マンション管理士の資格を持つ安宅創士郎は、勤めていた大手マンション管理会社を辞め、独立したばかり。当然顧客はいるはずもなく、開業初日にやってきたのは無料相談者がひとりだった。その客を送り出した直後、ブログを見たという女子高生がやってきて、ここで働きたいと言い出す。もちろんさっさと追い返した創士郎だったが、翌日にもその女子高生――田中紫は現れて、授業の一環として行われているインターンシップを創士郎の事務所でやりたいと懇願。断られたらそのことも丁寧にレポートに書くと脅された創士郎は、しぶしぶ彼女をお供にして営業に出かけることに。そんな中、彼が目を付けたのは、大手不動産会社が手掛ける大規模マンション「プレイシャス・ザ・ガーデン大宮」。派遣されている管理人に難があることを見抜いた創士郎は、そこをとっかかりにマンションの管理組合に入り込もうとするが……。

「Bの戦場」の作者による新作はマンション管理士が主人公のお仕事小説。帯に「マンションは買って終わりではない」と書かれている通り、マンションに暮らし、それを維持する中で起きる、しかし外側からは見えない様々な問題を創士郎が解決していくという展開に。

長く、あまり耳なじみのないタイトルが目を引くが、これは押しかけ女子高生の紫が聖書の授業で聴いたという「不正な管理人のたとえ」という話が元になっているという。主人に不正がバレそうになった管理人が、主人に借りのある人々の証文を書き直させて貸しを作り、自分がクビになってもその人々に助けてもらおうとしたという逸話(しかしオチとしては、この管理人は主人に褒められたとのこと)によるようなのだが、正直言ってキリスト教になじみのないこちらにはわかりにくい例えだし、紫自身もうろ覚えなので、何か隠れているエピソードがあるのかもしれないが……それはそれとして、創士郎はあるマンションの管理組合が抱える問題に真正面から向き合い、理事たちの信頼を勝ち取っていくのだ。

国家資格とはいえどあまり権力がないというか、その資格において具体的にできることは少なく、どうしてもアドバイスのみに偏ってしまったり、あるいはなにをしてもグレーゾーン扱いされてしまうという弱い立場。しかし創士郎はめげることなく、ルールに忠実に従いながら、住人たちの利益を(そしてもちろん自分の利益も)得ようと奮闘する。その秘められた過去――なぜ管理会社を辞めたのかということ――も相まって、彼の頑張りをもっと応援したくなる。もちろん、途中でさんざん苦労したからこそ、いろいろとまるく収まった結末には拍手。続編があれば、今後も問題がいろいろと出てくるであろうこのマンション――例えば今後の修繕計画だとか――を創士郎がどう変えていくのかを見てみたい。