平民から異端審問官にまで成り上がってきた青年司祭ジルベールは、黒魔術を用いて領民の娘たちを殺したとされるヴォワール辺境伯レオンを告発。権力に守られた貴族を裁く絶好のチャンスと意気込んでいたジルベールだったが、そんな彼の前に立ちはだかったのは、軍務大臣エドウィージユ侯爵のご令嬢である錬金術師・マリーだった。再調査を命じられたジルベールは、しぶしぶマリーを伴い現地へと向かうが、融通の利かないマリーはジルベールの思惑とは裏腹に、レオンが黒魔術を行使していないことを示す証拠を次々と見つけてしまい……。

それぞれ過去に訳ありな異端審問官&錬金術師のコンビが貴族の犯罪を暴き出すミステリ系ファンタジー。

レオンの罪を立証したいジルベールと、あくまでも錬金術学的見地から真実を追究したいマリー。最初は平行線なふたりだったが、ジルベールがマリーの過去を知ったことで関係は一変。貴族令嬢なのに「趣味で」錬金術に手を出し、あまつさえ人の顔が判別できないなどとうそぶき空気を読まないKY令嬢――というのがジルベールのマリーに対する印象だったが、それらにはすべて重すぎる理由が存在していたのだ。幼い頃に遭遇した凄惨な出来事のせいで、他者を認識できず、ゆえに他者との関係をうまく構築できないマリーの苦悩が、ジルベールの存在によってわずかずつではあるが和らいでいくという流れにはほっとさせられた。

事件の真相やその暴き方にはややすっきりしないところもあるが、ジルベールが思いのほかマリーを表でも裏でも守ろうと奮闘している姿がなんともいい。しかしこれで付き合っていないとは!ということで、ふたりの関係が微妙過ぎるので(お互いにかなり意識はしているみたいだけど……)、その後のふたりもぜひ見てみたい。