春が近付き、紬のもとにはまたしても母親から春野菜の詰め合わせが届くように。加工を依頼すべく「びんづめカフェ竹善」へと向かった紬だったが、そこで常連客から聞かされたのは、谷中銀座に飾られている「七福猫」のひとつが何者かに盗まれたというニュースだった。そんな折、武流が飼っていた黒猫「ネコ太朗」が行方不明に。武流のクラスメイト・相沢さんにも手伝ってもらい、迷子猫の貼り紙を貼って回ることになった紬。相沢さんも飼い猫が行方不明になっているため、他人事ではないのだという。そのさなか、紬はひとりの老婆が七福猫をカートに乗せて歩いているのを目撃し……。

コミュ障気味の女子大生・紬と、びんづめカフェを営む英国人・セドリックが、彼らの周りで起きる謎をゆるく解き明かしていくほのぼの(?)ストーリー、第2弾。

商店街に現れた猫泥棒の正体、ある老嬢がかつて飲んでいた「外国の甘い麦茶」の正体、寝込んだ虎太朗の部屋に紬がいた理由、そしてセドリックが育てている亡き妻の忘れ形見・武流とその祖父母の問題……「事件」というようなかっちりしたものではなく、あくまでも彼女たちが生活している中で湧き出てくる様々な問題が、セドリックが作り出したびんづめ保存食によって解決へと導かれていく。つまるところ起きているのは人間関係にまつわるあれこれであるからして、その人間が生きていく中で最も大切な「食べる」という行為がその解決に結びつくというのは不思議な事ではないのだろう。その「どこまでも幸せな世界」は、見ていてとても穏やかな気持ちになれる。ついでに言うと、紬をめぐる人間関係もなんとなく進展?しているような気がしないでもないので、今後の発展にも注目したい(笑)。


◇前巻→「谷中びんづめカフェ竹善 猫とジャムとあなたの話」