元・竜砲騎士マデリーンの転職 (ファミ通文庫)
佐々原 史緒
KADOKAWA/エンターブレイン
2016-08-30

小さな港町でボロい宿を経営していたルイジアが亡くなった。葬儀の直後に現れた借金取りに追われ、義理の息子・ラザロは窮地に陥る。しかしそこに文字通り「降って」きたのは、金髪碧眼の美女だった。マデリーンと名乗る彼女ははるか北の国からやってきたルイジアの姪で、生前の叔母の手紙を頼りに、職を辞してルイジアの宿を手伝うつもりなのだという。借金のカタに宿を売り払おうとしていたラザロだったが、真剣そのものなマデリーンの勢いにのまれ、宿の再興を目指すことに。しかしこのマデリーン、世間知らずにもほどがあると言うくらいにズレており、家事はおろか自分の服さえ脱ぎ着できないといった状態で……。

新シリーズは元女騎士の細腕(?)繁盛記(予定)。

口調も態度もしっかり堂々としているのに、いざ動かしたらどこまでもポンコツなヒロインのマデリーンにはとりあえず笑わせていただいた。とにかく服はまともに脱げない&着れない、お茶も入れられない、掃除をさせれば窓は割りカーテンは破り布団はぺしゃんこ。ただでさえボロ宿だった「ルイジア亭」が、借金取りの銃撃やマデリーンの墜落もあって、ますます廃墟じみてくるという状況にはもはや笑うしかない、といったところ。しかし「愛と癒しともてなし」を掲げて宿を再興させようとするマデリーンの奮闘ぶりはほほえましいし、そんなマデリーンを見つめるラザロのツンデレっぷりも可愛らしい。

しかし宿やマデリーンを取り巻く環境はわりと厳しく、今巻ではとりあえず問題は落着したかに見えたが、先行きはまだまだ不安だらけ。マデリーンとラザロの関係もどうなるのか気になるところ。……まあ本音を書くとマデリーンを取り合うベルタ(町一番の美人)とレティシア(マデリーンに憧れる軍の後輩)との三角関係の方が気になるといえば気になるのだが(笑)。