「春高バレー」として知られる高校生バレーの全国大会。清陰高校男子バレー部は福井県代表の切符を手にし、東京へと向かっていた。清陰と同じブロックには夏と秋の覇者である福岡の箕宿高校や、2m超えのウイングスパイカー・川島を有する鹿角山高校といった錚々たるチームがそろっていたが、灰島はただひたすら勝ち進むことしか考えておらず、メンバーたちもその勢いに引っ張られるように夢の舞台へと向かうことに。初戦では難なく勝利を収めた清陰高校だったが、次の鹿角山高校との対戦では、川島の高身長から繰り出される攻撃にさしもの灰島も手を出しあぐね……。
「WEB文芸レンザブロー」で2017年4月から2018年7月にかけて連載されていた、高校男子バレー小説シリーズ第3弾。弱小どころか無名だった清陰高校バレー部が初の「春高」に挑む姿が描かれてゆく。
これを読む直前に第2弾を読み返していたこともあり、大会の開会式の時点ですでに涙腺が緩みつつあったがまあそれはさておき。完全にノーマークだった清陰が初戦を勝ち抜き、さらに有名プレイヤー擁する鹿角山を撃破して強豪校に挑むという流れにははらはらさせられる。しかし同時に、文字通り死力を尽くして戦う彼らが、試合の中でチームワークを深め、さらに強敵たちと相対することによってどんどんレベルアップしていく姿はとにかく眩しい。チームの力をここまで引き上げたのは灰島の力によるところがもちろん大きいだろうが、黒羽がその灰島をしても図り切れないほどの潜在能力を秘めたエースであることを示し続けていたのももちろんすごいことだと思う。もちろんまだ1年生ということで不安定な部分や戸惑いもあっただろうが、それをねじ伏せてあれほどまでに戦えたのは、ひとえに相棒である灰島への絶対的信頼感によるものなのだろう。もちろん1年生コンビだけでなく、3年コンビである小田と青木の関係性であるとか、次代を支えることとなる2年グループの結束もまた、チームを押し上げていく力となっていく。
一方、清陰と戦うことになる箕宿高校、そしてそのライバル的存在である東京の景星高校のエピソードも同時に語られる本作。どちらも強豪校ではあるが、ここ数年チームとしての成績はぱっとしていない部分もあったりするだけに、プレッシャーもひとしおといった状態。作中でも繰り返し語られていたが、いくらいいチーム、または強いチームが現れたとしても、そのメンバーが卒業してしまえば勢いを失うことは避けられない。卒業生たちが作り上げてきた「バレー部」という歴史と、「県の代表」たることという大きな荷物を背負いながら、たった3年の間にいかにして成績を残すことができるか――というのは強烈なプレッシャーとなって彼らを苛むこととなる。けれどいつだって、最後に彼らを突き動かすのは「勝ちたい」あるいは「バレーを楽しみたい」というただそれだけの純粋な願い。今しかできない何かをひたすら追い求める彼らの姿から目を離すのはとても難しい。
しかし一方で、彼らはきちんと「今」の「その先」を見据えている。今回の大会を経て、灰島と黒羽はある決断を下すこととなる。かつて灰島は、自分が黒羽を春高のセンターコートに連れて行くと言った。おまえはおれのエースだ、とも。今回のラストでは、その言葉に本当の意味で黒羽が答えを返すのだ。その瞬間を、私もきっと忘れることはできないと思う。これからが彼らにとってのスタートになるのだと、そう信じたい。
◇前巻→「2.43 清陰高校男子バレー部 second season」



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