エルメイア皇国の建国祭を控えて慌ただしくなる王城。そんな中、ふたりの前に突如現れたのは、この世界の最初の魔王にして魔を司る神・ルシェル。彼はクロードの父であると称し、アイリーンとの結婚を認めないと宣言。かくして翌日からルシェルによる壮絶(?)な嫁イビリが始まるのだった。さらに時同じくして、ハウゼル女王国から多数の女性たちがエルメイア目指してやって来る。彼女たちはハウゼルの次期女王候補であり、今回の試験の内容が「魔王と愛を育むこと」であるため、クロードと子を成すつもりであるというのだ。アイリーンは試験のルールを逆手にとり、多数の候補たちを規則違反として本国に送り返すことに成功するが、唯一残ったグレイスという少女のことが気にかかり……。

シリーズ5〜6巻は前後編形式。web版第5部の書籍化となる今回は、クロードの本性である「魔王」という存在を巡り、国家の存亡をかけた大事件へと拡大していくという展開に。

「運命」などと嘯きつつ、表裏双方で暗躍を続けるグレイスの手口はあまりにも巧妙で、アイリーンたちはシリーズ最大のピンチに陥ってしまう。エルメイアという国の存亡や、自身たちの生死にも関わる騒動のさなか、しかしアイリーンはどこまでも自分と、そしてクロードのために戦い続ける。

アイリーンやリリアが「前世」でプレイしていたゲーム「聖と魔と乙女のレガリア」そのものであるこの世界は、その中で生きる彼女たちにとってはまごうことなき「現実」ではあるけれど、しかし同時に「ゲーム」であることの制約からは逃れられない。魔物が存在し、魔法が飛び交う世界ではあっても、そこには乙女ゲームとしての枠組みやルール、前提条件が存在している以上、それを知っておりなおかつ最大限に利用していくことで――つまりアイリーンが捻じ曲げた流れを正そうとするグレイスの行動により危機が訪れ、しかしそれを逆手に取った行動で、再度物語が収束していくという流れがなんとも面白い。最後の最後まではらはらとさせられたが、これまたゲームのようにハッピーエンドルートを迎えることができて本当に良かった。


◇前巻→「悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました4」