の幕引きは、沙名子に苦い経験をもたらしたこともまた確か。このことが、彼女の今後の仕事ぶりに影響しなければいいのだが……。


◇前巻→「これは経費で落ちません!5〜落としてください森若さん〜」

化学探偵Mr.キュリー4 (中公文庫)
喜多 喜久
中央公論新社
2016-03-18

庶務課が運営している「なんでも相談窓口」に、構内に猫が増えてきたという苦情が相次いで寄せられる。さっそく数や種類を把握しようと調査に出た舞衣が見たのは、野良猫におそるおそる近付こうとする沖野の姿だった。そんなふたりの前に現れたのは「大学猫を守る会」と名乗るサークルの会長・堺と、以前別の「事件」で関わり、ふたりとも顔見知りである早苗。ふたりに猫を預けた舞衣たちだったが、そこで早苗から密かに相談を持ち掛けられる――実は早苗には猫アレルギーがあるようで、本当は猫に接するのが難しいのだが、彼氏である堺のそばにいたいため、どうにかアレルギーを治す方法を探してほしい、と。皮膚科に通っても効果がなかったという早苗のため、舞衣はある漢方薬の店を紹介するのだが、それでもアレルギーは治るどころか悪化する一方で……。(「化学探偵と猫騒動」)

大学内で起きる様々な事件を、准教授と庶務課の女子職員が相変わらずの名コンビ(?)ぶりで解決していくライトミステリシリーズ第4弾。今回は珍しく、沖野単独の謎解きエピソード「沖野春彦と偽装の真意」と、その裏側で起きていた舞衣単独のエピソード「七瀬舞衣と三月の幽霊」も収録されている。

猫アレルギーに隠された秘密、落とし物のUSBメモリが引き起こす詐欺事件、そして舞衣の親友である人気アイドル・剣也が殺人事件の謎解きに挑戦!?という変わり種エピソードもあるなど、今回は3巻までとは少し趣が異なる展開に。そして最後には前述の通り、外出先で沖野がある事件の謎解きをすることになるエピソードと、同じころに舞衣が大学で起きた事件の謎解きをえるエピソードも収録されている。沖野はともかく、舞衣がひとりで謎解きができるのか?と少し心配になったものの、沖野の助言を受けて見事解決していくところに、彼女の成長ぶりが見られてなんだか微笑ましくなってくる。ふたりが出会って今巻で1年経ったということなのだが、沖野が自ら「これからもよろしく」と舞衣に告げるラストにはぐっとくるものがあった。今後のふたりの関係も要注意ということで(笑)。


◇前巻→「化学探偵Mr.キュリー3」

久々に何もない週末です(笑)。とにかく暑いのでエアコンかけて本読んだりとうらぶやったりしてるんですが、明日も予定がないので、同じようにだらだらできると思うとうれしくなりますね。お盆休みはないし祝日は休みにならない職場なので、月曜からは普通に仕事なんですが、今から行きたくない感が半端ないです(笑)。

そういえば大学を出て、就職してかれこれ10年以上経つわけですが、途中で1か月間まるまる仕事を休んでたことがあるんですよね。病気療養ということでしたが、精神的なものだったので、普通に家で本読んだり散歩してただけだったんですけど、毎日最低でも1回は職場から電話がかかってきてたので(「療養」とはいったい……と今では思いますが・笑)、完全に仕事から切り離されたという感覚はありませんでした。でももし仕事を辞めたらどうなるんだろう……と、こうやって休日にとりとめのないことをしているとふと考えたりもします。最近、身近な人が仕事を辞めて絶賛無職中になってるのを見てるのでなおさら。いつかくるその日を、とりあえず夢見ていようと思います(笑)。


*ここ1週間の購入本*
桃栗みかん「群青にサイレン10」(マーガレットコミックス/集英社)
矢寺圭太「ぽんこつポン子1」(ビッグスピリッツコミックス/小学館)
種村有菜「アイドリッシュセブン Re:member 2」(HCスペシャル/白泉社)
大森望・責任編集「NOVA 2019年秋号」(河出文庫/河出書房新社)
京極夏彦・訳/東雅夫・編「稲生物怪録」(角川ソフィア文庫/KADOKAWA)
皆川博子「彗星図書館」(講談社)


そういう物語があるというのは知っていましたが、最近Twitterでちらほら流れてくるので気になって買ってみました「稲生物怪録」。実際に内容に触れるのは初めてです。広島の三次というところにいた稲生平太郎という武士が、百物語&肝試し的なことをしたせいで、翌日から怪異に見舞われるようになる、という物語。本作には絵巻物そのものをフルカラーで全編収録。さらに平太郎本人が書き残したとされる「三次実録物語」を京極夏彦が現代訳したものと、平太郎の知人が彼から聞き取ったエピソードをまとめた「稲生物怪録」を東雅夫が逐語訳したものも収録されています。

本人が書いたものと、知人による聞き書きとで、多少エピソードが異なっているのもなかなか興味深いですが、まあなにより面白いのは毎日手を変え品を変え現れる様々な怪異と、それに対する平太郎の反応。怪異にはくすっと笑えるもの(寝ていたら虚無僧に囲まれていたり、ホウキが勝手に掃き掃除をしていたり)から、どうも気持ちの悪いもの(女の生首に舐められるとか、入口に巨大な老婆の顔があって出られないとか)、さらには身の危険も感じるえぐいもの(知人が目の前で切腹し、自分も責任を取って自害しなければという焦燥に駆られてしまう)まで様々。しかし当事者である平太郎は、最初こそ驚いていたものの、反応したら相手をつけ上がらせるだけだと気付き、基本的にはスルーして寝てしまうんですね。その図太さ、見習いたいものです(笑)。

営繕かるかや怪異譚 その弐
小野 不由美
KADOKAWA
2019-07-31

弟と両親が死に、管理を任せていた祖母も亡くなったため、10年以上ぶりに実家へと戻った貴樹。かつて弟が引きこもっていた――そして自殺した――部屋を整理していた貴樹は、柱と壁の間に隙間があり、そこから裏の家の中が見えることに気付く。いつからか聞こえていた三味線の音はそこから漏れてきていたらしく、中には芸妓と思しきひとりの女がいた。彼女は日がな一日部屋にいるようで、三味線の練習をしたり、何か手紙のようなものを読んで泣くなどしていた。その姿から目が離せず、貴樹は弟の部屋に入り浸って彼女を見つめるように。やがて彼女に会ってみたくなった貴樹は、その部屋の持ち主である料亭の女将を訪ねるも、貴樹の言う部屋には誰も住んでいないと言われ、実際に誰もいないし使われてもいないその部屋の中を目の当たりにすることに。さらにその直後、庭師と思しき男が貴樹の元を訪れ、彼女のことを見てはならない、あれはあなたの命を取るものだ、と告げ……。(「芙蓉忌」)

古い建物や町屋が多い城下町に現れる怪異を、それが憑いている建物を修繕することで解決したりしなかったりするホラー短編集第2弾。約4年半ぶりとなる続編には、雑誌「幽」「怪と幽」に掲載された6編が収録されている。

誰もいない部屋で泣き暮らす芸妓、夕暮れの神社に現れる鬼、死んだはずの猫が夜な夜な戻ってくると訴える息子、古民家リフォームに燃える女性を襲う悪夢、水死した同級生に取り憑かれ死を予感する男性、そして祖母の家の屋根裏に現れた血塗れの幽霊……そんな怪異に悩まされる人々の前に偶然、あるいは依頼されて現れるのが、営繕業を営む尾端という男性。本人が喧伝しているわけでもないのに、なぜか「そういう事案が」よく持ち込まれると困惑している風もある尾端だが、いくつか話を聞き、家の状態を見ただけで、すぐさま理由を察知してしまえる能力はやはり尋常のものではない。

今回も尾端が関わることで問題は解決したり、しなかったり。尾端は家を直すのが仕事であり、そのおかげで怪異が解消することもあれば、そうならないこともある。後者の場合、その怪異とどう向き合っていくかは結局その家の持ち主次第。自分の持ち物については自分で解決し、あるいは折り合いをつけるしかないのだ。けれどそうやって問題と向き合うことで、別のものが視えてくることもある。家に住むということは生活であり、ひいては生きていくということにも繋がる。だからこそ、自分のみに留まらず、周囲との関わりにも繋がっていくことになるのだ。そう考えると、怪異といえど、そんなに悪いものでもないのかもしれない、と思わなくもない。怖いものは怖いけれど。


◇前巻→ 「営繕かるかや怪異譚」

小鳥たち
山尾悠子
ステュディオ・パラボリカ
2019-07-29

〈水の城館〉には華奢な編み上げ靴を履いた侍女たちがいる。赤髭公やその母親である老大公妃からも「可愛い小鳥たち」と呼ばれる彼女たちは、小鳥のように驚きやすく、すぐに動揺する性質がある。広い庭園のそこここにある噴水にすら驚き、その姿を小鳥に変じさせて逃げ惑ってしまうくらいに……。

山尾悠子による掌編をモチーフに、人形作家・中川多理が人形を創作し、その人形を元に新たな物語が紡がれる――「小鳥たち」という存在が往還し、その世界を広げていく幻想譚。

物語は3編の短編で構成されている。まずは2016年に再刊行された歌集「角砂糖の日」の付録として発表された短編「小鳥たち」。これを元に中川多理が小鳥たちの人形を創作。これを受け、ステュディオ・パラボリカから2018年に刊行された「夜想♯ 中川多理――物語の中の少女」に山尾悠子が「小鳥たち、その春の廃園の」を寄稿。この続編を元に新たな小鳥たちの人形が創作され、そして最終章となる「小鳥の葬送」が書き下ろされたのだという。まるで往復書簡のように、小鳥たちが物語と人形というふたつの表現方法を使って、現実世界に顕現していく。

侍女たちは人間の少女であり、時には本当に「小鳥」となり飛び立ってゆく。それはすべて彼女たち自身の意志で行われることであり、誰かに強制されることでもなければ、彼女たちが望まないことでもない。軽やかな――時には慌てふためき騒々しいのかもしれないが――羽音と、ひそやかな囀りが、文章の間から、そして人形の写真から、不意に聞こえてくるような気がしてくる。〈水の城館〉と呼ばれる、噴水と迷路のような庭園に囲まれた屋敷。赤髭公と呼ばれるその主と美しい妻たち。そして公の母親である老大公妃の死と束の間の復活。やがて廃園となるその城館は、それでも往時の美しさをきっと留めたままに違いない。少女が小鳥に変じてしまうような場所なのだから、そのくらいの奇跡が残っていても不思議ではないだろう。短い作品ながらも、あっという間にその異質な世界に取り込まれてしまうような、そんな緻密な美しさが滲み出てくるような物語だった。


女が州牧になったせいで奇病が流行している――そんな噂が駆け巡る中、秀麗は医師と物資を携えて茶州へと戻る。そのさなかに秀麗たちに知らされたのは、病が流行っている山村に向かっていた影月と、それを追っていった香鈴がふたりとも行方知れずになっているという事実だった。「邪仙教」なる謎の集団、そしてそのトップである「千夜」が秀麗と影月を狙っていることに気付いた秀麗と燕青は、邪仙教の本拠地があるとされる場所へと向かうが……。

中華風ファンタジーシリーズ8巻、影月編はこれにて完結。今回も番外編として、秀麗が熱を出したことで周囲が大騒ぎする「お見舞い戦線異状あり?」と、劉輝視点の後日談となる「薔薇姫」(いずれも短編集「朱にまじわれば紅」所収)が収録されている。

死んだはずの「千夜」を名乗る謎の人物の狙いがわからぬまま、それでも事態を収束させるため、秀麗と影月はそれぞれ奔走する。そんな中で迫る、影月の命のタイムリミット。敵の背後に見え隠れし始めたのは、彩八家とは異なる異質な一族・縹家。秀麗の父とも因縁があるらしい当主の璃桜、そして彼を溺愛しているらしい姉が、何かを狙って暗躍していることが次第に明らかになってゆくだが、今のところその「何か」はわからずじまい。しかもそれには秀麗の亡き母も関わっていることが示唆されている。巻末に置かれた番外編2作のうち、「薔薇姫」と題された短編は、ありふれたおとぎ話のようでいて、けれど実際は秀麗の父母に起きた出来事なのではないかと思われる。ただのしっかり者だと思っていた秀麗が、これから管理であることとは別に、何かの渦中に巻き込まれるのではないかと思うと気が気ではない。

しかも秀麗と影月は今回の事件の責任を取らされてしまうことに。事態を収束させたのに降格とは理不尽にもほどがある!と思ってしまうのだが、これが政治の世界ということなのだろうか。だとしても、秀麗と影月の待遇が全然違うのは、やはり秀麗が女であるがゆえなのだろうか。しかし一方で、今回の事件をきっかけに、秀麗に憧れて官吏を目指そうとする少女も現れる。秀麗の行動は人々を助けただけでなく、子供に希望をも与えたのだ――その事実だけでも救われると、そう思える結末が良かった。


◇前巻→「彩雲国物語 七、心は藍よりも深く」

岡山在住のイラストレーター・マツオヒロミさんの個展「胡蝶之夢」が岡山で開かれているということで、いてもたってもいられず行ってきました。場所は新見美術館。県内とはいえど、我が家からはなかなかの遠方でしたがいいんです。なんとか車で行ける距離でしたので。

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(↑外だったので反射していろいろ写り込んでる……笑)

新見美術館はJR新見駅からほど近い、高台にある小さな美術館。展示室は4つあり、すべて写真撮影OKという太っ腹ぶりです。カラーイラストだけでなく、下書きや線画も展示されているものがあり、比べるとその繊細さ、細やかさがよくわかります。
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描かれる少女たちの容姿の美しさもさることながら、衣服の柄や小物がまたすごく凝っていて、いつまでも見ていられますね。

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拡大されても美しい……!


*ここ1週間の購入本*
フライ「今日、小柴葵に会えたら。1」(REXコミックス/一迅社)
小野不由美「営繕かるかや怪異譚 その弐」(KADOKAWA)
木皿泉「ぱくりぱくられし」(紀伊國屋書店)
山尾悠子・中川多理「小鳥たち」(ステュディオ・パラボリカ)
マツオヒロミ「WORKS/3」(自費出版物)

化学探偵Mr.キュリー3 (中公文庫)
喜多 喜久
中央公論新社
2015-06-23

舞衣のもとに三波桜という女子学生が相談にやってきた。友人である村杉和弘の家に何度も藁人形が投げ込まれるようになり、同じ頃から彼の体調も悪くなりつつあるのだという。本人はまったく気にしていないが、心配になった桜は舞衣に犯人探しを依頼。捜査に乗り出した舞衣だったが、その中でしばしば村杉和弘の双子の兄・達弘が不審な行動をとっているのを目撃し……。(「化学探偵と呪いの藁人形」)

「Mr.キュリー」と綽名される化学科の准教授・沖野が、トラブルを引き寄せる体質持ち?な庶務課の女子職員・舞衣と共に、様々なトラブルを化学的に解き明かしていく日常の謎系ライトミステリシリーズ第3弾。

いつの間にか「クイーン・オブ・オカルティズム」などという二つ名を獲得していた舞衣。もはや沖野の「Mr.キュリー」という綽名がかすんできそうな気もするがそれはさておき(笑)。今回も藁人形の呪いに始まり、人目を避け夜中に実験を繰り返す学生の抱える秘密を明らかにし、さらには知人の飼い犬を助けるために薬を作ろうとする少年の手助けをする沖野。特に中編「化学探偵と化学少年の奮闘」では、科学に興味を持つ少年に積極的に関わってくるなど、これまで以上にやる気を出す沖野の姿が見られる。しかし最後に置かれた短編「化学探偵と見えない毒」では一転して舞衣を拒絶するような素振りも。先輩研究者である氷上の登場で明らかになったのは沖野の抱える過去と後悔。沖野の拒絶にショックを受ける舞衣だったが、転んでもただでは起きないというか、無意識のうちに氷上を挑発し、いつの間にか彼の協力を取り付けてしまっているのだから、なかなか図太いというか人たらし(?)というかなんというか(笑)。図らずも舞衣が氷上を利用していることに呆れる沖野だったが、その台詞の影にはもしかしてヤキモチが……?という邪推をしてしまったのはきっと私だけではないだろう(笑)。


◇前巻→「化学探偵Mr.キュリー2」

化学探偵Mr.キュリー2 (中公文庫)
喜多 喜久
中央公論新社
2014-07-23

小学生の園田勇太は3月生まれであるために他の同級生たちよりも身体が小さく、一緒に遊んでいてもついていけず、周囲から呆れられ見放されることもしばしば。河原でこっそり悔し泣きしていた勇太だったが、ふとあたりを見回すと、あるゲームに登場する魔術師めいた老人を発見。彼が謎の壺から炎を出すところを目撃してしまう。その「魔法」を習得すれば友人たちを見返してやれると考えた勇太は、学校行事で訪れた四宮大学にて、案内役を務めた沖野という准教授に「魔法」の使い方について質問するが……。(「化学探偵と炎の魔術師」)

「Mr.キュリー」と綽名される化学科の准教授・沖野が、庶務課の女子職員・舞衣が持ち込む様々なトラブルを化学的に解き明かしていく日常の謎系ライトミステリシリーズ第2弾。

今回も舞衣が持ち込むトラブルは大小様々。小学生が目撃した「魔法」に隠された計画、アイドルオーディションと盗まれた試薬の関係、クッキーを食べた直後に体調を崩した祖母の本当の死因、学内で開発された水を飲むと幻覚が見える?理由、そして開かずの間に現れる人魂の謎。相変わらず好奇心旺盛な舞衣は、職務に対する使命感も相まって真摯に対応していくのだが、沖野に対しては強引すぎるくらいの態度で毎度毎度協力を要請していく。時には大学の外に飛び出す舞衣に引きずられつつ、口では文句を言いながらもさほど面倒がっていない沖野の態度がなんとも微笑ましい。しかし一方で、舞衣もまた沖野に負けず劣らず妙な評判が高まっていることも判明。いつの間にかオカルトサークルの「終身名誉顧問」にされているのにはつい笑ってしまった。実は沖野の綽名よりもよほど実害を被っているのでは……(笑)。


◇前巻→「化学探偵Mr.キュリー」

20190729ユニゾン
今年のあたまから決まっていた大型の予定が2つありまして、ひとつは今月7日のナナライ2日目への参戦だったんですが、もうひとつが27日に開催されたUNISON SQUARE GARDENの結成15周年記念ライブ「プログラム15th」への参戦でした。ついにこの日が来た(時間の流れはやい)……としみじみしつつ、行ってきました大阪へ。

……と威勢よく出発したのはいいのですが、ご存知の通り、27日は台風が来てたんですよ。しかも当日の朝には三重県に上陸し、近畿地方の天気は大荒れ。岡山は台風の影響など欠片たりとも見られない快晴だったのですが、新幹線で兵庫を過ぎた途端に雨が降り始め、昼前になんばに着き、宿に荷物を預けようと地上に出たら土砂降りですよ。これは参りました。

とはいえ15時頃にはなんとか雨も上がり、外はひたすら蒸し暑い。しかもライブ会場である舞洲スポーツアイランドの特設会場(つまり野外)は足元が土&草ですので、水たまり&ぬかるみで大変なことに。始まる前は明るいのでやばい場所は避けて通れるのですが、終演後は夜なのでしょっちゅう泥に足を取られて大変なことになりましたがまあそれはさておき。

会場はなんというか夏フェスのような状態。会場は横3つ、縦2つのブロックに区切られており、ステージ前方の向かって右から「U1」「S1」「G1」という名称がつけられていました(後方は数字が「2」になる)。私はG1ブロックだったので斎藤くん側……と言いたいところですがいかんせん会場は広くステージは遠いのでほとんど見えませんね。まあそんなもんです。モニターがありましたのでそれでしっかり見えますけどね。

で、ライブ。17時半から始まり、約2時間半の長丁場、途中ほとんどMCも挟まず、アンコールもなしでぶっ通しです。7月末、しかも雨上がりの蒸し暑い中、それでも長袖のシャツにネクタイを締めてくる斉藤くんは一体何の修行をしているのでしょうか(笑)。

さておき、1曲目はおそらく誰も予想していなかったと思うのですが、「お人好しカメレオン」からスタート。4thアルバム収録の曲ですね。以降、メジャーな曲からあまりライブでもやらないような曲、さらにはインディーズ時代の「水と雨について」などを次々と披露。相変わらずステージ上を自由に走り回るたぶち、ソロコーナーでは会心のドヤ顔を見せるTKO、そしてそんなふたりを横目に涼しげな顔の斎藤くんという、特別な日なのに特別感を見せない、いつも通りの3人の姿がそこにはありました。メジャー1stシングルである「センチメンタルピリオド」で締められたライブは、彼らの「自分たちの好きなように歌い続ける」という決意が改めて示されているなと感じさせられました。ちなみにライブ終了後には「15周年」にちなみ、15発の花火が打ち上げられました。夏だなあ。

……という感じでライブは大変楽しく終わったのですが、ここからが大変でした(笑)。なんせ約2万4千人が一度に退場するのでそう簡単に行くはずはないんですよ。会場からシャトルバス乗り場まで結構距離はあるし、けれど人数が多いのでなかなか先に進めないし、当然バスにもすぐには乗れないし。しかしシャトルバスの乗降を見てたら、大阪だけでなく京都や奈良ナンバーのバスも多数。改めてすごいイベントだったんだなあとしみじみしました。で、終演からシャトルバスに乗ってコスモスクエア駅に着くまでなんと2時間以上!宿に着いたのは23時過ぎでした。つ、疲れた……。

まあそんな感じですのでもちろん日帰りなどできるはずもなく、この日はなんばで1泊。泊りがけで大阪にいるのってすごく久しぶりです。とはいえ疲れはたまったままなので、翌日の日曜日もあちこち観光するような体力もなく(同行者共々BBAなので……笑)、午前中にちょっと買い物をし、午後からはカラオケ行ってそれから帰ったのでした。ちなみにカラオケは2時間ぶっ通しでユニゾンしか歌っていませんでした(笑)。

20190729チーズケーキ

おまけ。旅行中に食べた「生クリーム専門店milk」のチーズケーキ……のはずなんですが、完全に生クリームに覆われているので、その境界線がまったくわかりませんでした(笑)。しかしとっても美味しい。なめらかな生クリームと、ちょっと固さのあるチーズクリームの食感がたまりませんでした。


*ここ1週間の購入本*
山田南平「恋するMOON DOG 1」(HCスペシャル/白泉社)
中村明日美子「王国物語2」(ヤングジャンプコミックス・ウルトラ/集英社)
よしむらかな「ムルシエラゴ15」(ヤングガンガンコミックス/スクウェア・エニックス)
三田誠「ロード・エルメロイ2世の事件簿4 case.魔眼蒐集列車(上)」
雪乃紗衣「彩雲国物語 八、光降る碧の大地」
篠原悠希「妖星は闇に瞬く 金椛国春秋」(以上、角川文庫/KADOKAWA)
青木祐子「これは経費で落ちません!〜経理部の森若さん〜6」(集英社オレンジ文庫/集英社)
織守きょうや「少女は鳥籠で眠らない」(講談社文庫/講談社)
喜多喜久「化学探偵Mr.キュリー4〜8」(中公文庫/中央公論新社)
千早茜「神様の暇つぶし」(文藝春秋)


大学院生として民俗学を研究している名鳥歩は、フィールドワーク中に山で迷子になってしまう。鼬に襲われていた白蛇を助け、逃がしてやった歩は、そのまま山中で一夜を過ごそうとするが、そこに着物姿の白髪の少女が現れ、「山の主に見つかる前に」と歩の手を引いて山から連れ出してくれるのだった。しかしその直後から、歩の周辺でおかしな出来事が頻発。研究室が激しく荒らされたり、自宅前に烏の死骸が置かれていたり……という話を聞いた担当教授は、歩に「怪異喰らい」と呼ばれる青年・朽木田千影を紹介する。先日のフィールドワークが原因だと考えた歩は、渋る千影と共に再び福井の山へ向かうことに。すると千景は、歩が迷ったというその山に蛇が巻き付いていることを示唆し……。

第1回富士見ノベル大賞・審査員特別賞受賞作。山神に呪われた大学院生と、「怪異喰らい」と呼ばれる謎の美青年が、山村に潜む因習の謎を解き明かすオカルトミステリ長編。

図らずも「山の主」である蛇神に呪われ、「そのままだと死ぬ」とまで言われてしまう主人公の歩。しかし呪いや死に対する恐怖はさておき、「呪い」そのものに対する民俗学的興味は捨てきれなかったり、あるいは他者に対する情が深いせいで、自らピンチを呼び込んでしまうことも。一方、「怪異喰らい」と呼ばれ、どうしてか怪異をその通り「喰らう」能力を持つ青年・千影は、そんな彼のために山神を喰らうことになってしまう。明らかに人間嫌いというか、周囲との関わりを持つことを避けようとしている彼が、なぜ報酬さえあれば(しぶしぶではあるが)その能力を発揮しようと考えるのか。そして図らずも歩が「視て」しまった千影の「過去」は何を意味するのか――そもそもなぜ歩は、他者の記憶を無意識のうちに覗くことができたのか、という点も気になるが――、そんな謎を垣間見せつつ、物語は蛇神と、その神を祀っていたはずの神山家との因縁へと移ってゆく。

想像以上に重い因縁に驚きつつも、講評の通り先の読めない展開のおかげであっという間に読み終わってしまった本作。お人好しだがそれだけでもない歩と、冷淡なようでいて少しずつ心を許してくれる(ような気がする)千影のコンビっぷりがなんとも楽しいので、ぜひ続編を希望したい。

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