化学探偵Mr.キュリー6 (中公文庫)
喜多 喜久
中央公論新社
2017-06-22

夏休みを迎え、シフト勤務に切り替わった舞衣。そんな中、四宮大学に飛び級で大学生となった16歳の少女・エリーが留学してくることになった。知人からの依頼もあってエリーの監督をすることになった沖野と共に、舞衣はエリーの生活をサポートすることに。他者との交流にあまり積極的ではないエリーとなんとか距離を縮めようとする舞衣は、エリーが有機化学の世界に入ってきたきっかけが、四宮大に所属する学生・二見の影響であることを知る。しかし舞衣が調べた結果、二見はエリーが沖野と共に手掛けている「トーリタキセルA」の合成実験に失敗し、大学を中退して現在は行方不明になっているらしく……。

化学系ライトミステリシリーズ第6弾は初の長編作。留学生のエリーと、彼女が手掛けている実験を巡り、学内で起きていたきな臭い事件をふたりが解決していくという展開に。

今回も舞衣の好奇心と行動力、そしてこれまでに培ってきた観察力と人脈によって、失踪していた二見青年の居場所を突き止めることに成功。一方、二見が失敗した研究は、沖野の母校である東理大と共同で行っていたということで、そちらについては沖野が調べを進めてくれるという、まさに二人三脚で挑んだ今回の事件。そんな中、母校に関わるということは、沖野を連れ戻したがっている先輩・氷上が出てくるということ。今回もそのツンデレっぷりは健在で、なんだかんだ言いつつ(そして相変わらず舞衣のことを目の敵にしつつ)、沖野のためにいろいろと調べごとをしてくれるあたり、いい人だなあと思わずにはいられない(笑)。

「ギフテッド」――天才と呼ばれるエリーの存在を巡り、氷上からの問いかけに答えられなかった沖野。しかし舞衣のある言葉がきっかけで、その答えはすんなりと導き出されてしまう。この1件だけでも、ふたりの関係性――少なくとも沖野にとっての舞衣という存在がどういうものであるかがなんとなく見えてくる。相変わらず、あるいはますますいい関係になっているようで何より、となんだか母親のような気持ちになってくるのは私だけではないと思いたい(笑)。


◇前巻→「化学探偵Mr.キュリー5」