錆びた滑車 (文春文庫)
七海, 若竹
文藝春秋
2018-08-03

東都総合リサーチの桜井から回された調査で、石和梅子という老女の行動を追っていた葉村晶は、梅子が知人らしき老女・青沼ミツエと口論になり、階段から落ちてきた際に巻き添えとなり、怪我を負ってしまう。運びこまれた病院で晶は、ミツエの孫である大学生・ヒロトと出会う。少し前に父親と一緒に交通事故に遭い、大怪我を負ってリハビリ中だというヒロトの依頼で、晶はヒロトの亡父の遺品整理を請け負うことに。ミツエの勧めもあり、しばらくはミツエの持つ古いアパートで暮らしつつ、整理を行うことになった晶。そんな中、ヒロトは晶にある依頼をかける。ヒロトは父と自分が遭遇した事故の前後の記憶を失っており、なぜ事故現場にいたのかすらも思い出せないため、その理由を突き止めてほしいというのだ。しかしその直後にアパートで火事が発生し……。

葉村晶シリーズの長編第3作目。今回も冒頭から怪我を負いつつ(しかも40代となったので、そうでなくても体にガタがきている……)、大小さまざまなトラブルに女探偵・葉村晶が巻き込まれていく。

ある老女の行動調査に端を発した今回の事件。青沼ミツエとその孫・ヒロトに肩入れしながら、晶はミツエの息子=ヒロトの父である光貴の過去にも迫るという展開に。事態は周囲を巻き込んでどんどん拡大していき、今作でも文字通り芋づる式に真相が明らかになっていく。人の不幸は……というわけではないが、その流れが面白くもあり、同時にやりきれなくもある。結局誰も得をしないというか、真相がわかったころには何もかも手遅れになってしまっているのだから。きっとそれは晶本人も痛感しているに違いないが、それでも彼女は探偵を辞めないし、自問自答しながらも他人にその手を差し伸べることを止めないのだろう。好奇心と同情心、あるいはそれ以外の様々な感情の板挟みになりながら。


◇前巻→「静かな炎天」