王の選定を終え、戴国へとやってきた泰麒。麒麟である泰麒は台輔としての役割も与えられているが、胎果であるためこの世界のしきたりがわかっていないうえ、まだ幼いということもあり、王である驍宗の役に立てないことを心苦しく、悩みに思っていた。その矢先、驍宗から使節として漣国へ向かうよう命じられる。元農夫であるという廉王と接する中で、泰麒は自分に何ができるのかを改めて考えることになり……。(「冬栄」)

シリーズ7巻は2冊目となる短編集。「丕緒の鳥」に収録されていたのは民たちの視点による短編だったが、今回は王やその周辺の視点による短編集となっている。

シリーズ2巻の後日談となる「冬栄」、4巻の後日談となる芳国が舞台の「乗月」、楽俊と陽子の手紙のやりとりを通じ、ふたりの現状(時間軸としては「風の万里〜」の前)を描く「書簡」、かつての才国で起きた新王の登極とその終焉を描くミステリタッチの「華胥」、そして6巻に登場した奏国の王族・利広と、風漢と名乗る流浪の男(その正体はどう見ても延王)との会話から、世界の現状が描かれる「帰山」の5作が収録されているのだが、個人的に一番興味深かったのは「帰山」だった。

いずれも歴代1位および2位の長きにわたって維持を続けている奏と雁の、それぞれから見たこの世界の危うさ。ふたりとも予想もしていなかった柳の現状は一体何を意味するのか。そして王が死んだといいつつその物的証拠が見受けられないという戴では何が起きているのか。それだけでもうすら寒い感じがするのだが、では奏と雁が今後も安泰かというと、そんなこともないというようなことを示唆するふたり。特に利広は、延麒六太と同じようなことを口にする――いわく、延王はいつかその気になって国を滅ぼすのではないか、と。こんなにも危うい地盤の上に、これらの国は成り立っている。あまりにもシステマチックな世界で、しかしその足元は薄氷の如く危ういのだということが、まざまざと感じさせられる短編だった。


◇前巻→「図南の翼」