百万光年のちょっと先 (JUMP j BOOKS)
古橋 秀之
集英社
2018-02-02

家事全般を担う旧式の自動家政婦が寝物語に語るのは、「すこしふしぎ」ないくつものお話だった――例えば宇宙船の前に現れた死神の話。培養された受精卵を人工子宮ごと格納した「まだ生まれていない兵士」たちの戦争の話。目に付く星を喰らっては知識として自己の中に収めていく究極の百科事典と、ポケットの中に納まるポータブル百科事典との対決の話。見た目も性格もすべてが好ましい青年が、恋人と結婚するにあたり「身の丈ひとつ」になろうと借りていたものを皆に返していくお話……これらはすべて、百万光年のちょっと先、今よりほんの3秒むかしの物語。

2005〜2011年にかけて「SF Japan」に掲載されていたSFショートショートの書籍化。書き下ろしを含む全48話が収録されている。

「百万光年のちょっと先、今よりほんの3秒むかし」という出だしで始まる、すこしふしぎな物語の数々。SF的な設定に満ちているものもあれば、ラブロマンスあり、おとぎ話ありといった、バラエティに富んだ内容となっている。個人的に気に入ったのは、胎児を兵隊とする戦争で起きた奇蹟(?)を描く「卵を割らなきゃオムレツは」、タイトル通りその身ひとつで恋人のもとへ向かう「身の丈ひとつで」、10億個の恒星を管理する男性のもとにやってきた少女の正体が驚きの「十億と七つの星」、自分以外の人間の存在が許せない高慢なお姫様の顛末を描く「首切り姫」、パンがバターを塗った面を下にして落ちることからまさかのアイディアが生まれる「パンを踏んで空を飛んだ娘」の5編。どれもこれもユーモアと奇想に満ちていて、最後まで楽しく読めた。