世界の終わりと始まりの不完全な処遇
織守 きょうや
幻冬舎
2018-06-07

9年前に出会った少女に一目惚れし、それ以来彼女との再会を夢見ていた大学生の花村遠野。そんなある日、所属するオカルト研究部の仲間である百瀬千夏から、「彼女」に似た女性を見かけたという話を聞かされる。学祭に向けて幽霊部員にも召集をかけようということで、遠野は親友の辻宮朔、そして千夏と共に、最近引きこもりがちだという部員・竹内の家へ向かい、そのついでに武内の家のすぐそばだという「彼女」がいた場所に行ってみることに。するとその近くにある公園――少し前にOLの惨殺事件があった場所――で、夏野はついに例の「彼女」らしき人物と再会して……。

9年越しの初恋と猟奇的殺人事件が交錯する切ないミステリ長編。

9年前の夜更け、囮捜査的と思しきことをしていた「彼女」に出会って以来、彼女の面影を追い続けていた遠野。ここにきてひょんなことから再会を果たした遠野だったが、そこにいたのはなんとふたりの「彼女」だった。ひとりは9年前とほぼ同じ容姿の朱里、そしてもうひとりは朱里を少し成長させた姿の碧生。普通に考えたら碧生の方が「彼女」のはずなのに、遠野は朱里の方に接近していく。それはなぜなのか――というのがひとつ目の謎。

そしてもうひとつの謎は、遠野たちが暮らす街で起きている殺人事件のこと。夜更けに首元を食いちぎられたような遺体が次々と見つかる中、「彼女」たち――朱里と碧生はこの犯人を追っているのだという。その犯人とはすなわち「吸血種」。とはいっても想像上の「吸血鬼」とはやや異なる存在であり、朱里たちはその「吸血種」を管理し、事件が起きればその収拾にもあたる「対策室」の一員。しかし世の中には対策室の管理外にある吸血種もいるのだという。今回の犯人はその「未登録」の仕業ではあるだろうが、計画性もなければ被害者に共通点もなく、殺害方法も残忍かつ杜撰で逆に手掛かりがないに等しい状態。そこで遠野は地の利を生かし、彼女たちに協力を申し出るのだった。もちろんそこに下心が十二分にあったりするのだが、そのうちそうも言っていられない展開に。

「記憶屋」の時もそうだったが、本作でも物語が進むにつれ、「吸血種」という存在――つまり「普通とは違う」存在ゆえの孤独について描かれてゆく。老いと死から遠ざけられた「吸血種」は、外見からはまったくわからないが確実にヒトとは違う。何もしていなくてもハンターのような人間に追われるし、普通の人にしてみれば受け入れることのできない存在である。そしてなにより、生に限りのある人と寄り添っていくことはどうしてもできない存在でもある。遠野に訪れた結末はまさにタイトル通り「終わりの始まり」としか言えないものだったが、それでも彼の「初恋」はここから始まり、動き出していく。永遠に続くものがあるのかどうかまだわからないし、その「永遠」とは何なのかをまだ肌身に感じられぬとしても、それでも彼の目の前にはまだ希望がある。そんなラストが印象的だった。