営繕かるかや怪異譚 その弐
小野 不由美
KADOKAWA
2019-07-31

弟と両親が死に、管理を任せていた祖母も亡くなったため、10年以上ぶりに実家へと戻った貴樹。かつて弟が引きこもっていた――そして自殺した――部屋を整理していた貴樹は、柱と壁の間に隙間があり、そこから裏の家の中が見えることに気付く。いつからか聞こえていた三味線の音はそこから漏れてきていたらしく、中には芸妓と思しきひとりの女がいた。彼女は日がな一日部屋にいるようで、三味線の練習をしたり、何か手紙のようなものを読んで泣くなどしていた。その姿から目が離せず、貴樹は弟の部屋に入り浸って彼女を見つめるように。やがて彼女に会ってみたくなった貴樹は、その部屋の持ち主である料亭の女将を訪ねるも、貴樹の言う部屋には誰も住んでいないと言われ、実際に誰もいないし使われてもいないその部屋の中を目の当たりにすることに。さらにその直後、庭師と思しき男が貴樹の元を訪れ、彼女のことを見てはならない、あれはあなたの命を取るものだ、と告げ……。(「芙蓉忌」)

古い建物や町屋が多い城下町に現れる怪異を、それが憑いている建物を修繕することで解決したりしなかったりするホラー短編集第2弾。約4年半ぶりとなる続編には、雑誌「幽」「怪と幽」に掲載された6編が収録されている。

誰もいない部屋で泣き暮らす芸妓、夕暮れの神社に現れる鬼、死んだはずの猫が夜な夜な戻ってくると訴える息子、古民家リフォームに燃える女性を襲う悪夢、水死した同級生に取り憑かれ死を予感する男性、そして祖母の家の屋根裏に現れた血塗れの幽霊……そんな怪異に悩まされる人々の前に偶然、あるいは依頼されて現れるのが、営繕業を営む尾端という男性。本人が喧伝しているわけでもないのに、なぜか「そういう事案が」よく持ち込まれると困惑している風もある尾端だが、いくつか話を聞き、家の状態を見ただけで、すぐさま理由を察知してしまえる能力はやはり尋常のものではない。

今回も尾端が関わることで問題は解決したり、しなかったり。尾端は家を直すのが仕事であり、そのおかげで怪異が解消することもあれば、そうならないこともある。後者の場合、その怪異とどう向き合っていくかは結局その家の持ち主次第。自分の持ち物については自分で解決し、あるいは折り合いをつけるしかないのだ。けれどそうやって問題と向き合うことで、別のものが視えてくることもある。家に住むということは生活であり、ひいては生きていくということにも繋がる。だからこそ、自分のみに留まらず、周囲との関わりにも繋がっていくことになるのだ。そう考えると、怪異といえど、そんなに悪いものでもないのかもしれない、と思わなくもない。怖いものは怖いけれど。


◇前巻→ 「営繕かるかや怪異譚」