レアリアI (新潮文庫)レアリアI (新潮文庫)
雪乃 紗衣

新潮社 2014-08-28
売り上げランキング : 625

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
帝国と王朝が長い間争い続けている世界。かつて帝国の「鳥かご」にはふたりの少年とひとりの少女が囚われており、3人は「鳥かご」からの解放を望んでいた。それから数十年経ち、ふたりの少年は帝国と王朝それぞれの王に、少女は帝国の軍事を担う魔女将軍になっていた。魔女――オレンディアは国防に努める傍ら、養女のミレディアを帝都へと送りこむことを決める。それはミレディアを次期皇帝候補に嫁がせてその候補を後見するためであり、さらには来るべき王朝との休戦協定終了後について、皇帝ユーディアスに最後通牒を突きつけるためであった。当初は結婚話を拒んだミレディアだったが、最終的にはオレンディアの意を汲み帝都へと向かうことに。ミレディアを慕う「ツギハギ部隊」最後の生き残りであるレナート、そしてオレンディアの部下でもある「死神」ギィと共に帝都へと向かったミレディアだったが、道中、そして帝都でもその命を狙われており……。

その出自が不明な「小魔女」ミレディアが過酷な運命に身を投じることになる、本格大河ファンタジー1巻。

時系列が交錯する物語の中で語られるのは、オレンディアたちの過去とミレディアの過去、そして現在の出来事。とりわけミレディアはその出自からして謎だらけだが、唯一の心のよりどころとなっていたのがアキなる青年の存在だった。ミレディアがオレンディアの義弟ミルゼリスに拾われるよりさらに前、この世のものとは思えぬほどの美貌の青年が現れ、幼いミレディアを救っていた。少女にミレディアという名を付けたのはその青年であり、青年にアキと名付けたのはその少女だった。だがある時姿を消してしまったアキは、思いがけない姿で成長したミレディアの前に現れ、そして彼女にあらゆる絶望を突き付けて帝都へと舞い戻っていく。

物心ついたその瞬間から何も持っていなかった少女は、青年と出会うことで「ミレディア」となった。その後オレンディアに育てられ、ツギハギ部隊の面々に慕われ、ミレディアは自分を愛してくれる人々を心から愛してきた。そしてなによりも、アキのことをただひたすらに愛してきた。だからこそ、その裏切りに――アキの理由は、真意は分からないけれど――、ミレディアのアキへの愛は憎しみへと変わってゆく。否、純粋な想いは結局、愛だと憎しみだとか、ひとつの名前は付けられないのだろう。今でもミレディアはアキを愛しているし、同時に自分の手で殺したいとも願っているのだ――そしてきっと、アキも。そんなミレディアが出会ったのが、次期皇帝候補として擁立された謎の少年の存在だった。

オレンディアの――ミレディアの存在がなければその立場は途端に危うくなってしまう少年。そして帝位継承争いに負けてしまってもやはり死ぬしかなくなってしまう少年。そんな少年に幾度となく助けられたミレディアは、戸惑いながらもその手を取ることになる。しかし同時に、彼を巻き込まないように、いつか手を放す決意も固めていた。休戦以前の状況や休戦中の国内の権力闘争によって疲弊している帝国が、王朝に勝てる見込みはほとんどないとオレンディアは告げる。しかしそれを覆すための策を皇帝は退けた。もはや勝ち目のない戦争を前にして、ミレディアは抱えきれない程の絶望のただなかにいた。からっぽだったミレディアの中に降り積もった絶望は、彼女を絡め取る。しかしミレディアが歩みを止めることはできない。その先にあるのがアキのうつくしい微笑と奈落の底だとしても、それでも。