ヴェストファーレン会議を終えて歓談を始めた各国代表たちの前に現れたのは「運命」の借体。「運命」は「幸運」を自身の守りとし、聖譜顕装を操れることを示して姿を消すのだった。この時の「運命」との会話から得られた情報をもとに作戦を立てた武蔵勢は、年内最後の満月の日に第二の月へ向かうことを決める。浅間がトーリを祭神とした東照宮の設定を進め、ホライゾンやミトツダイラと共に最終調整をかける中、ついに12月30日――決戦の日がやって来る。武蔵と大和、そして各国の代表者たちが第二の月へ向かい進むと、月からは「幸運」――正純たちが「瓦解」と称した竜属や武神群、そして「幸運な自分の分身」たちが現れて……。
戦国学園ファンタジー、開始から10年を経てようやく本編完結(なお分量は約1140ページ!)。
決戦直前の死亡フラグ……ではなく(笑)、武蔵強化のための準備として、ホライゾンと浅間、ミトツダイラによるトーリとのアツい一夜(!)が繰り広げられるというまさかの一幕を経て、始まりました人類の存亡を賭けた最終決戦。トーリたちが第二の月にたどり着くのを阻止すべく「運命」が繰り出してきたのは、生まれてからずっと何の障害もなく順調にここまで育ってきた「幸運な自分」という存在。能力は互角、どころか「幸運」なので当人が持ちうる最高の能力値を誇る分身たちを前に、武蔵の面々、そして世界各国の襲名者たちは様々な工夫を凝らして挑むことになる。
自分たちのことを「不運」と呼ぶ「幸運」たちを前に、人々はその「不運」をこそ誇りに立ち向かう。なぜならその「不運」がなければ今の自分はなかったのだから。「運命」はどこまでも現状に対して否定的で、だからこそ自身の死を望む。しかしトーリたちは、ひとりで抱えきれない現実をみんなで考え、受け止めようとする。世界中で彼らが繰り広げてきたことの下敷きには、いつだってこの想いがある。失わせない。ひとつでも欠くことなく、支え合う。かつて同じ選択をしたホライゾンは涙でトーリの手を取った。そしてこの結末を経て、ホライゾンは笑顔で再びトーリの手を取る。最後まで強い信念を貫き通したラストには思わず涙が出てきた。すばらしい大団円。
◇前巻→「GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン11〈中〉」
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