まもりたちの住むマンションが大規模修繕を行うという連絡が届く。そのためにはベランダにある私物をすべて撤去しなければならないという。まもりも葉二もベランダは菜園状態なので大ピンチといっていい状況。さらにそんな中、ダラスへ出向中だった従姉の涼子が突如帰国。しばらく共同生活を楽しむまもりだったが、やがて涼子が大きな問題を抱えていることが判明し……。

シリーズ5巻はサブタイトル通り「お引っ越し」がテーマ。あとがきによれば今巻が「第1部完!」という感じの内容になっているとのこと。

前半の「お引っ越し」はふたりのベランダ菜園。まもりの方はいくつかの植木鉢のみだったので、最低限に減らして室内に置いておくというのもアリではあるが、問題は葉二の方で、もちろん家に入れられる内容でも量でもないのでさあ大変。結局のところ、葉二姉の家に置かせてもらえることになりひと安心ではあるのだが、家庭菜園が使えなくなるうえ、工事のせいでマンションにいづらくなってしまい、外で待ち合わせての食事デートが増えるふたり。どちらかと言えばこちらが「普通」ではあるのだが、ふたりにとっては新鮮だというのがなんとも面白い。確かにコーヒーショップで待ち合わせるふたり、という光景はなかなか珍しい気がする(笑)。

そして後半の「お引っ越し」はまもり自身のこと。元々彼女がひとり暮らしをしているのは涼子が不在の間のみという話で、大学へは自宅からも十分通える距離だし、そもそもひとり暮らしには反対されていたということをほぼ忘れつつあった今日この頃。つまり涼子が戻ってくるとなれば、まもりのひとり暮らしも――そして葉二とのお隣さんライフも終わりとなってしまう。こちらもまあ一般的な恋人同士としては「普通」なことなのだが、これまでの距離の近さを考えると寂しいというか、「それはナシでしょ!」とつい言いたくなってしまう。

とはいえそういった「普通」の恋人同士のような状態を目の当たりにする中で、葉二がいかにまもりのことを大事に思っているか、というのがますますわかるのが今巻。特に終盤の独白の破壊力たるや(笑)。いつか来るであろうその日がこちらも待ち遠しくなってくる。言うまでもないだろうが、どうぞお幸せに……ということで。


◇前巻→「おいしいベランダ。午後4時の留守番フルーツティー」