最近リーベルの常連となった沖名は、自称「売れない小説家」。霊媒師の噂をどこからか聞きつけた沖名は、ネタのためにアーネストに接触しようとしては佐貴に断られる日々。しかしある時、沖名はとあるアパートの大家だという老人・大槻を連れて来店。なんでも大槻のアパートには、入居者が決まって同じ「池の夢」を見てしまう部屋があるのだという。ふたりの押しの強さに断りきれなかった佐貴は、地守家でホームステイ中のアーネストを伴い、そのアパートを訪ねることに。すると誰も住んでいないはずのその部屋に、気を失った少女が横たわっていた。しかも佐貴とアーネストには、その少女が人形を抱きしめている幻が見えていたのだ。この件に三神が関わっている可能性を否定しきれないふたりは、やがて意識を取り戻し、身元が判明した少女の実家を訪れるが……。

講談社タイガにレーベルを移してのシリーズ4巻は、記憶喪失の少女と、彼女の実家で奉られている「人魚」を巡る展開に。

アパートで発見された少女・汐見聖蓮は記憶喪失だが、その歌声にはアーネストのヴァイオリン同様、浄化の力が備わっているという。まずこの時点で謎なのだが、彼女の実家である汐見家にはさらに不可解な点が。聖蓮の父親の不審死、祖母が信仰する「人魚」の存在と淀んだ池、そして聖蓮が行方不明となった時期と前後して、汐見家の池で死んでいたフリーライター。聖蓮はなぜ大槻のアパートで倒れ、記憶を失ったのか。その部屋で見られるという夢に出てくる池が汐見家の池であるのはなぜか――その部屋にかつて住み、病死した辻と汐見家の関係は。――などなど、謎ばかりがどんどん増えてゆく中、アーネストのヴァイオリンが壊されるわ、一方で三神はまったく姿を現さないわで、なにやらこれまでの事件とは雰囲気が異なる展開に。

そんな中、ヴァイオリンを壊されたことで自棄的になるアーネストに対し、佐貴が思いがけず強く反発するという流れが印象的。これまで以上にアーネストに踏み込んでゆく佐貴からは、かつて三神の告げた「呪い」をはねのけようとする強い思いが感じられて、ふたりの関係の変化を強く認識させられる。そしてそれを受け入れたアーネストも、以前より強くなったと思わされる。しかし同時に、三神のアーネストに対する「執着」の強さも浮き彫りとなる結果に。事件は解決しても、不穏さは晴れないラストがなんとも苦い。


◇前巻→「雪に眠る魔女 霊媒探偵アーネスト」