高輪署に所属していた頃の上司・高木の家を訪れた由起谷。かつては万年巡査部長と呼ばれていた高木だったが、由起谷が彼の下に就いたその半年後から、異例とも言えるほどの出世を遂げていた。しかし刑事部捜査一課の管理官に着任した矢先に病に倒れたのだという。特捜部に入ったにも関わらず、以前のように分け隔てない態度で接してくれる高木に尊敬の念を抱いていた由起谷だったが、そこに同じく高木の部下である山倉と浅井が見舞いにやって来る。山倉は高木がかつて関わった未解決事件――当時の管理官が重要な物証を無くしたという噂があった――について話し始める。やがて高木の家を辞した由起谷だったが、不意にあることに気付いて引き返し……。(「火宅」)

SF警察小説シリーズ第5弾は、シリーズ初の短編集。2010〜2014年に様々な媒体に発表された短編8本が収録されている。とはいえ作者によればこれらは番外編ではなく、本編エピソードとして位置づけられるとのこと。

表題作の「火宅」は、捜査主任である由起谷がある事件の真相にたどり着くミステリ仕立ての短編。他にも特捜部の活躍を描く「焼相」「輪廻」、ライザと沖津の出会いを描く「済度」、ユーリが民警時代の未解決事件をヒントに現在の事件を解決する「雪娘」、由起谷の下関時代(地元でも有名な不良だったらしい)を描く「沙弥」、宮近理事官の忙しすぎる日々を描く「勤行」、そして珍しく沖津が強引な捜査に踏み切るという緊迫した展開を見せる「化生」――というように、バラエティに富んだ内容となっている。

いつも通りの話が続いたところで、仕事に追われすぎるせいで妻子にそっぽを向かれそうになる父親・宮近の描写がなんだかコミカルな「勤行」でほっと一息……と思ったのも束の間、ラストの「化生」でまたしても持っていかれる感がある。特捜部が追っていた人物が進めていた研究は、龍騎兵のシステムに限りなく近付いているシロモノだった――つまり実用化・量産化すればさらなる世情の悪化を招くであろう技術が、5年どころかもう目の前まで迫ってきている可能性があるという事実。沖津の焦燥は当然だろうが、やはりここで気になるのはその龍騎兵の出どころ。おそらく沖津は知っているのだろうし、それが彼の正体だとか特捜部設立の目的だとかにも繋がってくるのだろう。〈敵〉の正体や狙いと同じくらい、特捜部の存在そのものが謎めいているという状況には改めて慄然とさせられた。


◇前巻→「機龍警察 未亡旅団」