梅雨入り直前となり、竹善ではセドリックが青梅の処理に勤しんでいた。そこに現れたのは、最近谷中にオープンした高級食パン専門店「コロンブ」のパン職人・千川仁希。セドリックの作ったジャムやペーストに感動した仁希は、自身の作る食パンに合うジャムを作ってほしいと依頼してくる。行動力抜群で、どんどんセドリックの懐に入ってコラボ計画を進めていく仁希の様子は、武流や虎太朗いわく、亡きセドリックの妻・笑子に似ているのだという。さらには仁希本人もセドリックに異性としての興味を持っていることがわかり、紬は内心穏やかではなく……。

下町のびんづめカフェ「竹善」を舞台に繰り広げられる人間模様を描くシリーズ第3弾。今回は「知る人ぞ知る」だったカフェが次第に人気になっていき……という展開に。ちなみに今巻は1冊通じて、梅を使った様々な保存食が作られていくので、それもまた興味深い。

恋(?)のライバルが現れたり、大学で「友人」と呼べる存在ができたり、行きつけの手芸店の店員に誘われてハンドメイドバザー的なイベントに参加してみたり……と、これまでのコミュ障&引きこもりぶりを考えると信じられないくらい活動的になっている紬。しかしその裏には、竹善が「コロンブ」のおかげで有名になり、店が繁盛しているという事実がある。それは紬がずっと願っていたことであるのだから、紬も嬉しいはず――なのに、そうとばかり言えないのもまた事実。紬の世界が広がっていくのはもちろんいいことだし、竹善が有名になるのもいいことだし、けれどそのせいでバランスを欠いてしまったせいか――紬はついに、セドリックへの想いをぽろっと口に出してしまう。さて、これが吉と出るか凶と出るか……。


◇前巻→「谷中びんづめカフェ竹善2 春と桜のエトセトラ」