夜見師2 (角川ホラー文庫)
中村 ふみ
KADOKAWA
2017-07-25

「夜見師」である多々良の助手として怨霊を封じた箱を一緒に始末することになった五明輝。しかし怨霊たちに肩入れしすぎるせいで危険な目に遭っては多々良に叱られ、気まずくなるというのを繰り返していた。さらにその頃、多々良の唯一の友人である雪乃の紹介で、彼女の甥である京也が頻繁にやって来るように。民俗学や祟り、呪いといった方面に興味を持つ京也は、将棋やチェスの相手をすることで多々良と親しくなり、「夜見師」について探ろうとしていたのだ。そんな京也の振る舞いに苛立ちを覚えつつも、多々良を怒らせてばかりの輝は、彼に居場所を奪われそうな気さえし始めていた。しかもそんな折、雪乃がフィールドワーク先から中にとんでもない怨霊が封じられているという箱を持ち帰ってきて……。

箱に封じられた怨霊を始末する「夜見師」多々良と、その助手をすることになったお人好しすぎる青年・輝の活躍を描くオカルト長編、第2弾。

名実ともに(?)多々良の助手となった輝だが、そんな雇い主との関係は一進一退。どうしても怨霊の過去を見るうちに彼らに肩入れしては簡単に自分の身体を貸したりして自身も危険な目に遭うのだから、「夜見師」という役割そのものをよく思っておらず、また他人を巻き込むことを厭う多々良が怒るのも無理からぬ話。輝もわかってはいるけどつい……と反省の色が見られないというか、生来の性格は変えられないというべきか――というわけでふたりの関係は平行線。一方で、その身の上ゆえか(だってもう死んでるのだから!)、自身のことに頓着しない多々良を見るにつけ、心配を募らせる輝。単純にお互い心配し合ってはいるが、それを素直に伝えられないから喧嘩になるという、なんというかごちそうさまでした……としか言えない関係は見ていてなんとも微笑ましい。雪乃の甥・京也と「多々良の助手」の座を巡ってライバル心を燃やしてみたり、先代の助手である「バニラさん」こと野際氏に会って多々良の思い出話を聞いたりという輝の行動を見ていると特に(笑)。

一方で、今回も彼らが開ける「箱」は悲しい物語を秘めたものばかり。特に今回は、多々良家に住む幼女の幽霊・ホノの正体がわかるという展開に。そして同時に、今回はホノをこの屋敷に連れてきた多々良の叔父・光比古のエピソードも語られている。憧れの存在であったのと同時に、「夜見師」にならずに死んでいった叔父に複雑な想いを抱いていた多々良だが、きっと輝との暮らしの中で彼も救われるのではないだろうか――救われてほしいと、そう思った。


◇前巻→「夜見師」