少女は鳥籠で眠らない (講談社文庫)
織守 きょうや
講談社
2019-07-12

新米弁護士の木村竜一がこのたび担当することになったのは、21歳の家庭教師が15歳の教え子に淫行したとされる案件だった。しかし初めて接見したその家庭教師――皆瀬理人は、自分の罪状にぴんときている様子もなく、前科がつくと言われても他人事のような態度を崩さないが、かといって開き直っている風でもなく、木村は首をかしげるばかり。被害者である黒野葉月の両親は、二度と皆瀬が娘に会わないことを条件として示談を受け入れたいというのだが、皆瀬本人はそれだけはできないと頑なに拒むのだった。さらにその直後、木村の前に葉月本人が現れ、皆瀬の無罪を訴えてきて……。(「黒野葉月は鳥籠で眠らない」)

現役弁護士であるという著者によるリーガル・ミステリ連作。2015年に刊行された「黒野葉月は鳥籠で眠らない」の改題文庫化となっている。

まだ弁護士2年目であり、経験の少ない木村の前に、様々な事件が立ちはだかってくる。未成年との淫行疑惑に始まり、友人の不法侵入及び殺人事件、知人の後輩の離婚案件、そして頼れる先輩であるベテラン弁護士・高塚が担当している芸術家の遺産相続問題。どれもこれも表面上はよくありそうな問題ではあるが、そこには複雑きわまりない人間模様、そして彼らが持っている強い意志が潜んでいる。

先輩の高塚はさすがベテランだけあって、戸惑う木村に様々なアドバイスをくれる。しかしそれでも木村はやりきれない想いを抱え、時に絶望しながらも、目の前の依頼人と向き合っていく。ある依頼人の裏切りともとれる行為を目の当たりにした木村に対し、高塚が告げた言葉が胸に刺さる――「ただ、覚えておけばいいよ。絶対に欲しいものが決まっている人間が、どれだけ強くて、怖いものかを」。法律は人のためにあるのであって、人が法律のためにあるわけではもちろんない。しかし明確たるルールがなくては、社会というものは成り立たない。そんな中でどうやって生きていくのか――どうすれば自分の望みを叶えることができるのか。そんな当たり前で、しかし難しいことを実現するための答えが、そこにあるような気がした。それがいいことにせよ、悪いことにせよ。