英一の弟・光が、小暮写眞館に出るという前店主・小暮氏の幽霊について気にしているらしい。見かねたテンコが写真ソフトを使って小暮氏の心霊写真を作り、それを光に渡していたことを知った英一は、光の意図をはかりかねながらも、まずは小暮氏の写真をテンコに提供したST不動産の社長・須藤のもとを訪れる。しかし英一の抗議をあっさり受け流しながら、須藤は英一にある写真を渡すのだった。それはとあるフリースクールでの誕生日会の風景だったのだが、その背景によくわからないふいぐるみのようなものが写りこんでいたのだ――ただし、それは明らかに合成されたもの。この写真を撮影し、プリントアウトした少年・牧田は、このぬいぐるみを「カモメ」だと言い張っているのだという。クラスの人気者で成績優秀、いじめの事実もないはずなのに不登校だという牧田少年に何らかの事情があると考える英一だったが、その事情がまったくつかめない。しかし調べを進めていくうちに、この「カモメ」が登場する映画の存在が明らかになり……。

今回も謎の写真を前に奔走することになるシリーズ3巻。本筋はもちろん、「カモメ」の写真と牧田少年の真意を探るという展開なのだが、それ以上に気になるのは光と垣本さんの件。

まず光の方は、なぜか小暮氏の幽霊に会おうと行動を起こし始めている件。実は今巻中で花菱家に泥棒が入るのだが、未遂に終わり逮捕された犯人は幽霊を見たというのだ。やっぱりここに小暮氏の幽霊はいるんだ……ということで、ふたりは小暮氏の娘を訪ねることに。そこまではまあいいのだが(その話を受け入れてくれる小暮氏の娘もなんというかすごいと思う)、最後まで疑問が残るのは、なぜそこまで光が小暮氏の幽霊の実在に執着するのかということ。英一は薄々気付いているようだが、光は小暮氏の向こうに、亡き姉――つまり英一にとっては妹――の風子を見ている。幼い頃に病死した風子の存在は、一見明るく楽しい花菱一家にとって、確実に深く刺さり抜けない棘となってそこにある。だが、いったいなぜそこまで彼女の死が問題なのか――前巻でも描かれていたが、母・京子は光に対して、時折過剰なまでの過保護ぶりを見せることがあった。幼い娘を亡くしたことのある母親の対応としては仕方ないとは言え、そこには何か別の問題があることが英一のモノローグから示唆されている。おそらく次巻で明かされるであろうその過去が気になって仕方ない。

一方、垣本の存在もまた、今なお英一に爪痕を残しまくっている――いい意味でも、悪い意味でも。前巻で線路に飛び込んだ――本人は「電車を真正面から見たかっただけ」と言い張るが――そのあとで、英一は垣本が家族との間に何らかのトラブルを抱えていること、そして時折自殺めいた事態を起こしていることを、須藤から聞かされていた。しかし一方で、他人との関わりを持ちたがらないという垣本が、なぜか英一には興味を示しているということも判明する。今回の依頼を通じて距離が縮まりつつある英一と垣本の関係がどう変化していくのか――垣本は自身の「問題」から抜け出すことができるのか。このどこか危なっかしいふたりからも目が離せない。


◇前巻→「小暮写眞館2 世界の縁側」