バビロン 3 ―終― (講談社タイガ)
野崎 まど
講談社
2017-11-21

新域で発令された「自殺法」を採用する都市がいくつか出始めた。そんな中、アメリカにてサミットが開催されるのとまったく同じタイミングで、新域にて「自殺法」を受け入れた都市の首長たちによる「自殺サミット」を開催することを齋が宣言。各国首脳は否応なしに、それぞれの立場や意見を携え「自殺」の是非について討論を始めることに。一方、正崎はFBIと接触して渡米し、サミット前に大統領と接見する機会を得る。FBIもまた、正崎が示唆している、超常的な力を使って人を操る女――曲世愛の存在を認め始めており……。

ひとりの女が世界を狂わせてゆくサスペンスシリーズ、3巻。

たったひとり生き残った正崎はすべてをなげうって渡米し、FBIの捜査官になることを希望する。その理由の最たるものが「銃器の携行が認められること」――つまり彼は曲世を殺そうと考えていたのだ。そんな彼の狂気をもはらむ危うさに気付きつつも、米国大統領はその願いを受け入れ、なおかつ「必ず家族のもとへ戻ること」を命じるのだった。そして一方で、サミットでは当初の議題をすべて放り出し、とにかく「自殺法」――ひいては自殺の是非について討論を尽くす首脳陣。やがてそれは自殺そのものではなく、それを「善」か「悪」かと判じる基準、つまり「善悪」そのものの意義について、国家の首長ではなくひとりの人間として考えを巡らせ始める。――と、ここまでが今巻の大半の内容で、これがうまくいけば何か解決策が得られるのではないかと、そう思っていた。しかしその考えは甘かった。ラストのたった10数ページで、物語はまたしても絶望へと向かってあっという間に転がり落ちていく。

善とはなにか、そして悪とはなにか――そして導き出された答えに、曲世が嫣然とした笑みを浮かべるさまがありありと思い描けるような最悪の結末。作中で「ファム・ファタール」「villain(悪人)」「大淫婦バビロン」などと称された曲世。彼女が破滅へと導いているのは世界そのものなのだろうか。そしてそこに、理由など本当にないのだろうか。


◇前巻→「バビロン2−死−」