大学で歴史学を学んでいる寺田凜香は、ある事情があって哲学コースの助手室へと向かう。友人である峯岸美優のレポートが未提出扱いになっており、その理由を代わりに尋ねに行ったのだ。しかし哲学コースの助手である佐藤が調べたところ、確かにレポートは提出されていたことが判明。そこで佐藤は凜香を伴い、担当教官である塩見理人の部屋へ。塩見は凜香がなぜ代理でやってきたのかという理由を言い当てたうえ、「蝋燭の火」の話を始める。蝋燭についていた火を吹き消したとして、その「火」はどこへいってしまったのか、と。首を傾げる凜香に、塩見はこの「蝋燭の火」と美優のレポートは同じだとだけ告げて会話を打ち切り……。

大学で起きる奇妙な出来事を、哲学的知識で解決(?)してゆくライトミステリ連作。

塩見に言わせれば、それは「解決」というより「解釈」という方が正しいのかもしれない。分析哲学に基づいて問題となっている「言葉」を解きほぐし、問題を問題でなくしてしまうのだ。毎度毎度塩見に迷惑をかけられている佐藤に言わせると「屁理屈」なのだろうが、しかしその「解釈」は想像以上にあざやかで、なるほど……と毎回頷かされてしまう。そうやって塩見はレポートの行方だけでなく、構内の猫に起きた異変や暗号文の謎、そして凜香がずっと気に病んでいた親友とのトラブルまでをも解決してくれるのだ。

しかしその一方で、日常生活ではあまりにもぽんこつな先生(笑)。海外モデルのような佇まいとは裏腹に、部屋は汚い、話し中にお茶漬けを食べ始める、メールに文書添付ができない、猫を捕まえようとしてひっかかれる……等々、なにかとひどすぎる状態(笑)。美優のレポート事件解決後、なぜか塩見の研究室や哲学コースの蔵書整理のバイトを頼まれることになってしまった凜香だが、続編があったらますます助手扱いされてしまうというか、これまで以上に世話を焼かざるを得なくなりそうな気がする。