天の島と地の島を統べる「右記ノ國」には、禍神から国を守護する半人半竜の4柱の竜王が存在している。地上の里で海女として暮らしていた天涯孤独の少女・紗良は、その竜王の世話係――「神奴冶古」として召し上げられてしまう。簡単に命を落としてしまう過酷な任務と聞かされていた紗良だったが、竜王の世話と言っても他の式神たちがほとんどの雑事をこなしてしまい、紗良がすべき役目は龍王たちの身の回りの世話くらい。衣食住完備で他の使用人たちとは異なるその待遇に、紗良はただ首を傾げるばかり。しかも彼女を召し上げた由衣王を始めとする竜王たちはそろいもそろって人間嫌いだというが、冷酷な言動とは裏腹に、どことなく紗良の体調や心情を慮るような振る舞いを見せていて……。

新作はひょんなことから竜王の世話役となってしまった少女が波乱の運命をたどる中世和風ファンタジー。

文字通り雲の上の存在のお世話をすることになったヒロイン、ということで、これまでの作風から考えると、彼女にどんな過酷な試練が待ち受けているのか……と身構えていたのだが、少なくとも今回は紗良がそこまで痛い目に遭うことはないのでとりあえずひと安心。そんなことより(?)注目したいのは、彼女を取り巻く竜王たちの存在。言動は冷たいし思いやりのかけらもない感じなのに、内容を深読みすればするほど、彼らの発言は紗良への思いやり(ちょっと斜め上な部分もあるが)に満ちている。メンタリティの違いというのもあるだろうが、それにしても度を越した甘やかし&甘えっぷりにはついニヤニヤが止まらなくなってしまう。そんな彼らの振る舞いに、里から引き離され閉ざされていた紗良の心も次第に温かさを取り戻すという流れがとてもいい。

とはいえ、現時点で竜王たちの紗良に対する想いは「か弱いもの」に対するいわば庇護欲的な感情であり、まだ愛情ではなさそうだし、それは紗良の方でも同じなのだろう。終盤で紗良の立場が思いもよらぬ方向へと向かったことで、ここからは彼女の争奪戦が始まりそうな予感。なのでぜひとも続編希望!ということでひとつ。