経済産業省が中国黒社会とも強い関係があるフォン・コーポレーションと手を組み進めている、新世代量子情報通信ネットワーク開発事業「クイアコン」。これに関わる人物が立て続けに殺されていることに気付いた警察は、殺人を担当する捜査一課、知能型犯罪を担当する捜査二課、そして特捜部の合同体制で捜査に当たるが、現時点で判明している被害者たちの立場や肩書には共通点がなく、犯人がどのような目的で対象を選別しているのかがわからない。しかも調査を進めるにつれ、公的機関を含めて様々な組織がこの事業に関わっているためにその全貌を解明することすら容易ではなく、なおかつ「上」の方から次第に圧力がかかるようになっていた。そんな中、これまでの被害者に、バチカンで土産物として売られている歴代教皇のカードが送り付けられていることが判明。さらに殺害時の手口から、犯人が「狼眼殺手」と呼ばれる元IRFの処刑人、〈銀狼〉エンダ・オフィーニーであることがわかる。しかし彼女は、技術主任の鈴石がかつて遭遇し家族を失った大規模テロの実行犯であり、その際に巻き添えで死んだはずで……。

SF警察小説シリーズ第6弾。今回は機甲兵装や龍騎兵は登場しないのだが、日本という国そのものを揺るがしかねない大規模な疑獄事件を特捜部の面々が追うという、これまで以上に緊迫した展開に。

今回の敵は公的事業を隠れ蓑にしながら私腹を肥やし、しかしこれまで手を出せなかったフィクサーや政治家たち――ということもあり、これまでの対立を(表向きは)水に流して協力しあう面々。けれど相手が相手ということもあり、捜査すればするほど袋小路に迷い込んでしまって出口だけでなく入口すら見当たらなくなってしまった……という事態に陥ることに。さらに目的も何もわからない凄腕の殺し屋も相手ということで、まさに手探りとしか言いようのない状況。警察内外からのプレッシャーは半端ではなく、なおかつ特捜部にはエンダと因縁のあるライザを抱えてるわ、城木理事官はスパイになるよう誘われていて逡巡してるわで、まさに地雷原の真っただ中といった具合。帯に「追いつめられた沖津特捜部長は〜」という文言があって、読む前は「沖津さんが窮地?そんなことあるわけないでしょ……」と半信半疑だったのだが、実際は追い詰められるどころかこのままでは特捜部の存続自体が危うくなるのではという展開には、胃が痛くなるような気さえしてきた。

しかし今回の案件で、特捜部の面々の意識も前より確実に変わりつつあった。その中でも最たるものが夏川・由起谷の捜査主任コンビと、鈴石、そしてライザ。夏川と由起谷は、これまでは仲間とはいえ「部外者」とみなしていた3人の部付警部たちを認めつつある。鈴石は窮地をライザに救われ、かつ自分もライザの窮地を救ったこと、さらにライザが亡き父の著作を読んでいたこともあり、彼女に対する気持ちが大きく揺らぎ始めていた。そしてライザは鈴石の父親の著作を読んだことで、キリアンやエンダとの違いと自分の変化――あれだけ嫌悪していた「警察官」に自分がなりつつあること――に気付き始めていた。前巻の「化生」でも示唆された、龍騎兵の根幹を成す「龍骨−龍髭システム」の研究が予想以上に進んでいるという暗澹たる事実、そして「クイアコン」を止められないという現実の中で、わずかではあるが救いとなるエピソードだと思った。


◇前巻→「機龍警察 火宅」