「哀しみ」を得たことで契約違反とみなされ、トーリが死んだ。しかしかねてから浅間が行っていた「仕込み」、そしてトーリが先日松平・元信の襲名権を得ていた事実を利用し、浅間とミトツダイラがトーリを復活させるため黄泉へと向かうことに。一方、儀式で騒ぐ地上武蔵の様子をうかがっていた羽柴勢。そんな中、武蔵勢へ強襲をかけようとする真田・信繁の前に真田・信之が、そして前田・利家の前には佐々・成政が立ちはだかり……。
シリーズ10-下巻はまさに「再起」の巻。またしても本文1000ページ超えで、武蔵勢が再び立ち上がり立ち向かうという展開に。
先だってついにホライゾンと結ばれたトーリだったが、今回はなんと黄泉にて自身の再起をかけて浅間&ミトツダイラと――!というのっけから濃すぎる展開でお送りされてしまう今巻。ふたりの懸命のあれこれ(以下略)のおかげで再生には成功したものの、他の神々の介入により現世への引き戻しが混迷を極める中、やってくれるのが賢姉・喜美。神をも捕らえねじ伏せるその底力はすさまじく、なんというかやっぱり彼女がシリーズ内最強キャラなのでは……と驚愕を禁じ得ない(笑)。
その一方で久々に登場したのが前田・佐々の同級生(?)コンビ。前田にはまだ襲名者としての「この先」があるが、佐々にはもうほとんど残されていないという事実を認めつつ、これを終わらせたくない前田と、終わらせるべきと考える佐々の激突はまさに壮絶といっていいもので、佐々の真面目さが最後の最後まで発揮されるいいエピソードだった。ちゃんと不破が止めに入ってくれるという結末もさすが。
そして後半は武蔵勢と羽柴勢の再戦。前は羽柴勢の後出しっぷりに憤慨したものだが、ちゃんと武蔵側にも新装備が用意されていてほっとひと安心。再び母と娘たちの対決が繰り広げられることになるのだが、娘側である羽柴勢が母たちに怒りを得、同時に母たちを守りたいと考えているのに対し、母側である武蔵勢はそんな彼女たちごとまるごと守ろうと考える。そこが双方の差となり、今回の結末へとなっていく。すべてが丸く収まるというのはまさにこのことなんだな、と思わせるラストにはすっきりとさせられた。
さらに今回、全巻通しての謎となっていた「二境紋」の意味、さらには梅組の担任であるオリオトライの正体も明らかに。まさか「公主」の存在にミリアムが関わっていたとは思いもよらなかったのだが、そのミリアムの行方は依然としてわからないまま。クライマックスが近付いているようで、どんどん問題(伏線)が片付きつつある中、新たな謎も生じていてますます目が離せない。
◇前巻→「GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン10〈中〉」
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