偉大なる大元帥の転身3 行きて、帰りし英雄譚 (ファミ通文庫)
竹岡 葉月
KADOKAWA/エンターブレイン
2016-07-30

学院で半期に1度設けられる長期休暇、その開始前にもたらされたのは、イリスの「白の腕」へのスカウト話、そして成績不良のケータに対する退学勧告だった。それを知ったライラはケータを首都にある実家に招き、付きっきりでの特訓を申し出る。折しも首都「水晶府」では、先の学院での騒動に関する交渉会議が人類と魔族との間で行われようとしており、魔王軍四天王のベスティアリは、ケータに「ヴェーレス」としての参加を要請していたが、ケータはこれを拒否。しかしライラと共に向かった首都で、ベスティアリと、同じく四天王であるリンドヴルムの到着場面に出くわしてしまい……。

落ちこぼれ召喚士見習い、ついに退学!?それとも!?なシリーズもこれにて完結。ケータがなぜこの世界に召喚されたのか、そしてどこに「帰る」ことができるのかが焦点となる3巻。

というわけで今回はついに、ケータが召喚された真相が明かされる。まあずいぶん身勝手な理由なわけで、巻き込まれた本人としては憤懣やるかたないどころか、といった真相だったのだが、その召喚を企てた人類側――ライラの叔父・ルクスをはじめとする面々にとっては死活問題でもあったということで、なかなか難しい問題。しかしその代償はケータにとってあまりにも大きいもので――彼がこの世界に無理矢理来させられたという点以外に、もうひとつ重要な目的があった――、それはケータが我を失うまで怒り狂っても仕方ないものだった。

そこでそんなケータを救うのは一体誰?というのが、今巻のもうひとつの見どころ。ヴェーレスに恋するイリスか、ケータ本人に惹かれているライラか、あるいはいっこうに姿を見せない魔王フードゥーか。その結末は読んでからのお楽しみにというところだが、とにかくサブタイトルの「行きて、帰りし」というフレーズがこれほどまでにぴったりくる物語になるとは思ってもみなかった。


◇前巻→ 「偉大なる大元帥の転身2 勇者と炎上トーナメント」