海に浮かぶ麒麟、青龍、朱雀、白虎、玄武の5つの島々は、それぞれの神々の加護に支えられ、常に海上を回転し続けている。5島の中でも中心部に位置する麒麟島は、白虎島との接近の日を迎えていた。孤児院を飛び出し、掏摸で生計を立てている青年・ヤンは、弟分のリーインと共に、白虎島からやってきたという少女・フォニアの懐から玉環のようなものを盗み取るが、それは真っ黒な石でできており、とても値打ちのあるようなものではなかった。落胆するふたりだったが、翌日、彼女がそれを探し続けているのを目撃。見かねたふたりは「拾った」と称してその玉環を返すことに。お礼にと食事に誘われたふたりは、断り切れず付き合うことにするのだが、一方でヤンは、彼女が何者かに後をつけられていることに気付き……。

神々の力の影響が微かに残る島国で、世界の命運を賭けた戦いに掏摸の少年が巻き込まれることになる中華風ファンタジー長編。

回転しながら近付いたり離れたりする島々や、どこからともなく降ってくる光る花びらなど、神秘的な現象がいくつも起こる世界。そんな中で繰り広げられるのは単なるボーイ・ミーツ・ガールではなく、麒麟島――麒麟神皇国の、そして世界の存亡すらもかかってくる大騒動だった。主人公のヤンは孤児であり、掏摸で生計を立てているものの、初めて掏摸を働いた相手のことが心の傷となって残っており、繊細な面と図太い面のふたつを併せ持つどこか不安定な青年。しかも彼には他人に言えない秘密があり……ということで、その「秘密」や後悔が、彼のその後の行動の指針となっていくことになる。

ヤンが直面する問題が、フォニアとのこと、麒麟神皇国のこと、そしてこの世界そのもののこと……とどんどんスケールアップしていくので、1冊でまとめるのはちょっともったいないような気もするし、けれどコンパクトにまとまっている方が読みやすくはあるので、これはこれで。実は5年前の作品なので、さすがに続編はなさそうな気もするが、ヤンとフォニアのその後や、他の島を舞台にした話も読んでみたい。