大学生である芹は春休みになったものの、 陰陽師である皇臥はこの時期が書き入れ時らしく、忙しそうな日々が続いていた。そんな折に舞い込んだのは、高倉老の孫娘・笑を連れて、高倉家が行くはずだったリゾート地へ旅行するというバイト話だった。皇臥の勧めもあって、芹はその道中でかつて世話になっていた叔母の家や、亡き父・真一郎のお墓を訪れることに。そこで芹は、父を「兄」と呼び世話になったという黒ずくめの男と出会う。両親のなれそめ話などを軽く聞くことができたものの、男は忙しいらしく、芹に名刺を渡すと早々に立ち去ってしまうのだった。その後、笑を待たせていた喫茶店で芹が遭遇したのは、八城を含めた「廃墟研究会」の面々。とあるミステリ小説の舞台となった廃遊園地へ向かうことを知ったふたりは同行するが、そこで芹はまたしても例の黒ずくめの男――鷹雄光弦と出くわし……。

今回は旦那不在中の出先でトラブルに巻き込まれてしまう、退魔お仕事物語シリーズ5巻。

珍しく芹が皇臥と離れ離れで単独行動……と思っていたら、なかなか厄介な事件に巻き込まれてしまう今巻。廃墟となった遊園地に閉じ込められるわ、父の知人だという黒ずくめの男・鷹雄光弦(実はミステリ作家)に意味深なことを言われるわで、あっちもこっちもさあ大変、という状況。これまでも芹が(仮に)嫁いだ北御門家を巡り、よからぬ因縁というか雰囲気というかが漂っていたのだが、今回はついに表面化し始めたといったところ。しかもそれには芹の亡き父・野崎真一郎の存在も関わっているらしい。芹が子供の頃に亡くなった父親はいったい何者だったのか……せっかく旅行から戻ったら皇臥とデート!?と思っていたのに、これが死亡フラグになりかねない(苦笑)、まさかの展開。今巻ではまったく解決していないので、次巻は早めに出ることを祈りたい。


◇前巻→「ぼんくら陰陽師の鬼嫁 四」