定年後、特任教授として引き続き大学での研究を続けられることになった微生物学者の坂口信。亡き恩師の妻に呼び出され、厳重に保管されていたという謎の研究資料を読み進めていくうち、坂口は恩師が大学の保管庫にこっそりと何かを隠していたことを知る。「KSウイルス」と名付けられたそのサンプルをラットに投与してみたところ、ラットはいったん仮死状態になったかと思うと、突如狂暴化し、互いに互いを食いちぎりながら死んでいったのだった。それが狂犬病ウイルスをベースに加工された新型であることを知って愕然とする坂口だったが、そこに妻が急死したという知らせが。同席していた後輩の黒岩と二階堂に処分を任せて帰宅し、妻を見送った坂口。しかしその後、黒岩が謎の急死を遂げたうえ、海谷と名乗る女性刑事や、同じく警察官だという黒服の男たちが坂口の前に現れ、黒岩の周辺について聞き出そうとしてくる。さらに時同じくして、処分したはずのウイルスを手に入れたとするテロ組織が現れ、首相官邸に向けての犯行予告を送ってきて……。

致死率100%でワクチンもないという新型ウイルスの行方を老教授と女刑事が追うサスペンス長編。なお、サブタイトルにもある通り、主人公は「特任教授」の坂口信。個人的すぎる感想ではあるが、こういう場合は大抵「若き天才イケメン教授」的なキャラだと思っていたのだが、予想に反して65歳というキャリアも実績もある教授ということで驚いてしまった(笑)。

さておき、坂口が発見してしまったのが、亡き恩師が作り出していた恐怖の「ゾンビ・ウイルス」。処分を任せていたはずの黒岩がサンプルを何者かに横流しし、おそらく口封じとして殺され、さらにはそのウイルスが都内にばらまかれるかもしれない――そんな危機的状況に陥ってしまった坂口は、しかし研究者のプライドと責任にかけて、中央区内のどこかに仕掛けられたというウイルスの在処を探すべく奔走することに。一方、プライベートでは妻を亡くしたばかりで、日々の生活すらままならないという状態。それらの落差の激しさにはなんとも驚かされる。

そんな彼に――というより「研究者」という存在そのものに――反発も覚えつつ、サポートしてくれるのが、後方支援系の部署に所属しながらも、上司の制止も振り切って独自の嗅覚で事件を追う女性刑事・海谷優輝。父親の形見だという年代物のフェアレディZを駆って単独行動をも辞さない、まさに一匹狼な彼女の姿はなんともかっこよく、彼女が主役の刑事ものを読んでみたくなった。