ロード・エルメロイ2世が私室に隠していた「とある英霊の聖遺物」が何者かに盗まれたという。隠し金庫には代わりに「魔眼蒐集列車」への招待状が置かれていた。手掛かりを求めて、エルメロイ2世は内弟子のグレイ、そして教え子のひとりであるカウレスと共に列車へと乗り込むことに。法政科の菱理、天体科のロードの娘であるオルガマリー、さらにはエルメロイ2世の教え子であるイヴェットらがこの列車に乗り込んでいるその理由は、列車の名前にも冠されている「魔眼」のオークションがここで開催されるためだった。しかしオークションが開催される前に、未来視の魔眼持ちでもあるオルガマリーの従者・トリシャが何者かに殺され、頭部が行方知れずとなってしまう。そんな中、聖遺物を盗んだ犯人と思しき人物から呼び出されたエルメロイ2世。果たして彼の前に現れたのはヘファイスティオンと名乗る女サーヴァントで……。

魔術師たちの間で起きる殺人事件を巡るミステリシリーズ4〜5巻。今回は「魔眼」を巡る魔術師たちの攻防と、そのさなかに起きたふたつの事件について語られていく。

ひとつめが未来視の魔眼を持つ女性が殺される事件。しかしここで疑問なのが、いかに断片的かつ限定的であるとはいえ、「未来が視える」という能力を持っているはずの人物がなぜ殺されたのか。これに関しては、化野菱理がオークションの参加者のひとりで、過去視の魔眼を持つカラボーなる人物を犯人として弾劾するが、のちにエルメロイ2世がその推理を(ある意味で)ひっくり返してしまう。最初の菱理による推理の際、エルメロイ2世は例のサーヴァントの襲撃により負傷し不在だったのだが、なんとか復帰したのちの短い時間で、あっという間に正しい結論を導き出していく。ここまで鮮やかな推理を見せられると、本人による「自分は平凡」的な自己評価を覆したくなってくるが、しかし彼の生きる世界はあくまでも魔術師の世界であるがゆえに、推理力に長けていたとしても、小細工がなければ他の魔術師たちと対等に渡り合うことすら難しいという事実の方が重要だし、答えであるのだろう。そう考えると、彼こそが他のどの魔術師たちよりも努めて「魔術師」たらんとしているような気さえしてくる。

そしてもうひとつの事件が、彼から聖遺物を奪った存在と、それに付き従うサーヴァントの存在。聖杯戦争でもないのにサーヴァントを召喚できるという状況からすでにおかしいのだが、さらにイスカンダルを召喚した聖遺物から彼以外の人物が召喚されたことや、その召喚された「ヘファイスティオン」なる女性の正体など、次から次へと謎がわいてくるという展開に。しかしこの件を機に、エルメロイ2世はあるひとつの決断を下す。それはこれまでの彼の生き方にひとつのピリオドを打つことであり、同時に新たな抗争に身を投じる、その始まりでもある。シリーズ的にも転換点となった今エピソードだが、今後彼がどのような道を選んでいくのかが気になるところ。


◇前巻→「ロード・エルメロイ2世の事件簿2〜3 case.双貌塔イゼルマ(上)(下)」