1975年に青森県五所川原市市浦村の村史の中で発表された「東日流外三郡誌」は、記紀の内容を覆す超古代史として一躍話題となった「古文書」だった。しかし1992年、発見者にして所蔵者である和田喜八郎に対する訴訟が起こり、これをきっかけとして一大真贋論争が巻き起こることとなった。本書は2006年に発表されたルポルタージュの改題・加筆・再編集版として2019年3月に刊行されたものであり、著者・斉藤光政は東奥日報の記者として、訴訟記事の執筆をきっかけにこの論争を牽引するひとりとなっていく。

現在は偽書としてほぼ決着している「三郡誌」ではあるが、その発見者にして偽作者と指弾された和田喜八郎や、その擁護派のリーダー的存在である古田武彦らは真作であるとの主張を曲げることなく亡くなっているため、真相や動機については闇の中とも言える。しかし著者が調べれば調べるほど不審な点しか出てこず、読んでいるこちらも最初は呆れていたが、最終的にはもう笑うしかなくなってくるような展開になっていく。

特に面白かった(?)のが、「三郡誌」中に出てくる特徴的な誤字が、発見者である和田氏の文章にも存在していることを指摘すると、擁護派が「和田氏はこれらの古文書を見て文字を学んだのだから、同じ誤字があって当たり前」というような発言をすること。一瞬「それなら確かに」と言いそうになってしまうが、筆跡鑑定をしたら「三郡誌」の文字と和田氏の文字が一致しているし、毎度毎度コピーや写真のみで肝心の原本を出してこず、最後の最後でようやく「原書」が出てきたかと思ったら、やっぱり和田氏とまったく同じ筆跡であったという。もはやここまでくると、彼らが一体何をしたいのかわからなくなってくる。もはや当人たちが亡くなっているのでどうしようもないが、彼らの狙いは一体何だったのか――お金か、名声か、あるいは愉快犯なのか――が気になって仕方ない。