さんかく
千早 茜
祥伝社
2019-10-31

大学時代を過ごした京都に戻り、古い町屋で暮らしながらフリーデザイナーとして働く高村は、フリーター時代の後輩である伊東と食事をすることに。かつて彼女が作っていたまかないが好きだったと言い、ひとり暮らしの彼女が作る料理に興味を示す伊東。大阪で営業職に就いている伊東は、アパートの契約更新が間近だったため、京都の大学院に所属している年下の彼女・華と同棲しようと考えていた。しかし誰かと一緒に暮らすのは無理だという華の言葉で諦めた伊東は、高村の勧めに応じて彼女の家でシェアハウスすることになるが、そのことを華には打ち明けられずにいたのだった……。

2018〜2019年に「新刊ニュース」に掲載されていた作品の書籍化。3人の男女の視点から、彼らの「三角関係未満」の繋がりを描く物語となっている。

伊東と華は付き合ってはいるものの、華は大学院での研究(様々な動物を解剖するのがメイン)に没頭しており、会うこともままならない日々。そんな折、アパートの契約更新をきっかけに、伊東は高村と一緒に暮らすことになったのだが、そこには「同棲」だの「ひとつ屋根の下」だのというような甘いものはほとんど感じることはできない。伊東にとっては賄い付きの下宿に入ったような――しかも大家はさばさばとしていて、気心もそれなりに知れてはいるが適度な距離感を保てる大人の女性――気分でいたのだろう。そしてそんな伊東を受け入れた高村もまた、自分のためだけに作っていた料理を褒め、喜んでくれる相手ができたことで、失っていた自信、あるいは自尊心のようなものを取り戻しつつあったのかもしれない。さらに言えば華も決して伊東のことを邪魔に思っているわけではなく、ただ自分の研究にリソースをすべて向けてしまいたい一方で、そんな「普通」ではない自分を「普通」の側に引き留めてくれる――またはその証明となる「彼氏」を必要していただけなのかもしれない。結局のところ3人は、そんな世間一般で言うところの「普通」であるための居場所を探し続けていたのではないかと思う。

しかし、そんな関係がいつまでも続くわけはなく、やがて3人はまた、それぞれの道を歩み始めることになる。誰かと一緒に生きる幸せがあれば、ひとりで生きる幸せだってある。食べて、寝て、働いて、そして誰かと繋がって――そんな当たり前の日々を、無理なく過ごしていくことが大事なのだろう。完璧でなくても、分かり合えなくても、それでいいのかもしれない。