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まさか前巻が出て1年以内に続きが読めるとは……としか言えないシリーズ最新巻。人類と魔法士の共存を願っていた真昼が斃れたことで、これまでの交渉はすべて水の泡。ついに人類と魔法士、それぞれの存亡をかけた全面戦争へと突き進んでゆくことになる。
魔法士のために人類を殲滅すると告げるサクラ。そうして開かれた戦端のさなか、他の魔法士たちはしかしサクラほどに割り切ることはできない。セラは殺し合いなどしたくないと思っているが、他の解決策も見当たらず、誰にも自分の気持ちを伝えられずにいた。ディーも本心ではセラと同意見だが、そのセラを守るためにはサクラに同意せざるを得なかった。シティ側に与したままのイルやファンメイ、エドは、自分の周囲にいる人たちのために、サクラの意見には賛同できずにいた。祐一やヘイズ、クレアは人類と魔法士の共存の道を探るため、「世界再生機構」としてシティと賢人会議双方の妨害を続けようとしていた。そして兄を失った錬は、未だ失意のうちにいた――かつてシティ・神戸を滅ぼしてまでフィアを救ったことすら、疑問のひとつとして数えながら。
本当にどうしようもないこと――そうとしか言えない、不幸な条件が重なって引き起こされた状況。それは現在も、そしてかつてアリス・リステルがその命を賭した「大気制御衛星暴走事件」の真実もそう。一度突き出した拳を引っ込めることは誰にもできない。だからシティと魔法士は相争い、そしてこの期に及んでまだシティ上層部は利権を巡って争い続ける。ヒトがいる限り争いは止まないのだと、そう突きつけられるような展開にはどこまでも救いがない。腹を括ったサクラとは対照的に、今も迷い悩み続ける錬はこの先どんな結論に行きつくのだろうか。そしてクレアが感じた、サクラの宣戦布告に対する違和感――これが意味するものは一体何なのだろうか。
◇前巻→「ウィザーズ・ブレイン8〈下〉落日の都」
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