退出ゲーム退出ゲーム

角川グループパブリッシング 2008-10-30
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高校1年生の秋。文化祭実行委員を務めるチカは、わけあって最近登校拒否気味の幼なじみ・ハルタを訪ねる。実は文化祭の準備中、化学部所有の硫酸銅の結晶が、ちょっと目を離したすきになくなってしまったのだ。劇薬でもある硫酸銅が盗まれたとあっては、文化祭の中止は必至。それを阻止したいチカたち実行委員は学校中を探しまわるが、見つかるはずもない。そこでチカは、頭の回転の速いハルタに推理させようと試みるが……。(「結晶泥棒」)

「野性時代」に掲載された3本に書き下ろし1本を加えた、「日常の謎」型学園ライトミステリの連作短編集。幼なじみであり、廃部寸前の吹奏楽部の部員同士でもあり、そしてなぜか恋のライバル(!?)でもあるふたりが、様々な事件や謎を解決し、その謎に悩まされてきた同級生たちを救っていく。

探偵役のハルタがボケて、助手役の(というほど「助手」でもないかもしれないが……)チカがツッコミ役というノリとテンポの良さもさることながら、他の登場人物たちもなかなかひとクセふたクセある「馬鹿ばっか」という、ややラノベっぽい展開も楽しい。

サックスの得意な同級生・マレンを演劇部から自分たちの吹奏楽部に転部させたいハルタとチカが、演劇部部長と看板女優のコンビに即興劇で挑む表題作「退出ゲーム」もいいが、頭はいいのにバカな発明部員の兄弟が起こした事件が、思いがけない過去を暴くことになる「エレファンツ・ブレス」も面白い。コメディとシリアスの間をものすごいスピードで行ったり来たりするが、物語は無理なくスムーズに展開させていく、その力量も素晴らしい。